昔、ぼたもちのおばちゃんがいた。

祖母の姉だった人だ。


何があったか知らないけれど、乗り物には一切乗れない人だった。


だからいつも、そこの家にはこちらから出向かなければいけなかった。


そのおばちゃんのもてなしが、大量のぼたもち。

そして、なぜかその家に行くと、嫌いだったトマトやきゅうりが食べられるようになった。


特に何かされているわけではない。

ざっくり切られた野菜に、塩が添えられていただけ。


昔から塩はこだわっていた。

でも今は、天然塩というだけではなく、マイクロプラスチックのことも気になる。

それで、能登のお塩を手に入れた。


まだ以前のような量は作れないのだとか。


でも、そのお塩でトマトを食べてみた。

美味しかった。


久しぶりに、塩がうまいと思った。


そして、ふとぼたもちのおばちゃんを思い出した。


味覚の記憶。

その記憶の中には、祖母の笑顔も含まれる。

もう、会えない人達だ。


人の五感は、痛みだけを覚えているわけではない。


こうした本当に小さな引き出しの記憶を、ひっそりしまっておいてくれる。


幸せの片鱗。


今ある当たり前の風景も、いつかは当たり前ではなくなるかも知れない。


だからこそ、今ある時間を、ちゃんと感じていたい。


ふとした小さな幸せ。

大切にしたいですね。