http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150223-00000011-sasahi-int
政府などによるネット上の自由の制限に抵抗してきたハッカー集団アノニマスが、「イスラム国」を攻撃している。
「戦争」は、ネット空間にまで広がった。(ジャーナリスト・津山恵子)
「ウイルスのように扱ってやる。そして、われわれがその治療法だ。われわれは、インターネットを席巻しているんだ」
2月6日、アノニマスはインターネット上にアップした2分12秒の動画で、こう宣言した。真っ赤な画面に浮かび上がるのは、彼らのトレードマークの仮面。合成されたような声で語る。
「『イスラム国』を名乗る連中のウェブサイト、アカウント、メールアドレスを破壊してやる。お前たちには、オンラインで安全な場所はない」
●アカウントをアクセス不能に
「宣戦布告」は、米国をはじめ西側諸国が「イスラム国」に対する有効な対策を取っていないことへの反発とみられる。
アノニマスは英語で「無名」の意味。
彼らのテロリストに対する攻撃は、今年1月にフランスで起きた風刺新聞シャルリー・エブド襲撃事件をきっかけに始まった。
米メディアによると、アノニマスはすでに、「イスラム国」に関係しているとされる800ものツイッターアカウント、12のフェイスブックページ、50のメールアドレスを攻撃している。
攻撃には、特定のアカウントに一度に大量のデータを送り、アクセスできなくする方法を用いたという。
日本人の後藤健二さんや湯川遥菜さんを含め、罪のない各国の市民の殺害を続ける「イスラム国」への攻撃は、多くの市民の賛同を得た。動画のサイトには、
「アノニマスは立派だ」
「そうだ! 民衆に力を!」
といった書き込みも見られた。
アノニマスは、さまざまな職業のハッカーが権力や不正に反発するとして団結、2010年ごろに活動を本格化させたとみられるが、参加人数は不明だ。
彼らの活動が広く知られるようになったのは、10年12月のことだ。
機密情報をネットで公開する集団「ウィキリークス」が、米国の外交文書を大量に公表した際、アノニマスは、マスターカードなど米大企業がウィキリークスヘの支援を打ち切ったことを「不公正」だとして反発。
これらの企業のウェブサイトを攻撃した。サイトはアクセス不能に陥り、大ニュースになった。
●サイバー戦争の新たな舞台
今回のアノニマスの攻撃は、ソーシャルメディアが中心。テロリストたちは、ソーシャルメディアを使って多くの若者を世界中からリクルートし、「イスラム国」には約100カ国から2万人超が流入したとされる。
日本人人質事件では一連の殺害予告にもツイッターが使用された。
「イスラム国」にとって、ソーシャルメディアを止められることは、世界へのアピールの手段を失うことにつながる。
ツイッターやフェイスブックなど大手ソーシャルメディアは、アノニマスが一方的に仕掛けた「戦争」とテロリストの活動を制御できるのか。
CNNによると、ツイッターの最高経営責任者(CEO)ディック・コストロは過去に、ツイッター上の炎上やいじめに関するツイートの削除について、内部メモでこう述べている。
「CEOとして、この問題に対し、当社の対応が貧弱で正直言って恥じている。ばかげている。何の申し開きもできない。この問題にもっと積極的になれないのは、私の責任だ」
これにCNNのサミュエル・バーク記者はこうコメントした。
「炎上やいじめが止められないなら、どうやってテロリストを止められるのか。ソーシャルメディアには、その力があるという確信が持てない」
企業や政府のウェブサイトを攻撃し、インターネットユーザーの自由を制限するアノニマスが100%「正義の味方」か、というと疑問が残る。
誰が参加しているか分からないハッカー集団が、世界中の個人アカウントや情報を自由に閲覧し攻撃するなら、あなたのテロリストに関するツイートが攻撃対象になる可能性もある。彼らには、説明責任もない。
ネットには「警察」や「統治」はいらない。アノニマスという「警察」も、求めていない。
※AERA 2015年3月2日号
