20年目の邂逅 その5 | クラバート・ガレージ

20年目の邂逅 その5

1999年。20歳を過ぎ、いつしか自分も成人していた。

恐怖の大王はやってこなかったが、ZOIDSが還ってきた。



そう、アニメ版の放送に伴う再販である。アニメ化、再販の情報を模型誌で知った僕は狂喜乱舞した。バトルストーリーのテイストでアニメ化されるものだと考えていたのがその要因であった。結局のところアニメはドラゴンクエストのようなファンタジックな世界観に設定され、渋い大人たちであるはずの主人公たちは、かわいらしい絵柄の少年少女たちに代わっていた。


再版されたZOIDS達のカラーリングも、かつての「大人のホビー」的な配色から、少々玩具じみたものに変更されており※1、僕は随分落胆した。このあたりの経緯は、まだまだ書きたいことが多くあるが、この項の趣旨とは趣を異にするので割愛する。別項でいずれ語ってみたい。



とにかく、ZOIDSは復活したのだ。再販に伴う価格の上昇等もなく、むしろ気楽に買える値段になった。

これで、大いにZOIDSを改造できる。気に入らない配色は、現在の自分のスキルで塗りなおせばよい。



だいたいの年季の入ったファンは同じことを考えるもので、当時黎明期であったインターネットにも、改造ZOIDSが続々とアップされ始めてきていた。


僕がネットを導入したのも、パオパオワンダーランドのゴジラ掲示板等のGK情報、ヤフオクの利用、そして全国の同志たちの改造ZOIDSを閲覧したかったからだ。


メインの趣味は怪獣ガレージキットの収集に移行していたが、同時に、かなりの年月に渡ってZOIDSのHPのチェックも欠かさなかった。怪獣ガレージキットの世界は狭い。多くの「送り手側」の方々と知り合い、のめり込んでいった。しかしZOIDSは広い。広すぎて、手に負えなかったこともある。正直、莫大な量のHPがあったのだ。勿論、その莫大な数のHPの中には、自分のセンスに合う人も多少なりとも存在した。しかし、そのHPに向けて自分から発信しようとは思えなかった。メインとして怪獣GKに趣味が移行しすぎていたこともあるが、ZOIDSは、90年代半ばの生産終了時期がうそのように、あまりに手軽に手に入るため、「まぁそのうち」「いつでも」と思ってしまっていたのだ。




この時期から現代まで、莫大な数の改造ZOIDSを目にしてきたが、その改造パターンは、概ね、以下のように分別することが出来るであろう。



①既存のキットのディティールアップ

 既存のキットをほぼそのまま使用し、ディティールアップを行うタイプ。塗装の変更のみ、というのもこのタイプに入る。



②既存のキットを軸に、大幅に形状変更

 この場合に多く見られたのが、自分設定的なディティールを大幅に追加したもの。面白い事に、キットのプロポーションの改造のみに絞ったものはほとんど見られなかった様に思う(考えられる要因として、もともとが『玩具』に位置する商品であるが為に、模型として再構築する際には過剰なディティール、形状変更を入れてしまう)。



③キット化されていないモティーフを製作するタイプ

 見ていて一番面白かったのがこのタイプであった。かつてZOIDSに熱中した時代がある人間には、商品化されていない生物の再現という点に拘る気持ちは非常に解る。しかし、当然、既存の商品と並べて遜色のないほどの

デザインを造り上げるにはそれなりのスキルと、なによりセンスを必要とする。



④バトルストーリー登場機体の再現

これもほとんど見られなかった。特徴的な改造をされた機体が小型機ではフロストイグアン※2程度、ケンタウロスはコストがかかりすぎるし、デスドッグをはじめとした改造デスザウラーはかなりのスキルを要する為か。




僕自身、手始めにフロストイグアン等を作った記憶がある。既存のキットを軸にフル可動化とプロポーションの調整を行った。この場合②と④の混合にあたる。羽から胸にかけてのパーツ解析出来無かった点、並びにそれに代わるパーツの作成を行えるスキル、なにより情熱が足らなかったため、結局完成はしていないが…。

あえてここに写真を晒したいと思う。



ハイカラスター金曜クラブ




そして、①と④の混合にあたるデスザウラー トビー・ダンカン機の製作も始めていた。




この項を書くにあたり、物置に眠っていた作成と中のパーツを引っ張り出してきたのでこれも晒すこととする。



トビー使用のデスザウラーを製作するにあたり考えていたのは以下のような点であった。



1.ギミックは残す。(作例写真を見る限り、電動モーターと駆動ギミックを残したままでも似たようなものを造れると考えていた。)



2.頭部周辺や手甲等のディティールアップ、並びにパーツ解析は出来る限り行う。(例えばフロストイグアンは右手の特徴的なガン部分には1/144マラサイの部品を流用している。このように、当時のバトルストーリー作例には、他のジャンルのプラモデルからも多くの流用部品が使われている。その解析、再現は徹底したかった。)また、アイアンコングの手甲も用いられている。写真解析を行う中で、あのファーストカットを再現するためには商品状態から相当の手を入れなければならない事に気付いた。



3.マニューバスラスターユニットの再現。この部分をアイアンコングMK‐Ⅱのものと勘違いしている人は意外と多い。僕もそうであった。再販時以降の解析の際に、幸運にも旧大型ゾイド改造セットに付属していた高機動ブースターを改造したものであると気付き、それを所持していたことが製作の決め手となった。



結局、写真をご覧になると解るように頭部部分のディティールアップの途中でとん挫しているのだが…。もし完成していたらある程度はあの作例に近づいたものが完成していたかもしれない。事実、僕より先に同じような作例の再現を施したトビー・ダンカン使用機の画像もネットでチラホラ見掛けるようになった。それらも概ね上記1~3をなぞって作られていたと思う。そして、1を無視した瞬間、頭部ラインが劇的に変化することに、この時点では気付かされていなかった(それに気付かされたのが、このレビューを行った真の目的である、ある作品によってなのだが)。




ハイカラスター金曜クラブ ハイカラスター金曜クラブ



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とりあえず、最終目標は作例のディティール再現だったのだ。



しかし、2010年、僕は自分の認識の甘さを痛感するとんでもないものに遭遇することになる。






※1とはいえ、かつてのゴジュラスMK-Ⅱ限定型、アイアンコングMK-Ⅱ限定型を実質的にほぼ同じ色合いで復刻してくれたり、と旧ファンへのサービス的な面も多々あった。

※2バトルストーリー 2 「国境の橋争奪戦」にて帝国軍空てい部隊隊長フロスト中佐は、共和国軍ゾイドプテラスの羽を偽装として取り付け、全身を真紅に染め上げたイグアンに搭乗、共和国軍国境警備隊に奇襲をかけた。その際の改造イグアンはファンの間でフロストイグアンと呼ばれている。