刑法には「死者への名誉毀損(きそん)」などという罪もあって、子孫が祖先のことをめぐって裁判で争う風景もよくある。過去へのこだわりがそれほど強いというわけだが、それも多くは現実がからんでいて、結果的には過去(歴史)を利用し現実的な利を得ようという話である。したがって「歴史まみれ」の実態は「歴史利用」といっていい。

 

文在寅(ムン・ジェイン)政権は左翼的民族主義史観が幅を利かし、勝手な「歴史いじり」が目立つ。

その典型は日本からの解放について文大統領が「光復(解放)は決して外から与えられたものではない」と公言したことだ(2018年8月15日の光復節記念式典演説)。解放の歴史的事実は、日本が米ソなど連合国に敗戦した結果、もたらされたもので決して自力ではなかったにもかかわらず、演説はその事実を無視し「先烈たちが戦い勝ち取った結果だ」と断定した。

自力解放は事実ではないのだが、「そうありたかった」という「願望」に従って歴史を都合のいいようにいじっているのだ。

 

最近、文大統領の最有力後継者である李在明(イ・ジェミョン)京畿道(キョンギド)知事も「歴史いじり」をやっている。解放後の韓国について「親日勢力が米占領軍と合作しその支配体制をそのまま維持した」と発言し問題になっている。

 

親米・反共で北朝鮮の侵略と戦った初代の李承晩(スンマン)政権(1948~60年)を否定し、保守主導による韓国の発展を認めたくないため、米軍を「解放軍」ではなく「占領軍」という否定的イメージで語るとともに「李政権は親日政権」と印象付けようとしている。

反日で知られた李承晩政権を「親日勢力」とは歴史歪曲(わいきょく)もいいところだ。