Back to the 80's 祭りの後にさすらいの日々を | クラバート・ガレージ

Back to the 80's 祭りの後にさすらいの日々を


83、84年をバンダイ、ポピーのラインナップとともに振り返るこのシリーズですが、避けては通れないのが






84年版「ゴジラ」の公開でしょうね。






84年版ゴジラ






公開数年前から盛り上がったムーブメントにおける大トリ。祭りでいう「神輿」






我が最も愛すべきゴジラですが、83、84年と精力的に商品を展開してきたとは思えないほどに、その商品展開はアッサリとしたものでした。




プラモデルシリーズthe特撮collectionにも予定だけはあったようですが、実現しておりません。




結局のところ、発売されたのは、600円サイズソフビ一点のみ。


更に、通しナンバーはウルトラ怪獣シリーズに組み込まれているというヤル気の無さ(笑)




グレートモンスターシリーズはなんだったんだ?




原型製作は、速水氏です。




ハイカラスター金曜クラブ


写真提供:キャットタワー1510様




このソフビを語る上で避けては通れないのが、「モデル」はなにか?という点。


スーツ版ではないことは一目瞭然です。


となると、サイボットか雛型ということになります。キャットタワーさんは、サイボット説を推しておられ、僕は雛型説を推してました。というよりかは、キャットタワーさんに御指摘いただくまでは(原型の製作時期的なものから)漠然と雛型だと思ってました。




ハイカラスター金曜クラブ


ただ、今回、見直してみておもったのが、「確かにサイボットに似てるなぁ…」という点。


それは、この体型と、重心の位置。


この雛型って比較的オーソドックスな「ゴジラ」してると思いません?




その点、ソフビ84は、非常に人間的な体型。特にウエストの締まり具合、腕の筋肉の表現にそれが顕著に表れているといえるでしょう。






ハイカラスター金曜クラブ




ハイカラスター金曜クラブ


このタグの写真、腕なんかクリソツ。写真提供:キャットタワー1510様




ハイカラスター金曜クラブ


写真提供:キャットタワー1510様




で、このバランス。雛型が気持ち前傾姿勢であるのに対し、「完全に腰が据わっている」。サイボットは機械じかけの上半身がメインです。その超重量を支える下半身は、必然的に安定した体勢となります。腕、ウエストよりも、この腰の“タメ”こそが今回のサイボット参考疑惑の最大の理由です。




ただ、




サイボットのスタジオ搬入は84年7月20日。果たして資料が間に合ったのか?という点も疑問として残ります。また、先述した腰の件に関しても、玩具化の際に最適なバランスに補正した可能性も考慮に入れるべきでしょう。




少し整理します。




仮説1:雛型のみ参考(この場合、腰部バランスは、玩具化にあたってアレンジ)


仮説2:基本、雛型を参考。途中、サイボットの写真等を入手、参考


仮説3:サイボットのみを参考




このようなところでしょうか。各部の造型的特色から、スーツ版(並びにスーツの粘土原型)は完全に無視されていると考えても良いと思います。スーツの完成は様々な試行錯誤を経ての7月18日。先述したように、サイボットは7月20日に「搬入」。早くに全体の形ができあがっていたのはサイボットでしょう。ただ、サイボットの場合、皮の粘土原型の時点では腰のくびれも、人間体型もあまり際立っていない為、参考にしたとするなら、メカニカルに表皮を被せてからになるかと思います(しかしながら、5月1日の内部メカの製作開始からどれくらいの期間で皮を装着したのかは不明です)。


雛型ベースといえば、ボークスのJrシリーズNo.1、84ゴジ。しかし、映画製作にも関与していたであろうバンダイと、原型師が自分で資料を集めて製作するガレージキットでは、そもそもの立ち位置が違ってきます。




ビデオ「特撮とジオラマ ハイテクニック編」での一品モノ84ゴジのスクラッチ過程、同84ゴジのMG誌への掲載などを見た限り、速水氏の原型の製作は結構ハイペース、速いです。


従って、サイボットの完成後に原型にかかっても、公開までの半年の間には充分間に合った気もします(ソフビの量産期間にどのくらいの時間が必要なのかは不明ですが)。この考えが、仮説3の理由だったり。




まぁ、このような考察をしたところで、原型の受注時期が不明瞭であるために、これらは結局のところ想像の範囲内にしかとどまりません。長々と書いている割には、「決定打だ!」てな話でもなくスミマセン。





以前コメント欄で書いたことではありますが、雛型に本来似ているのは「サイボット」※1です。




よって




もう完全に妄想、勘の粋ですが…。




あくまで僕の考えとしては、






雛型をもとに造型。途中、サイボットの写真等で各部の修正が入った。










といったところでしょうか。サイボットと雛型は似ているため、大幅に変更はしなかったのかも。




全然考えがまとまってねぇ(笑)










もう、無理やり次に行きます!








このソフビの造型的魅力について。




「腰のタメがすばらしい」




この一言に尽きます。




95年以降のバンダイソフビの特徴である「入」字型とくらべ、この安定感の良さ!※2







ハイカラスター金曜クラブ


左は、2000年代に入ってから発売された84。


95年デスゴジ頃から、バンダイのゴジラの造型はことごとく「入」字ラインを描くようになってしまった。個人的にはあまり好みではない。


初代ゴジラのソフビは楽しみであったが、やはりこの「入」字であり、また、全体の造型も非常に無難でのっぺりとした面白みのないものであった。









しかし、なんで最近のソフビ、ことごとく「入」字バランス、かつのっぺりモールドになったんでしょうね。怪獣は、あまり整理され過ぎるとよくない気がしますが…。これは2000以降の本編スーツにもいえるな。






また話がズレてきた。






とにかく、1点のみの発売ではありましたが、造型的には素晴らしいものであったと思います。細かいことはともかく、「トータルイメージとしての84」、並びに「玩具としての84」として機能しつつ、怪獣という異形さを失っていない。なにより、カッコいい。














しかしこのソフビの発売、つまり84「ゴジラ」の公開を境に、ムーブメントは急激に収束してゆくこととなります。


まるで、83年のビッグバンが、爆縮するかのように。






眼に見えぬが故に憧憬であったもの。それが形として提示された時、それはもはや憧憬の対象ではなくなったのかもしれません。


あるいは「映画」、「映画化」という時点を持って、一つの区切りとして納めてしまったのかもしれません。


もしくは、単に一過性の共同幻想だったのかもしれません。




しかし、その正体がなんであれ、このビッグバンがあったからこそ、ガレージキットは“根付いた”し、量産品のクオリティは奇跡のように跳ね上がった。


そして、なにより多くの人々の心に「あの時代」として記憶されることとなった。僕はそう信じてやみません。






最終更新:2010.8.25 5:00












※1 スーツ版は頭部の内蔵骨格が「L字」しているために、あの狼顔になったように思います。


粘土原型の時点では比較的雛型やサイボットに近いです。完成形は、明らかにアーストロン等の流れを組んだ“安丸顔”になっているため、「L字」は安丸氏が意識的に行ったことかもしれませんが…。





※2 ちなみに、個人的にはバンダイソフビの最高傑作は91年ギドゴジです。ハードディティールかつ重心の良さ、大量生産商品として一つの究極だと考えてます。ついでに言うと、その後継者、正当な進化系というべき存在は、CCPのデスゴジ(モゲゴジ)だと思っているんですが、項の内容と離れすぎますので、いずれ改めて書きたいと思います。