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     地球史探訪: 「一つの中国」という妄想
        ~ G・B・リー『満州国建国の正当性を弁護する』から

 欧州は人口約6億で55の国。14億人もの中国に、台湾も統合されなければならないのか?
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■■ブラジル日系人の「日本の根っこ」を知るYouTube三部作■■

■ブラジル日系移民、一世紀の苦闘
 日系移民がブラジルで尊敬される地位を獲得するまでには、日本人の「根っこ」に支えられた苦闘の物語があった。
https://youtu.be/Y2wtemPOAgg

■川村真倫子先生 ~ 美しい日本語をブラジルの子供たちに伝えて60年
「この日本語に触れ、慣れていくうちに、非日系の子どもたちまでが、少しずつ内面から変化していくのです」
https://youtu.be/b1kSl304rO8

■ブラジルで花開いた「日本の心」
 地球の裏側で苦労しながら、美しい「日本の心」を花開かせている同胞たち。
https://youtu.be/pH8D49cci4g
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■1.台湾独立を許さない中国の妄想

 台湾総統選挙が行われ、与党・民進党副総統の頼清徳氏が当選しました。蔡英文現総統の路線を継承して、日米と協調した対中抑止路線をとるものと見られます。

 中国は頼氏を「独立派」だと非難していますが、現在の台湾が自由で民主的な大統領選挙も行える立派な独立国であることは誰の目にも明らかです。その台湾が独立を表明することは、絶対許さないという中共政権の異様さが改めて、浮き彫りになりました。

 最近、ある本でこんな指摘に出会いました、

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 どんな人々もその意思に反して永遠に支配されることはない。・・・我々が、ヨーロッパが三十五の主権国に分解していることを見出すのはこの理由による。そのうち九か国が人口百万人以下、十六か国が一千万人以下で、ロシアを含む五か国が四千万を超えているだけである。
そして、スイス、オランダそしてデンマークのような小さな国よりも幸福に暮らしている人々がどこにいるだろうか。なぜ同じ民族の原則が中国民族には適用されないのだろうか。[リー、p308]
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 原著は1935年に出ているので数字が古いのですが、現代のヨーロッパは約6億の人々が55の国に別れて暮らしています。現在は各国はロシアのウクライナ侵攻と移民問題で悩まされていますが、これらの問題を除けば、互いに平和に幸福に暮らしています。

 これに比べれば、中国は14億もの人間が一つの国に暮らしていて、その中ではチベットやウイグル、モンゴルのように、全く別の民族なのに独立を奪われています。また台湾は立派な独立国なのに、武力併合の威圧を受けています。

 



 実はヨーロッパにも、かつて同じような妄想がありました。オーストリアはドイツ語を唯一の公用語とする900万人の小国ですが、第2次大戦直前にナチス・ドイツに併合されました。大戦後、ナチスが滅びると、独立を回復しました。「同じ民族だから力を使っても併合する」というのは、ナチスと同じ考えなのです。

 ヨーロッパと中国の極端な違いは、人々が幸せに暮らせるために国家はどうあるべきか、という課題に、重要な示唆を与えています。


■2.台湾を認めない姿勢は、満洲国を認めない姿勢と同じ

 この本はアメリカ人G・B・リーによる『満州国建国の正当性を弁護する』です。訳者・田中秀男氏は前書きでこう書いています。
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民主的香港、台湾を絶対認めない姿勢は、民主国家満洲国を認めなかった戦前の中国と同じ構図である。
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 著者ジョージ・ブロンソン・リーは1869年、日本で言えば明治2年にニューヨークで生まれました。『ニューヨーク・ヘラルド』紙の記者となり、1896年の米西(アメリカ対スペイン)戦争も取材しました。その後、フィリピンから上海に渡り『ファーイースタン・レビュー』誌を経営しました。

 1902年の清朝末期から内戦状態になった中国大陸を観察し、満洲事変が起こった際には同誌で日本を敢然と弁護し、そのため社屋は過激なデモに晒(さら)されました。そして満州国が建国されると、その顧問となります。彼は戦乱の続く中国大陸での満洲建国の意義を語り、反日の急先鋒たるアメリカの世論に訴えたのです。それがこの著書の内容となっています。

 彼の議論で特に面白いのは、満洲建国はアメリカの建国や、メキシコからのテキサス併合などと比べても、歴史的・国際法的にはるかに正当性を持っていると主張している点です。これは今日、中国が満洲国を「偽満州国」と呼んだり、「満洲」の地名そのものを消し去って「東北」と呼んだりしている歴史観の偽りを容赦なく論破する威力を持っています。

 我々はその論法から、国家とは何か、どうあるべきか、という洞察を得ることができます。リーの洞察力の深さは、その予言の正確性によって実証されています。1935年に出版されているにもかかわらず、この本では第2次大戦後の世界を次のように見事に予言しています。

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 たとえ(伊勢注: アメリカが日本に)勝ったとしても、我々(同:アメリカ人)は得たいと願っているものよりも失うものが多いだろう。我々が日本を完全に征服した後、我々は共産主義者に全アジアをがっしりと支配させることになるだろう。[リー、p322]
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中国がより強くなり、一人の軍事独裁者の下でますます影響力を持 つことになったとき、あらゆる外国を心中では属国と見なす外交形式に戻らないという保証はどこにもない。[リー、p53]
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 これらの予言の驚くべき正確性からも、リーの深い洞察力が窺われます。


■3.中華人民共和国は満洲の主権を継承しているのか?

 中国が満洲国を絶対に認めない理由は、以下の4つでしょう。これは現在の日本の歴史教科書でも踏襲されています。

(1)満洲は清国の領土であり、従ってその主権は現在の中華人民共和国に継承されている。

(2)満洲の人民はほとんどが漢民族だった。

(3)日本は柳条湖事件という謀略によって、満洲事変を引き起こし、満洲を独立させた。

(4)満州国は日本の傀儡国家だった。

 リーは、これらの主張を一つずつ論破していきます。

 まず、(1)の「満洲は清国の領土であり、従ってその主権は現在の中華人民共和国に継承されている」について見てみましょう。

 基本的な事実として、中華人民共和国と中華民国の前の王朝である清国は、満洲を故地とする満洲族が建てたものだということです。そして、漢民族は満洲王朝という異民族によって支配されていたに過ぎません。漢民族の住んでいた中国本土は満洲とは万里の長城で分断されていました。漢民族は長城を作ることによって、満洲族その他の北方異民族の侵入を防いでいたのです。

 しかし、満洲族は万里の長城を超えて、1644年に北京を占領して、清国を建てました。そこで漢民族は清国に支配されていたに過ぎず、清国の領土を継承する権限などは持ちません。これについては、以下の比喩が最も分かりやすいものです。
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(中国人は)満州は中国の絶対不可分な固有領土だ、とも主張する。だがこれは、インドがイギリスから独立した後、イギリスはインドの絶対不可分な固有領土である、とインド人が主張することと同じであろう。
 さらに、モンゴルもチベットも中国の固有領土だと主張することは、あたかもイギリスから独立した南アフリカも、オーストラリアも、インドの絶対不可分な固有領土であると主張しているのとなんら変わらない。[黄、p28]
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■4.移民難民を送り込んだからと言って、領土主権は奪えない

 (2)の「満洲の人民はほとんどが漢民族だった」については、確かに国際連盟が満洲の実情調査を行ったリットン報告書でも、人口の98%が流入した中国人であると述べています。

 そもそも中国人が多かったのは、戦乱と飢饉に覆われた中国本土から、日本の投資で繁栄と高度成長を続ける満州国へと毎年百万人も超える難民が満洲になだれ込んだからです。そういう難民が多数派となれば、難民を送り出した国は主権をとれるのでしょうか?

 移民人口がいくら多くとも、それで国家の領土主権が移ることはありません。これは民間の土地建物の所有権の例で考えれば、常識で分かります。たとえば日本人夫婦2人が所有・経営している学生寮に、98人の中国人留学生が賃貸で住み着いたからと言って、寮の所有権が中国人に移るわけではありません。

 この問題をリーはハワイの例で、次のように語っています。当時のハワイの人口は36万1千人で、そのうち武力で主権を握っていたアメリカ人は2万2千人に過ぎませんでした。最大の多数派は日本からの移民とその子孫で、14万7千人いました。住民の多数派を送り込んだ国が主権をとれるなら、ハワイは日本のものになる、というおかしな事になってしまいます。[リー、p151]

 この問題は現代の外国人問題にも通じています。正式に国籍をとった移民なら別ですが、国籍を持たない難民移民が、たまたま移り住んだ国や地域の主権者にはなりえません。現代中国は世界各国に移民を送り込むことによって、支配力を強める「洗国」と呼ばれる戦術をとっているので[JOG(974)]、この認識は重要です。


■5.アメリカはテキサスを併合、日本は満洲を独立させた

 (3)の「日本は柳条湖事件という謀略によって、満洲事変を引き起こし、満洲を独立させた」については、リーはテキサスで米国が同じ謀略を行った史実を挙げています。

 テキサスはメキシコの領土でしたが、アメリカ人の入植者が増加し、彼らが1835年に反乱を起こして、翌年、テキサス共和国として独立を宣言したのです。1845年には米政府がテキサス共和国を併合したため、メキシコが宣戦布告して米墨戦争となりました。この戦争でメキシコは領土の半分を失い、アメリカは現在のカリフォルニア州、アリゾナ州、ニューメキシコ州などを獲得しました。

 ただし、リーはテキサスと満洲国で重大な違いを指摘してます。
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満洲では、アメリカがテキサスで演じた役割を日本が演じたのだ。しかし日本は満洲を併合しなかった。[リー、p188]
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 テキサスでは米人入植者が反乱を起こし、結果的にその土地を併合してしまったという、典型的な帝国主義的侵略でしたが、満洲の場合は本来の主権者である満洲族が独立した国家を作ったということです。


■6.「満州国は日本の傀儡国家だった」?

 そうは言っても、その満州国が日本の傀儡国家だったら同じようなものだと思うでしょう。ここで(4)の「満州国は日本の傀儡国家だった」という問題が出てきます。これについて、リーはこう断言します。

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 満洲国の独立は日本人の奨励と支援がなかったら決して起こらなかったと言われている。確かにそうだが、それがどうした? アメリカの植民者はフランスの助力なしで独立を達成できたのか。[リー、p187]
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 確かに、アメリカの独立の際には、当時、英国と対立していたフランスの助力がありました。ニューヨーク港内の自由の女神像は、アメリカ合衆国の独立100周年を記念して、独立運動を支援したフランス人の募金によって完成したものです。しかし、この例は日本人にはなじみが薄いので、身近な例で述べましょう。

 中華人民共和国を建国した中国共産党は、1921年にソ連の主導するコミンテルン(国際共産主義組織)の指導のもとで結成されました。1931年には毛沢東らは「中華ソビエト共和国臨時政府」を結成しています。当然、コミンテルンからの資金援助を受けていました。

 中国共産党は1934年には蒋介石の掃共(共産党勢力の掃討)戦で滅亡一歩手前まで追い詰められますが、西安事件で蒋介石を監禁したことから、共産党と国民党での合作(協力)の道が開け、息を吹き返します。
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 毛沢東自身の意見は「殺蒋抗日(伊勢注: 蒋介石を殺害して、日本と抗戦する)」であった。本家のモスクワの指示を仰いだところ、スターリンからは「連蒋抗日(伊勢注: 蒋介石と連携して日本と抗戦)」と蒋介石の釈放を命ずる指示が届いた。スターリンの電報に接した毛は「真赤になり、悪態をつき、足を踏みならして怒った」と伝へられる・・・[中村、p376]
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 こういう基本戦略まで、ソ連の言うことを聞かなければならない、ということは、ソ連の支援なくしては、中国共産党も立ちゆかないことが双方に明白だったからでしょう。こうした中国共産党によって建国した中華人民共和国こそ、正真正銘の傀儡国でした。


■7.平気で道理に外れた主張をする独裁国家

 以上のように、満洲国を否定する中国の主張には全く道理がありません。同様に、台湾独立をムキになって非難する主張も、道理を外れたものです。何の科学的根拠も示さずに、福島での処理水放出を危険だとして、日本水産物輸入を禁止した政策も道理がありませんし、南シナ海のほとんどを自国領海とする「九段線」も同様です。

 民主国家では、一つの主張をするにしても、主権者である国民の多くを納得させる道理が必要です。また、国家間の交渉にしても、表向きは道理の通った主張をしなければ聞いてくれません。多くの人々や国々が納得しうる道理に基づいた政治や外交をすることが、民主政治と国際協調の基盤なのです。

 しかし、中国のような巨大な独裁国家にはそのような道理は必要ありません。独裁者の欲望と思いつきによって、どんな荒唐無稽な主張も国内外で力で通そうとするのです。そのような道理の通じない巨大な独裁国家を、我が国は隣国としているのです。
                                        (文責 伊勢雅臣)

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■リンク■

・JOG(1350) 岸信介が遺した重工業国家・満洲の記憶
 わずか13年で重工業国家を築いた偉業の記憶は、いずれ日本の大切な財産となる。
http://jog-memo.seesaa.net/article/501853137.html

・JOG(1236) 満洲事変の後、日本は世界から孤立したのか?
「たかが」勧告程度で、日本が国際連盟を脱退するなど、各国には思いもよらなかった。
http://jog-memo.seesaa.net/article/202110article_1.html

・JOG(1027) 満洲国 ~ 五族協和の夢
 満洲国建国はシナの領土への侵略だったのか?
http://jog-memo.seesaa.net/article/201709article_6.html

・JOG(974) 移民問題、二つの進路 (上)「洗国」への道
 「洗国」とは他国に数十万人規模の流民を移住させて、やがてその国を乗っ取るという、シナ大陸で多用される手法である。
http://jog-memo.seesaa.net/article/201610article_6.html


■参考■(お勧め度、★★★★:必読~★:専門家向け)
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・黄文雄『満州国は日本の植民地ではなかった』★★★、ワックBUNKO、H17
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・中村粲『大東亜戦争への道』★★、展転社、H02
 http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4886560628/japanontheg01-22/

・リー、ジョージ・ブロンソン『満洲国建国の正当性を弁護する』★★、H28
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■伊勢雅臣より

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