勝ち組を目指す敗者 | ジョイントツリー(joint tree)の『よおきたね』ブログ

勝ち組を目指す敗者

クラスメイトの中に、負けん気の強い難しい人がいる。

年はおれと同じ位。
彼は微妙に不潔で、ネクラなぽっちゃりしたオタク系メガネ。
今までグラフィックの仕事はしてない。

その人は学校が始まってから、
何人ものクラスメイトに
先生に対する不満を撒き散らし、
自分の凄さを誇示している。

その彼がおれに最初に言った言葉。
「授業のスピードが遅い!先生は責任を果たして欲しい。もっと評価して欲しい。出来ないやつばっかり、手を上げて先生に教えて貰ってる。不公平だ!おれは先生を訴える!生徒を社会に出す責任がある!勝ち組にならなきゃ!」

実際、おれの行ってる学校はハローワークがあっせんする、
仕事を増やす為の国の事業。

コンピュータグラフィックを学ぶといっても、
学ぶのは技術だけで、
センスはそれぞれが吸収するのが当たり前。

クラスメイトのみんなは、時代にのまれたり、
それぞれの事情を抱えて、前向きに進もうとする人達。
性別も、年齢も、経緯も、みんな様々。

おれは彼に、
「出来るやつもいるし、出来ないやつがいるから、先生がみんなの足並みを揃えて教えるのは大変な作業だと思う。作品の評価とかはいらないと思うよ。みんな技術を学んでるし、勝ち負けじゃ無いし。もし、教えて欲しかったら、自分で手を上げればいい。」



その後、彼は授業中に手を上げて、
全クラスメイトの前で先生を否定した。

時間が経つにつれ、一生懸命教えて下さる先生を
だんだん好きになってきた他の生徒からかなりの反感を買っている。

先生も、あれから彼に気を使うようになった。
彼が手を上げるたび、先生は彼に教えるが、
彼は急に先生にタメ口になった。
その彼の先生に対する質問は、
「先生、どうやったら美的センスが身につくんですか?」
と、授業に関係無い質問をして、先生を困らせてる。

今や「先生の授業は遅い」と言った彼が授業を遅らせている。

それに対し、クラスメイトの中の1人の名言。
「こんな小さなクラス。
そんな中で競わないでもいいじゃ無いか。
世界を見ろよ!」
これにはかなりウケた。

何とか、自分なりに、そいつが空気を読めるように誘おうとしてみるが、
そいつは嫌われ者になってる事に気づかず、
おれが彼と話したがってると捉えて、
むしろ上からおれにモノを言う。

とんだ困ったちゃんだ。

先生は彼と話す度、
愛想笑いをしているが、
彼は先生にウケてると勘違い。
更に先生に友達のようにタメ口。

彼は勝ち組を目指す敗者。
あのままでは残念な結果しか見えない。

彼を可哀想とも思えなくなった現在、
みんな諦めの境地に。

実際、勝ち負けじゃなく、
クラスメイトの作品を見るのは楽しい。
限られた技術で、アイデアを盛り込んだ作品。
どんな教科書より、ある意味勉強になる。

和気あいあい。
今はそれでいいじゃないか。

ちゃんと向き合えば良いヤツばっかりだぜ!

PEACE。