紅い花散りて

その失われゆく存在を焼き付けようとするかのやうにそこかしこに紅流れる。

まるであの虐げられし女の悔し涙のやうぢやないか。

 

やがて月が明け あのおぞましい八月がやつてくるのだ。
存分に哭いておくがいい
假面舞踏會までもう少し
虚榮と云ふ假面を貼り附けた者たちが集ふ虚構の館で
後ろを向き舌を出して臺本を攫ふ
ちやんと覺えてこなせば襃美が出る筈だ
 

秋津が空に盛大な點々を附け蝉が不協和音を奏でる季節はほんの短いものさ
己に語り掛け道化の所作も攫ふ

 

暴力でしか自己表現が出來ない男が「くだらねえな」とふて寢する。
それを見て後ろを向ひて嗤う吾
また毆られし女の悲鳴がするのだらう
それも一興と
同情を買ふ所作でも攫はうかとまた夏が過ぎゆく。

嗚呼 入道雲が來たよ 
嗚呼 紅い雫を流す雨を降らせたまへ