R.コルサコフ : 交響組曲 シェエラザード | JohnnyClassic

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ロック・ヴォーカリストJohnny が、厳選し紹介する
次世代にも引き継いで行きたいクラシックの名盤選集です
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【指揮】 ジェラード・シュワルツ

【演奏】 シアトル交響楽団(ソロ:Maria Larionoff)

【録音】 2011年

 

最近、選盤の見直しを図っています。過去に、ちょっといい加減に挙げていたものもあったなあ、なんて。もちろん巷では名盤誉れ高いものではあったりしますが、「我が人生でこの曲はこのCD!」とまで言い切れるものもあれば、そうでないものがある事に気付きました。


今回のシェエラザードもその一つ。以前はカラヤンの60年代のものを挙げていました。もちろん、コンマスのシュバルベのヴァイオリンを始め、悪くはありません。ただ、どうしても古い録音のため、迫力のある音や、繊細な弱音を捉え切れていないところがあるというのは、以前の投稿でも書いていました。

 

その様な中で、発見したこの盤。その内容を紹介する前に、以前の投稿で書いていたシェエラザードにまつわる話を補筆訂正し、紹介致しましょう。

 

『ミリ・アヴィタルが主演のテレビ映画「アラビアン・ナイト」を観ていて、この曲を思い出しました。映画中で使用されてはいませんが。この映画は、テレビ用のため3時間近くあり、今はDVDも廃盤になっていますが、これがなかなか良い内容なので、こうして風化していくのが勿体なく思えます。

 

M:I2で憎々しい悪役を演じたダグレイ・スコットが王の役で、弟の裏切りと妻の不貞から心を病み、迎えた新妻を次々と部下に命じて殺害していきます。ところが実はその部下も、今は王のもとを離れている弟の間者なのでした。幼馴染のシェエラザードは、何とか元の彼を取り戻そうと、敢えて新妻に名乗りを上げます。こんな王なのに、「愛している」と優しく接します。ところがやはり王は、その母性的なところが却って癪に障り、美しいシェエラザードの美貌に惹かれながらも、殺害しようとします。シェエラザード自身も実は恐怖と戦いながら、かろうじてのところで逃れ、事なきを得ます。

 

そこで思いついたのが、次の日の朝に殺害されないよう、毎晩、夜更けまで王に話しを聞かせていくこと。これが「千夜一夜物語」で、ディズニーで有名な「アラジン」も、その物語の中の一話です。さて、その話しが詰まらないと飽きられてしまうため、続く。。。と引っ張ったり、うまく違う話に繋げたりして、王を惹きつけていきます。またそれらの物語には、政治の中でも教訓になる含蓄もあり、最終的に、シェエラザードの献身的な愛に気付いた王は、攻めてきた弟と戦う際に参考にし、勝利を収め、二人の間に子供も生まれ、大団円となるのでした。めでたしめでたし。

 

だけど、過去に殺害された新妻への罪は何処へ?王なら心神耗弱という事で許されるのか? というか、こんな綺麗で親身に思ってくれる女性がいるのに、いつまで病んどんねん、読み聞かせって子供かよ!なんて思います(笑)。私なら、彼女が新妻で来てくれたら、膝枕一つで治りますね(笑)。


まさにそう思わせられるほど、ミリ・アヴィタルが透き通るような美しさです、この時のミリは、私の理想の女性像です。しかし花の命は短けり(相変わらず男尊女卑ですみません)、ミリの美しさもまた遠い伝説の物語の一部になってしまったのだなあ、などと思います…(涙)。

 

で、そのシェエラザードを題材にしたのがこの曲です。近代のロシアものは苦手と思ってしまう私でも、この曲は大好きです。まさにフィルム・スコアのようで、どの演奏がどの場面を表しているか知らなくても、そのムードを楽しめます。全4楽章からなり、タイトル通りほぼ交響曲ですが、CDショップなどでは管弦楽曲の部類で並んでいるため、そのカテゴリにしました。』

 

との事でした(笑)。

 

という訳で、この盤の特徴ですが、まず音が澄み切っていて、聴いていてとても心地良いです、快感とまで言っても良いかもしれません。重厚感にも欠けていません。新しい録音だから、というだけではないでしょう。指揮者を始め、エンジニア達も含めた素晴らしい仕事ぶりの成果だと思います。ナクソス・レーベルだからと言って決して舐められませんね。

 

シュワルツとシアトル交響楽団、正直、初めて聴きましたが、ブラボーです! この曲を改めて聴き直す際に、またSpotifyで色々と試聴しましたが、この盤がダントツで良かったですね。テンポ感、演奏、録音、全て良しです。

 

最初は、スメターチェクのにしようかとも思ったんですね。ただ、若干テンポが遅い。カラヤンのとこの盤は、速めでテンポ感も似ています。ただ、2楽章はシュワルツの方が1分以上速いため、こちらの方が飽きずに聴けますね。4楽章の畳み掛けるところは物凄い迫り方で、カラヤンのとは10秒しか速くないとは思えないくらい、速さを感じます。

 

まあ決して速いは正義ではないですが、この曲に関しては、ゆったりペースだと飽きが来ます。カラヤンのですら退屈でした。ところがこの盤は、聴いていて楽しくて一気に聞き通してしまいました、寝落ちもせずに(笑)。

 

ソロのヴァイオリンは、カラヤンの時もそうでしたが、コンマスが弾く場合が多いですね。ここでもコマンスの方です。マリアさんという女性の方ですが、ここがポイント。普段は過去の苦い経験から、「女性奏者は顔で聴くな、耳で聴け!」と、他人ではなく自分を戒めている私ですが(苦笑)、このシェエラザード、タイトルの通り、王様ではなく御妃様の方です。なので、女性がヴァイオリンを奏でて、物語=音楽をスタートするのは、極めてこの曲に合っています。というよりそうあるべき曲かと思えます。

 

このコンマスの方、もちろん存じ上げません。が、冒頭のヴァイオリンのメロディ、この曲も、この冒頭の奏で方一つで、一瞬で好みの盤かどうでないかを判別出来ますが、素晴らしい入り方です。テンポ感、弾き方、音色、まさに理想的です。うっとりしますね。

 

そして、4楽章の締めの弱音。何と言ってもここが凄い! 聴こえるか聴こえないかの弱音を、とても綺麗に弾ききっています。あまりの素晴らしさに、聴き終えた後、うーん凄い、と唸りました。こんな繊細によく弾けるものですね。で、やはり、ここは新しい録音でないとこのラストの美しさを捉え切れないところはあります。なので、この曲も様々な盤がありますが、21世紀になってようやく出会えた盤と言えるでしょうか、とても嬉しく思えましたね。

 

こんな素晴らしい盤を作ってくれた演奏者やスタッフの方々に感謝です。CDの帯に、「この曲を知らない人がもしいるのなら、すぐに手に取って、そして聴いてみてください」とありますが、私からは、「この盤を知らない人がもしいるのなら」と申し上げたいところです^_^