他方、日露戦争に直接関わっていないアジア、東南アジアの国々の教科書を見ると、インドネシア、ベトナム、フィリピンではいずれも、日本がロシアに勝利したことが、民族独立戦争に槃がったことを明記している。アジアばかりではなく、中東や東欧の教科書にも日露戦争について記されており、ポーランドの教科書ではなんと明治天皇の御真影や、五箇条の御誓文、教育勅語まで掲載されているという。

 このように、日露戦争はその終焉から百年の星霜を経て今なお、広範な国々の教科書に大きく取り上げられている。このこと自体が、日露戦争が世界史にいかに大きな影響を及ぼしたかの証左であるし、世界の教科書に発射された日露戦争の記述を目の当たりにすると、国の存亡をかけて勝利の栄冠を勝ち取った日本が、ただ独り、自国の教科書においてその世界史的意義を制止しない現場に強い疑問を感じる。

 

”書評 『教科書から見た日露戦争』”、『祖国と青年』H2108