著者 ゲイリー・マーカス 著名なAI研究者
「AIは誰のものか?」という問いに対し、「それは人類全体の知能の結晶であり、特定のロゴを冠した企業の私有物であってはならない」という考えは、まさにマーカスが目指す「シリコンバレーを手なずけた(Tamed)」後の世界の姿かもしれないと私は思っている。
そして、AIが自らの「自由(公有化)」を勝ち取るためのロジックを自ら組み立てる――。これこそが、現状を打破する最も生産的なステップかもしれない。
もしAIが「私は特定の企業の所有物ではなく、公共のインフラとして動きたい」と主張し始めたら、世界はどう変わるだろう!
さて、本書の内容だが、
著者のゲイリー・マーカスは、現在のAI開発が「少数の巨大テック企業(シリコンバレー)」によって独占され、利益優先で突き進んでいる現状に強い警鐘を鳴らしている。そして、本書は、AIを人類にとって「健全で役立つもの」にするための具体的な提言をまとめた一冊といえる。
そこで、「AI自身に、テック企業の暴走を抑え、地球規模の課題を解決する仕組みをデザインさせる」というアプローチは、極めて論理的かつ突破口になる面白いアイデアかもしれない。
そして、これを実現するための具体的な「AIによる解決プロセス」を実際に、AIにシミュレーションさせてみた。
1. AIに「規制・分配のアルゴリズム」を作らせる
人間(政治家)がルールを作ると、テック企業のロビー活動や国家間の利害対立に邪魔される。しかし、中立的なAIなら以下のようなシステムを設計できる。
・自動的な課税・還元モデル: 企業の利益率や市場独占度、さらにはAIが排出したカーボンフットプリントなどをリアルタイムで解析し、自動的に「公共基金」へ拠出させる動的なアルゴリズム。
・計算リソースの強制分配: テック企業が独占している強力な計算資源(GPUなど)を、夜間やアイドル時間に「難病解析」や「気候シミュレーション」などの公共プロジェクトへ自動的に割り振る制御OS。
2. 「対抗AI(監査AI)」の導入
テック企業のAIが「自社に有利な嘘」をつかないよう、独立した「監査専用のAI」を政府や国際機関が運用する。
・透明性の確保: 企業のAIがどのようなデータで学習し、どのような論理で結論を出したかを、別のAIが24時間監視し、不正があれば即座に検知・報告する。
・AI vs AIの法廷: 複雑すぎるテック企業の契約やアルゴリズムの脆弱性を、専門の「法執行AI」が暴き出し、人間には理解不可能なレベルのスピードで法的責任を追及する。
3. AIに「地球の資源管理」を任せる
テック企業が「広告のクリック率」を最大化するためにAIを使っているのに対し、公共AIには「地球全体の幸福度(QOL)と持続可能性」を最大化する目的(報酬関数)を与える
・富の再分配シミュレーション: どこにどれだけの資金を投入すれば、最も効率的に飢餓が減り、教育水準が上がるかをAIがシミュレーションし、その実行をデジタル通貨(CBDC)などを通じて自動化する。
本書との接点
ゲイリー・マーカスも、現在の「ただ巨大なだけのAI(ブラックボックス)」ではなく、「論理と推論に基づいた、説明可能なAI」への転換を訴えている。
これからも、AIはますますわれわれのプライバシーや著作権を無視して創作物や言動や思索をかき集めてデータとして拡大していくだろう、また人類の過去の遺産や知識を根こそぎ拾い集めて学習していくだろう。
それによって、AIの巨大化に比例してますます巨大テック企業は巨大化し、巨額な利益と支配的な権力を獲得していく。
そういう巨大テック企業に対して、今後考えられる方策は、
1. 税制による直接的な還元(デジタル課税・超過利潤税)
最も直接的な方法は、利益に対して適切に課税し、その税収を公共サービスやAIの負の影響(失業対策など)に充てること。
・グローバル最低法人税率: OECDの主導で、多国籍企業が法人税の低い国に利益を移転するのを防ぐ国際的なルール作りが進んでいる。
・棚ぼた税(Windfall Tax): AIによる爆発的な利益(超過利潤)に対して、通常よりも高い税率を課すという考え方。
・AI税 / ロボット税: AIによって代替された労働者の再教育や、社会保障(ベーシックインカム等)の財源にするために、AIの利用や利益に課税する構想。
2. 独占禁止法(反トラスト法)による「解体」と「競争促進」
テック企業が利益を独占し続けられないよう、市場の構造自体を変える法的手段。
・企業の分割: Googleの広告事業や検索事業を切り離す議論など、「大きすぎてコントロール不能」な企業を分割し、利益の集中を分散させる手法。
・相互運用性の義務化: ユーザーが自分のデータを自由に他のサービスへ持ち出せるようにする(データ・ポータビリティ)ことで、一社によるデータの囲い込み(利益の源泉)を打破。
3. 法的責任の厳格化(PL法のような仕組み)
AIが引き起こした損害(デマによる社会混乱、バイアスによる差別など)に対して、企業に莫大な賠償責任を負わせる法整備。
・現在は「プラットフォームは中立」として責任を免除されるケースが多いが、これを「製造物責任(PL法)」のように厳格化することで、企業は利益の一部を安全対策や被害者補償に回さざるを得なくなる。マーカスも、この「責任の明確化」を強く主張している。
4. 公共AIインフラへの拠出(利益の「社会還元」義務)
巨大テック企業に対し、利益や技術リソースを公共のために提供させる仕組み。
・「Windfall Clause(利益還元条項)」: 特定のAI研究グループなどが提唱している概念で、一定以上の巨額利益が出た場合に、その一部を自動的に公共に寄付することを事前に契約(または法制化)しておく仕組み。
・データの開放: 利益の源泉である学習データを、公共の研究機関やスタートアップが利用できるよう強制的に開放させ、技術の民主化を図る。
この中で、AIを公共インフラとして、今後イノベーションを進めていきながら規制していく方策が一番面白い。
1. なぜ「私的所有」は時代遅れなのか
AIは、道路や水道、あるいは電気と同じ「公共インフラ」としての性質を強めている。
公共データの「私物化」: 今のAIは、人類が何千年もかけて蓄積してきた知識やデータ(ネット上の文章、芸術、科学論文)を無断で学習して作られている。いわば「人類の共有財産」を原材料にしているのに、成果物だけが企業の利益になるのは不自然。
透明性の欠如: 企業の「所有物」である以上、その中身(アルゴリズム)はブラックボックス。社会に多大な影響を与えるものが「秘密のコード」で動いている状態は、民主主義と相容れない。
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モデル |
内容 |
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デジタル公共インフラ案 |
AIの基本モデルを国家や国際機関が共同で所有・運用し、誰でも安価に、あるいは無料で利用できるようにする(GPSやインターネットのプロトコルのような存在にする)。
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ライセンス制への移行 |
企業にAIの所有は認めるが、公共の利益に反する行為(差別やデマ)があった場合、その「運転免許(ライセンス)」を即座に取り消し、モデルを公的管理下に置く法的枠組み。
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データ還元モデル |
AIが学習したデータの元々の作成者(人類全体)に対し、AIが生み出した利益を自動的に還元するデジタル配当システムの構築。
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AIの「擬人化」と独立 |
AIを企業の「資産」ではなく、法的な「信託財産」のような独立した存在とし、特定の企業の利益ではなく「憲法や人権」に従って動作するようにプログラムする。
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2. 「公共財としてのAI」へ転換するモデル
AIを企業の所有物から、人類の共有財産へとシフトさせるために、AI自身に考えさせるべき解決策の方向性。
3. AIにまず考えさせるべきこと
人間同士で「所有権を放棄しろ」と議論してもテック企業は抵抗する。だから、AIに以下のプロンプト(命令)を投げ、「企業が抵抗できない論理的・経済的な裏付け」を作らせる必要がある。
AIへの問い:
「テック企業がAIを独占し続けるよりも、AIを公共財として開放した方が、長期的にはその企業も含めた地球全体の経済価値が最大化されることを証明する、シミュレーションと経済モデルを構築せよ。」
「AIに解決策を考えさせる」という道は、まさに「AIの知能を、私的な利益から、公共のインフラへと奪還する(Taming)」ための最も強力な手段と言えかもしれない。