彼はひきこもりだった 完 | ラッキースターボクシングクラブ

彼はひきこもりだった 完

続き

十分な練習をこなしたうえで面接に挑んだ彼は、
その会社に採用されることとなった。
がんばった甲斐があったと私も喜んだ。

彼は就職後もしばらくは練習に来たが、
来るペースがおち始め、
やがて数か月後にはまったく顔を見せなくなった。
仕事が忙しくなったんだろうと考え、
時たま、元気にしているだろうか、
仕事は続いているだろうかと彼のことを思いだした。

それから7年ほどたった頃だったかと思う。
ある日、ジムの前に軽トラが停車し、
作業服の男が降りてきたと思ったら、
そのままジムに入ってくる。
何だろうと思って見ると、彼だった。
「お久しぶりです、覚えてくださってますか?」
照れくさそうに笑う彼は、
かつての彼とは別人のようになっていた、
聞けば、就職して始めた建築の仕事をずっと続け、
独立して「ひとり親方」になったのだそうだ。
在籍した会社の下請けですよと謙遜するが、
たいしたものだよと心から感心した。
「あの時、ボクシングと出会ってなかったら、
 今もまだ家にこもってたかもしれないです」
いきいきと明るく語る彼の言葉に
よかった、ほんとによかったと
喜びで胸がいっぱいになった。

終わり

 

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