ひとつ前の記事に、16トラックのMTRの話を書きました。最近の機材の進歩とそれに伴う低価格化はすさまじく、隔世の感があります。
今回のお話は、どっちかっていうと若い人に読んでもらえると面白いと思います。昔は機材がショボかった分、創意工夫の楽しみがあったというお話です。
いや、昔は良かったというお話とはちょっと違います。絶対に今の高性能な機材の方がいいです!
私が初めてMTRを買ったのは、記憶の中でそのMTRを使っている部屋から判断して1996年から1997年の間の事でした。TASCAMの4トラック、カセットMTRでした。
カセットMTRと言っても、若い人にはピンと来ないかもしれません。そもそもカセットテープというもの自体随分前からあまり見かけなくなりましたし。簡単に説明します。
カセットMTRの仕組みはこういう感じです。
トラック1 A面の右チャンネル
トラック2 A面の左チャンネル
トラック3 B面の右チャンネル
トラック4 B面の左チャンネル
この仕組みは今考えてもすごいアイデアだと感心してしまいます。
カセットはAB面の両面がありますけど、ディスク状の記録媒体とは違って、AB面の記録・再生の区別は通常、テープの走行方向によります。MTRの場合は、これを片方の方向でAB面両面に記録・再生ができるようようになっていたという事です。
書いててわかりづらい事はじゅうぶん自覚できています(笑)。しかし私の文章力だとこう書くしかないのです。書くのも大変な仕組みを考え出して、実際に機材を作ったという人はえらいです。
トラック数が4本しかありませんから、録音作業には大変な苦労を伴うものでした。
普通に考えて、ロックやポップスの音源を作成しようとしたら、楽器の数だけトラック数が必要になります。仮にトリオバンドの音を録音しようとしたら、楽器×3、ボーカルで4つですから一杯です。という事はコーラスが入ったりしたらもうオーバーしてしまうんです。
ですから、トラックをムリヤリ空けるための作業が必要だったんです。ピンポン録音というやつです。(=バウンスとも言います)
1トラック・2トラック・3トラックの音を一緒にしてまとめて4トラックにダビングすれば、1~3トラックをまた使えますから、4トラック機材で合計6つの音を使う事ができます。この作業をピンポン(バウンス)と呼ぶんです。
部分的なミックスダウン(?)作業を挟みながら作業を進行させるという感じです。という事はつまり、音を多く入れようと思ったら常にピンポン用に1トラック空けておかないといけないという事です。
しかし、記録媒体がアナログのテープですから、ダビングを繰り返すとどんどん音が痩せていきます。あまり無理にたくさんの音を入れると、最初の方に録音したドラムの音なんかはひどいモノで、ヘタをすると部分的に音が聴こえなくなるなんて事もありました。
また、ドラムを打ち込みで入れる場合はリズムマシンを使っていました。MTR自体は巨大(私が持っていたのは幅が60センチくらいありました。)なのに、リズムマシンは当時からけっこう小型でした。しかし小型という事はモニターも小さく、100円ライターくらいの大きさの小さい液晶モニターとにらめっこしながらチマチマと打ち込んだものです。
現在では、デモ音源を作る時なんかにドラムを打ち込みする場合は、Hydrogenというフリーソフトを使っていますから楽だし、簡単にソコソコいい音が出せます。
しかし当時は実用レベルの音を出せるパソコンなんてありませんでした。いや、あったのかもしれませんけど、パソコン自体がそれほど一般化していなかったので、多分かなり高価だったと思います。
96年~97年当時のパソコン事情は全然知りませんが、そのちょっと前だとファミコンみたいなピコピコ音とノイズ(PSG)とか、今の感覚でいくといかにも安っぽいシンセという感じのFM音源とか、そんな程度のものだったら安いパソコンでも出せたとは思うんですが、サンプリングなどのいい音が出るパソコンはかなり高かったんじゃないかと思います。
話は逸れますけど、FM音源って言えばDX-7なんていう超有名シンセサイザーも6チャンネルのFM音源搭載だったと思います。持っていたのは高校生の頃で、当時としてはいい音だったし、難しいけど自分で音も作れるという事で、これはスゴイ!と思ってました。しかしメチャクチャ重たかったです。20キロくらいあったと思います。
ところで25万もするDX-7をなぜ私が持っていたのかと言うと、けっこうな豪邸に住むいわゆる坊ちゃんみたいな同級生がおり、彼が持っていたDX-7を頼み込んで2万で売ってもらったんです。恥ずかしながら告白すると、2万円+裏ビデオで買いました(笑)。
ちなみにそのDX-7は所属していた大学の軽音部に卒業する時に寄付しちゃいました。今思えば持っとけば良かったかなと思います。今から取り返しにいこうかな!(笑)
話が逸れ過ぎました。
そういう苦労を重ねてどうにか音源を作るというのが当時の苦しみであり、創意工夫の楽しみでもありました。そのカセット4トラックで録音した音源が残っていたので、ちょっとだけ公開します。
恥ずかしいので、歌が入る直前のイントロだけです。この時の録音では、ドラム(リズムマシン)、ベース、アコースティックギター、エレキギター、ボーカル×2の6トラックを使っていますから、当然ピンポンでダビングという作業が入っています。演奏はともかくとして、録音自体はそこそこキレイに録れていると思います。