吐息でネット
あなたを縛りたい そっと
やきもちじゃなくて
言いつくせない 愛がもどかしいの

 

吐息でネット 南野陽子 (レコード音源)

大学の研究室にテレビがあった。
この頃、僕は修士1年。
装置を調整していた博士課程の先輩に声をかけた。
「Oさーん。コーヒーにしませんか?
 ベストテン始まりますよ。南野陽子でますよ」
「そーかー。じゃあ、休憩しようか」
テレビをつけると周りにいた同期も
「しょーがねーなー」
とニヤニヤしながらテレビの前に集まってくる。
夜の9時過ぎ。
僕らはアイドルに元気をもらって研究を続けた。
古き良き時代だった。


「吐息でネット。」は2月26日にリリースされた
南野陽子(ナンノ)の最大ヒット曲。
皮肉なことに、この頃の彼女の体調は最悪だった。
一番苦しかった時かもしれない。

3月9日に気管支炎で緊急入院。
その日の「夜ヒット」には出演できなかったが、
翌日3月10日の「ザ・ベストテン」には出演。
この日はおそらく病院から直接スタジオ入り。
以下はその時の映像。

 

吐息でネット 南野陽子 1988月3月10日
(ザ・ベストテン 初登場 第3位)


うまく歌えない自分を歯がゆく感じているようだ。

後のインタビューで「吐息でネット。」の頃は
病院から仕事場に通っていたことを語っている。

「病院で夜寝る時には点滴をしてもらって、で、

朝また出て行くって言うような、そんな感じで」

自宅のベットでは
「寝てないです。楽屋か、病院か、車の中か」

 

吐息でネット 南野陽子 1988年3月27日
(スーパーJOCKEY)
1min42secから

https://www.bilibili.com/video/BV1Ru41157n3/

(中国系サイトですが、ここからも見れます)


少し回復してきた南野陽子。

一方的に元気をもらっていた僕ら。
今思うと、なんか申し訳ない。

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「吐息でネット。」は南野陽子の11thシングル。

作詞 田口俊、作曲 柴矢俊彦、編曲 萩田光雄

1988年2月26日リリース。
オリコン1位。
南野陽子の最大のシングルヒット(30.4万枚)。

オリジナルアルバムには未収録だが、
1988年3月21日に「吐息でネット。」を
含んだ初のベストアルバム

「NANNO Singles」をリリース。
このベストアルバムは

オリジナル/ベスト アルバムを通じて
彼女の最大ヒットアルバムとなる(48.1万枚)。 

カネボウ化粧品 
"BIOフィットネット口紅"、
"88年カネボウ春のバザール" CMソング。

 

カネボウ フィットネット口紅 CM

吐息の水分が唇にネット状のベールを作る。
だから「落ちにくい」「におわない」「軽い感触」

理系の僕には、

分った様でいまいち分らないコピー。
だけど、それはおいておこう。

「吐息でネット。」は
少女以上、大人未満の歌詞だ。

そうは思っているものの、

「my true love
変わってく 私がわかる
朝の光に
腕の中 目覚めるそのたびに」

...あぁ、ナンノお前もか。


歌詞の「吐息でネット」の「ネット」は
まさに彼をからめる網。

「包んでしまいたいハート」
「甘く閉じこめたいハート」

"包んでしまいたい" から "閉じこめたい" 

「あなたを縛りたい そっと」
「あなたを縛りたい ずっと」

"縛りたい そっと" から "ずっと"

想いは強くなっていく。

彼に追いつきたい
早く大人になりたい
そんな彼女の少し切ない「吐息」は
彼を束縛したいという想いそのものであり、
そうなってほしいという魔法のようだ。

今も美しいナンノだが、
ナンノが通っていた神戸の松蔭中/高 の
真っ白な夏の制服(+赤のワンポイント)は印象的。
この制服を着ていた時のナンノに

会ってみたかった。