「東京、どうだった?」
「面白いと思う。」

「色んな人がいるでしょう」
「うん。色んな人がいる。」

「学校、どう?」
「うん。行ってる。」

映画「BU・SU」(1987年)のラストシーン。

富田靖子が演じる暗い高校生、森下麦子。
このラストシーンで初めて麦子が笑う。

バックに原由子の「あじさいのうた」が流れ、
エンドロールへ。
本編で笑顔がない分、エンドロールでは、
オフショットの富田の笑顔を見ることができる。



僕にとっては「あじさいのうた」は
映画「BU・SU」の主題歌。

歌詞は映画と全く関係がない。
だけど不思議とそう違和感はない。

 

あじさいのうた  原由子

冒頭、麦子の上京時に流れる
「花のまち(花の街)」も、
全体を通して流れる重要なテーマ曲。
上京時の歌は西尾美汐名義で
小川美潮が歌っている。

 

花のまち  西尾美汐(小川美潮) 

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映画「BU・SU」は1987年の映画。
監督 市川準 、主演 富田靖子 。


大学の頃よく見た僕の好きな映画だ。

性格が暗く、心がBUSUな森下麦子。
だけど決して悪い子じゃない。
家庭の問題で少しひねくれているだけだ。
そんな麦子が、東京で様々な人と触れ合い
成長していく物語。


以下は映画のあらすじ(ネタバレあり)。

家庭環境のせいで性格が暗く、
ひねくれている麦子は、
芸者の修業をするために
母の元、伊豆を離れ上京する。


学園祭が近づく高校。
芸者の卵ということで、
麦子は学園祭のクラスの出しものを

押し付けられてしまう。

最初はやる気がなかった麦子だったが、
様々な人との出会いを通して、

「私が「八百屋のお七」を踊ります」

と宣言して練習に取り組む。

数少ない2人の友達は黒子として

一緒に練習を手伝ってくれた。

 

「八百屋お七」は恋人に会いたい一心で
江戸で放火をし火刑になる少女、お七の話。
かつて花形芸者だった麦子の母が
若い頃に浅草公会堂で舞った演目でもあった。


学園祭、当日。
麦子が初めてやる気を出して演じた

「八百屋お七」は、
火の見やぐらのセットの梯子が

壊れる(誰かに仕組まれた?)ハプニングで

途中で終了。大失敗に終わる。

麦子は放心状態になってしまうが、
邦彦に校庭に連れ出され、促されて、
キャンプファイヤーのやぐらに
火のついたランタンを投げ入れる。

やぐらは江戸の大火の様に燃え上がった。

炎を見つめる麦子。その姿はお七の様だ。

炎を後にし、顔を洗っておしろいを落とす麦子。
その顔からは暗さが消え、
すっきりとしたものになっていた。

 



お七は丙午(ひのえうま)の生まれとされている。
前回の丙午は1966年、次は3年後の2026年だ。

八百屋お七の墓は東京都文京区白山にある。

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「あじさいのうた」は

1987年の原由子の6thシングル。
1991年の3rdアルバム「MOTHER」にも収録。

作詞・作曲 原由子、編曲 桑田佳祐&藤井丈司

 

あじさいのうた (Music Video)  原由子
映画とは別世界。だが、これもいい。