「村上喜剣」CD起こしその3 | 情届士洋山(じょうかいしようざん)の日記 アンチエイジング、ガーデニング、時々人情話

情届士洋山(じょうかいしようざん)の日記 アンチエイジング、ガーデニング、時々人情話

情届士洋山は第二の人生名。「世のため人のため」「人様に喜んでいただく」がモットー。
バラの育成、浪曲の口演、トイプードル・ソラの心、etc。

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いよいよ、この物語の山場

 

 

 

 

当時の町人言葉で

 

 

 

 

赤穂浪士を称える思いが

 

 

 

 

今も新鮮になって、伝わってくる

 

 

 

 

 

 

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物珍しげに見ていた喜剣・・・

 

「あーこりゃ、町人、あーこりゃこりゃ町人、こりゃ町人、

 町人と申すに」

 

「なにおっ! なにが町人で。えーっ、偉そうな口を叩きや

 がって何が町人、何が」

 

「いやいやいやいや、やめろ!てめえは酔っぱらうと向こう

 先が見えなくて困るじゃねえか、えーえっ。見て見ろ、相

 手はお侍じゃあねえか」

 

 

「へっ、何が侍えだ。えーっ! 侍も弔いもあるもんか。糞

 でも喰らって」

 

「おいおいおい、へっ、どうも、えっ旦那、こいつは酔って

 おりますんでね、どうかご勘弁なさっておくんない」

 

「いや、町人と申して、腹が立ったら許してくれ。見うくる

 ところ、みな揃いの衣装で、今日は、いずくの祭礼なるや」

 

「へっ。なに言ってやんでえ、えーっ、着物が揃ってりゃあ、

 何でも祭りだと思ってやがるな。祭りなんかじゃねえやい。

 墓参りに行ったんだよ」

 

「なに、墓参と申すか」

 

「何オッ! 誰が坊さんだ。俺の名前は八五郎って言うんだ。えーっ、八五郎の俺の、俺のどこが坊さんだ」

 

「いや、坊さんではない。墓参。墓参とは墓参りのことじゃ」

 

「なにも、そんな符牒なんか使いやがって、えーっ、もっと

 わかりやすく言えよ。わかりやすく。」

 

「これは重ねて相すまぬ。して、何人の墓参りなるや」

 

「浅野のけれえの墓参りに行ったんだよ」

 

「何、何と申す。赤穂浪士の墓参り。赤穂浪士が、赤穂浪士

 が、何とかいたしたか」

 

「何とか致したかあー。おめえ何にも知らねえのかよ。おい

 っ。知らなければ言って聞かしてやろうじゃねえか、えー

 っ。去年の暮れの14日。赤穂浪士が、四十七人で、本所

 松坂町、吉良の屋敷に討ち入りをして、見事に吉良上野介

 の首を討って、高輪泉岳寺に引き上げたんだよ。」

 

「何っ!赤穂浪士が四十七人で、吉良様のお屋敷。して、して、

 して、その中に大石内蔵助あるや」

 

「何でえ、なんだいそのあるやってのは、あるやにもねえや

 にも、おめえ、その大石様が一一番の親分じゃねえかよ!」

 

「何っ!大石殿が、大将となっ。・・・う、う、う、うーー

 ーん。さてはーーーっ」

 

「おい、おい、おい、おい大丈夫か、おめえ。お前さん、芝

 居の見すぎじゃあねえのか。えっ、ふん、何を言ってやが

 るんだい。全く気持ちの悪い野郎じゃあねえか。おい、い

 いか、俺達はな、細川様のお屋敷に出入りをしている大工、

 こいつは左官だ、こいつは石屋、植木屋、そら、みんな職

 人ばっかりや。細川様のお屋敷には、大石様を始めとして、

 十七人お預けになった。殿様が大石様の話し相手として付

 けておいた、堀内伝右衛門という人を呼んで、浅野の浪士

 は侍の鑑、大切にしてやれ、労わってやれとのお言葉。ほ

 んと、大石様も偉けりゃ、殿様も偉えや。おう、だけどな

 お侍。おりゃ、その堀内の旦那様から聞いた話の中で、

 一つだけ、どーーしても癪に触ってならねえことがあるん

 だ。おい、おい、おいっ、何ていったけ、うん、うん、う

 ん、ほら、おめえ達も、聞いたじゃねえか、ほら一緒にな

 って聞いたじゃねえか。」

 

「なにが?」

 

「何がって、ほら、ほらー、京都の四条畷で大石様に会った

 っていう侍よ」

 

「うーん、京都の四条? 誰!」

 

「なんだ、情けねえなあ、忘れちまったのかよ。しゃうがね

 え。ほら、なんつったっけ、ほら、たしかに、あー薩摩の

 侍で、名前がなんでも危ねえ名前なんだ。あぶねえ、えっ、あっ、あっ、あぶねえって言えばなんだ、あぶねえってのは」

 

「あぶねえっ、あぶねえたっておめえ、そうだなあ、あぶね

 えものは、このー、爆弾」

 

「そうそうそう。ばくっ。馬鹿野郎。そんな名前があるか

 っ。そうじゃなくて、あぶねえことを何とか言うじゃあ

 ねえか。あぶねえから気をつけろ。あそこあぶねえ。あ

 そこは、えー、いっ。あっ、危険、危険、うん危険。喜剣

 ていう野郎が、大石様に仇打つ心があるのかねえのかと尋

 ねた。ところが、ここじゃ話ができません。まーまー、こ

 っちにいらっしゃい。お茶屋の奥座敷に連れてって、酒を

 飲まそうとしたら、その野郎がまた強情で、酒を飲まなか

 った。仇打つ心がねえと言った時に、拳骨を固めやがって、

 大石様の横っ面を嫌というほど殴ったっていうじゃねえか。えーっ、その野郎の手は、今頃曲がってんだろうよ。おう

 っ、それだけじゃねえ。まだまだ癪に障ることがある。

 小鉢に盛ってきたタコを、足で挟んで、『犬侍これを喰らえー』って、足で挟んだまま、大石様の鼻先にびゃーっと、

 突き付けた。どころがどうでえ、えーーっ、大石様が粋人

 で、いうことが嬉しいじゃねえか。『手を出して、足をい

 ただくタコ肴』て、どうでえおい、お前にはこんな気の利

 いたことは言えるめえ。世の中の人は、馬鹿が利口の真似

 をする。大石様はそうじゃあねえんだ。利口で馬鹿の真似

 をした。あーあっ、まあ、いや、どうも、あれぐれえ、え

 れえ人は、世の中に二人といねえだろう。おう、おめえも

 さむれえならばなあ、これから泉岳寺に行って、大石様の

 墓所の土でも貰って、煎じて、飲みやがれってんだ」

 

「おい、おい、おい、余計なことういうな。口が悪くってい

 けねえ。うへっへっへっ、どうも旦那、すいません。なに

 しろね、こいつは、酔っているもんで」

 

「ぶるっ、何言ってるんだ。何が酔っ払ってるんだ。おりゃ

 あ、このさむれえが知らねえから、本当のことを言って・

 ・」

 

「いいから、いいから、おい、品川で、女が待っているん

 じゃねえかよ。おめえが早く行かねえと、女が悲しがるぜ」

 

「えっ、なにっ、女っ。うっふふふふふー、そうなんだよな

 ー、えへへへ。俺が行かなきゃあ始まらねえんだ、あはは

 はー。俺が出てきた時に、こんなになって出てきて、

 あっ、まあ、まー、はーさん、はーさんなんて、こんなこ

 とになって・・。あー、こんなことをしている場合じゃね

 えな、早く行ってやらねえと、おっ、ばーさん、じゃあ、

 また来るぜ。おう、さむれえ、じゃあ、あばーよっ!」

 

後に残って村上が、

 

「ばばあー、泉岳寺とは、どの方角じゃな」

 

「はい、これからまっすぐいらっしゃいまして、左の小坂を

 少しおあがりあそばしますと、突き当りが泉岳寺でござい

 ます」

 

茶代を置いて村上。その日は泉岳寺住持玉堂に面会した。

 

「拙者は先年京都四条畷において、大石殿の胸中知らず、無

 礼をなした、村上喜剣と申すもの、お心ばかりの回向料」

 

紙にくるんだ五百疋。小坊主のあないで墓参りを済ませ、

 品川の宿までまいり、宿を取り、その翌日より村上は、

雨の降る日も風の日も、泉岳寺まで通い続けました。

 

 

 

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何度聞いても、実にいい

 

 

 

 

 

今は亡き国本武春の創造力は

 

 

 

 

 

本当に大したものだと思う

 

 

 

 

次回は、いよいよ最後の締めくくりであろう