当時の首相である菅直人
立憲民主党最高顧問が、出番だと
ばかりに発信を強めてい
る。その軽佻なはしゃぎぶ
りは、何の責任も反省も感
じていないことをあらわに
している。

 

「菅氏は原発事故時、原
子力災害対策法に定めら
れ、対応に必要な原子力緊
急事態宣言を出すのを遅ら
せておいてよく言う」
自民党重鎮がこう指摘す

るように、菅氏は宣言発出
を「技術的事項」(政府事
故調査委員会報告書)の細
かい説明を求めて後回しに
し、避難指示などの実施が
遅滞する原因をつくった。
この点は国会事故調査委員
会の報告書も明確にしてい
る。
「すぐに回答することが
困難な事故発生原因を繰り
返し尋ねたり、与野党党首
会談の出席を優先させた」

 

首都圏で混乱を招いた東
電の計画停電に関しても、
当初は東電社長が発表する
予定だったが、菅氏が「私
が発表したい」と言い出し
たために調整に手間取り、
周知は2時間も遅れて通勤
・帰宅難民を増やした。
 首相官邸から福島第1原
発への現場介入について
も、4つの事故調はそれぞ
れ次のように批判してい
る。
「無用な混乱と事故がさ
らに発展するリスクを高め
た可能性も否定できない。

湯当たり的で泥縄的な危機
管理」(民間)
「現場対応の重要な時間
を無駄にしただけでなく、
指揮命令系統の混乱を拡大
させた」(国会)
「現場を混乱させ、重要
判断の機会を失し、判断を
誤る結果を生むことにつな
がりかねず、弊害の方が大
きい」(政府)
「官邸の政府首脳から、
現場実態からかけ離れた具
体的な要求が直接、間接に
なされた。緊急事態対応の
中で無用の混乱を助長させ
た」(東電)
 原発事故で政府の現地対
策本部長を務めた池田元久
経済産業副大臣(当時)の
覚書も、菅氏が現地視察に
訪れ、一般作業員の前で怒
鳴り散らす姿をこう記して
いる。

「指導者の資質を考えざ
るを得なかった」

 

 震災の年の5月初め、

全村避難を強いられること

になった福鳥県飯舘村を

取材した際、菅野典雄村長

(当時)は語っていた。
 「菅首相が『(避難区域

設定はやりすぎるぐらい

やってちょうどいい』と

言っていたと何人もから

聞いた。それでどういうことが
起きるかも考えてほしい」

 村の幹部も「結局は
政権の保身だ。命は大切だ

という美辞麗句の下で、政府

は村民に何十倍、何百倍の

リスクを負わせている」と

述べている。

 

「10年前菅元首相の危機管理」阿比留類、『産経新聞』R030311