• 西郷は、三島に「敬天愛人は凡人の道でごわす」と語りかける。ここで、三島という「天才」は、畏るべき「凡人」を見出したのである。『天才」の華麗な言動よりも「凡人の道」の方が畏敬すべきものであるという逆説が三島には「わかりかけてきた」のである。ここに三島が、真の「天才」であったことの最終的な証しがある。
  • 三島由紀夫「銅像との対話」:私には、あなたの心の美しさの性質が分からなかったのです。それは私が、人間という観念にばかりとらわれて、日本人という具体的問題に取り組んでいなかったためだと思われます。
  • あなたは涙を知っており、力を知っており、力の空しさを知っていました。それから、責任とは何か、人の信にこたえるとは何か、ということを知っていました。知っていて、行いました。
  • 三島君。おいどんはそんな偉物ではごわせん。人並みの人間でごわず。敬天愛人は凡人の道でごわず。あんたにもそれがわかりかけてきたのではごわせんか?
  • 「西郷隆盛の『凡人の道』に惹かれた天才」新保祐司、『正論』