・・・・・・・・・長い長い沈黙が部屋を包み込んだ





いや本当は短かったのかも知れないけど




僕にはもの凄く長く感じたんだ







「あたしもだよ・・・・」




「えっ?何が?」




一瞬のことで訳が分からなくなった僕は、また訳の分からない受け答えをしてしまった



でもそんな僕に流華は、にこっと笑ってもう一度教えてくれた




「だから、あたしも伊藤君のこと好きだったよ。ていうか今も凄く好きだよ・・・」





「本当!?」




僕は驚いて手のひらを口に当てる







そのしぐさを見て流華は吹きだした







「何その驚き方!女の子みたいだね!(笑)」




「あっ・・・ははは」





僕はとにかく嬉しくて嬉しくて、ずっとニヤけていた





そんな僕を見て、流華はニッコリ笑っている





次郎のこととか、怪我のこととか、そんな煩わしいものは吹き飛んでいた





「今日は遅いけど泊まっていく?送ろうか?」





「そうだね、泊まろうかな?いいの?」




「おう!もちろん!」





僕はクローゼットからふとんを取り出してひき、そこにねっころがった





流華はベッドに寝てもらった





付き合うことになって、いきなり初めての夜。






普通なら男の僕から何かしかけるのだろうけど、僕は流華を大切にしたかった。





流華もそのことは分かってたみたいだ





僕らは、朝までずっと語り明かした。どっちが先に寝るのか競ってるみたいに。





でも負けたのは僕だった。





「おーい起きろ!伊藤君!」




流華がまくらで僕をはたいた。




「んんがぁがぁ!」




びっくりして飛び起きた僕を流華が優しく笑って見つめている。





「ごめんねあるもので勝手にご飯作っちゃった♪」




「ま、まじで!?すげぇ☆」





流華が作った目玉焼きは最高に上手かった。お母さんの目玉焼きを越えたと思った





「今日土曜日だし、どっか出かけない!?」





流華がキラキラした目でこちらを見る




「よっしゃあ!じゃあ遊園地行こう!」






「いゃったー!じゃああたし一回帰って準備して来るね!」







この日から、この朝から、僕と流華の夢のような日々が始まったんだ・・・・






講義の中では目があったらニヤケてばかり・・・





講義が終わったら次郎の目を盗みながら裏門に集合






近くのたこ焼き屋に行ったり、カラオケ、レンタルビデオ屋






最後はスーパーで晩御飯の買い物をして一緒に僕の家へ・・・





「ねぇこれからは伊藤君じゃなくて浩ちゃんって呼んでいい?」





「え!う、うん!いいよ♪なんか恥ずかしいなぁー」





「はははっ☆」




こんな楽しい日々がずっと続くと思ってた





でも「その時」は、あまりにも突然にやってきたんだ




僕らの運命が大きく動き始めた瞬間だった





第一章 出会い  結



























































その時何故そんなに笑い合ったのかは今でも分からない。


しかしとにかく楽しかった。


きっと流華の気持ちも同じだったと思う。


「これからどうしようか?」


「う~ん、伊藤君に任せるよ♪」


実は僕は女の子と付き合った事がまだ1度もない。


なので女の子をどういう場所に連れて行けば喜んでくれるのかなんて全く分からなかった。


「じゃぁとりあえず家来る?」


僕が考えに考えた中での一番の答えだった。

「!?。い、いいよ♪」


流華は少し驚いたような顔をしたが、僕の気持ちを察してくれたのかすぐに笑顔に戻りうなずいてくれた。


「ピンポ~ン♪」


「あ!間違えた!」


僕はもの凄く緊張していたため、自分の家のインターホンを鳴らしてしまった。


それを見た流華は隣で大笑いしている。


それにつられ僕もまた大笑いをした。


そんなどこにでもあるような笑いが流華となら何十倍もの笑いになった。


「わぁ~部屋綺麗だね♪♪次郎の部屋とは大違い♪♪」


流華は、あ!!という顔をしたが続けて話し始めた。


「晩御飯どうしよっか!?」


楽しい時間は過ぎるのが早いもので、時計を見れば既に19時を回っていた。


「一緒に作る?」


恥ずかしながら僕はこの質問にかなり勇気をふりしぼった。


「やった~!!私もそうしたかったんだッ♪♪」


僕は冷静な顔をしていたが、内心ほっとしている。


それから近くの24時間スーパーに買い物に行き、御飯を食べながらビデオを見ようという話しになったので帰りに僕の行きつけであるビデオ店に寄りビデオを借りた。


今日の晩御飯はカレーライスだ。


話し合った結果2人共カレーが大好きだったからだ。


流華と作ったカレーの味は…もちろん絶品!!


いつもの米にルーに野菜、しかし何故こんなにおいしく感じるのだろう!?


御飯を食べ終えビデオを見ていると不意に流華が呟やいた。


「伊藤君って彼女とかいないの?」


僕は予想外の質問で目がまん丸になった。


「伊藤君の彼女さんは羨ましいなぁ~。」


早く返事を返したい僕は流華の言葉をさえぎり喋りかけた。


「俺彼女いないから…。」


一瞬沈黙が走る。


その後の事ははっきりとは覚えていない。ただ感じるままの気持ちで話し続けた。


「俺流華が好きなんだ!」



「うるせぇなぁ、ちょっと自転車でこけたんだよ!」




「なんだそれ、ださいなぁ(笑)」




隼田がまたトトロのような顔で僕を見る。



「あ、そうだ、そう言えばみんな種本さん知らない?」



「種本さんは今日は来てないみたいだよ。電話しても出ないんだよねー」



流華の親友の田淵さんだ。





「そうなんだ・・・・」




僕はますます心配になった。




「俺、今日帰るわ!」





「え?これから高崎の実習だぞ?先生に怒られるぞ!?」




「悪い!」



そう言って僕は講義室を飛び出した。





とにかく心配で胸が苦しくなった。





ロッカールームを出て、自転車置き場まで来たときに僕は足を止めた・・・






流華と次郎が自転車置き場にいたのだ・・・どうやら口げんからしいものをしていた





そのとき目の前の光景に僕は絶句してしまった







「パシっ」





次郎が流華のほほを思い切り叩いた





僕は頭に血が上って何が何か一瞬分からなくなった






「おうおおおおおおお!!!」





後から、その光景を講義室から見ていたマッツンに聞いた話では、僕は猛スピードで階段を駆け下り、次郎に向かってボディタックルをしたそうだ。







こう見えて僕は意外と体力がある。夜はいつも近くの公園にジョギングに行ってたし、家の中では縄跳びをしている。






その日ごろのトレーニングが功をそうしたのかは分からないが、僕は次郎を跳ね飛ばし、次郎は並べてある数台の自転車に被さるようにぶっ倒れた。






「伊藤君!?」




流華が目をまんまるにして、僕の方を見ている






「ハァハァ、だい、大丈夫??」




「うん・・・」





僕は自分が何をしたのか、やっと分かりはじめた。




そのとき同時に、次郎が起き上がろうとしてこちらを睨み付けているのが目に入った。






「ヤバイ、殺される」





ふいにそう悟った僕は流華の手をとって、走りだした






「待てやおどりゃ!こらあ!」






後ろから次郎の声が聞こえたが、無視して走り続けた。






僕は気がついたら実習室まで来ていた





流華の手に触れたのは初めてだったのにその時はそう感じなかった







「ちょっと~~!!土足~!!」



高崎先生だ。うちの大学は構内土禁だが、この先生は特別それに厳しい




特に彼女の聖地である実習室では、土足は絶対禁止なのだ




「すみません!!」




僕らは同時に頭を下げて、実習室を出た




でもなぜだが実習室を出たとき、顔を見合わせて笑った




「なーっはっはっは!」




「あははははは!」