日本に儒教が輸入されると、本場の儒教とは全く違ったものに生まれ変わってしまいます。本場の中国の儒教の最も大切にされている価値は何かといいますと、親孝行の「孝」です。それが日本に入ってくると、忠義の「忠」が上に乗り、「忠孝」になります。「忠」は元の儒教には存在していない価値です。儒教にとっては、「孝」が何よりも大切であって、「礼」や「仁」といった基本的な事柄がありますが、この中に「忠」は入っていません。

 日本がどうして、十九世紀末に西洋の帝国主義の圧迫を跳ね返して、近代化に成功し、白人の国々の中で、一流国として躍り出ることができたのか。私は、「孝」をfamilyと 訳し、「忠」をPublicと訳することにしています。日本は、他のアジアの諸国と違って、family(一族)の上に、public(公)を置くことが常であったからだと説いています。

 

 昭和天皇が昭和四十六年、ヨーロッパを歴訪されたことがありました。その時に、イギリスをお訪ねになり、ロンドンのビクトリア駅にご到着になると、エリザベス女王が駅頭で出迎えられました。昭和天皇とエリザベス女Eが握手を交わされます。私は、その映像を見ましたが、エリザベス女王の笑い方は、「私は貴方のために笑っており、他の人たちのために笑っているのではない」とでもいうような、まるで狙い撃ちをするような笑い方でした。それに対して、昭和天皇の微笑み方は、私は全世界に対して笑っている、というような一視同仁のお笑い方であったのが印象深く残っています。

 

日本以外の世界の王室は、一般の国民の中から起こり、権力闘争を戦い、覇権を握ることによって王座に付いた一家です。ですから、敵と味方に分けてものごとを見る習性があります。

 

「皇室と日本文化」加瀬英明、『祖国と青年』H20.04

日本青年協議会 http://www.seikyou.org/sokokutoseinen.html
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