かつて「改めて法律を調べてみたら、首相である自分が自衛隊の最高指揮官であることを知った」と述べた総理大臣がいた。この二の舞いは御免被(ごめんこうむ)りたい。

 

最近の自衛隊は「平和と独立」を守る主任務以外でも、働き詰めの印象がある。8月下旬は「邦人等の輸送」でアフガニスタンに飛んだ。東京五輪・パラリンピックでは約8500人の自衛官が駆り出された。8月中旬の大雨では長崎県および佐賀県で、そして7月には静岡県熱海市の大規模土石流災害で捜索、救助にあたった。

新型コロナのワクチン接種では5月24日から東京と大阪で大規模接種にあたっている。余談だが民間の医者は、1回接種で約7000円の手当が出るらしい。自衛隊医官の場合、何回接種しようと日額3000円という。

 

現在9割を超える国民が自衛隊の存在を支持している。好感度を押し上げたのは、東日本大震災での活躍が大きい。だが文句を言わぬ自衛隊に甘えてか、最近では鳥インフルエンザや豚熱の殺処分、ガレキの撤去からゴミ処理までまるで「便利屋」扱いが気になる。

「平和と独立」を守る自衛隊を災害派遣に投入するには、「公共性、緊急性、非代替性」の原則がある。原則から外れた便利屋扱いは、自衛隊の訓練機会を奪い、練度を下げ、結果的に自衛隊の精強性を奪う。それは抑止力低下というブーメランとなることを国民には知ってもらいたい。