20年目の邂逅 その1 | クラバート・ガレージ

20年目の邂逅 その1


ハイカラスター金曜クラブ



今、手元に1冊の本がある。

22年間にわたり、ボロボロになるまで読み倒され、ホッチキスとセロテープの補修痕さえ痛々しいそれは、



小学館スペシャル11 ゾイドバトルストーリー2

 

昭和62年11月1日発行



である。


当時、ZOIDS という玩具があった。動物や絶滅生物をモチーフとした所謂「メカモノ」である。今もあるけど、その趣は大きく違う(理由は後述する)


接着剤いらずのスナップフィットキットでありながら、高いデザイン性とユニークなギミックが売りであった。


所謂「小型」は、600円程度で入手でき、ゼンマイを駆動源とした10cm足らずのものであったが、歩行だけでなく、元となった生物の特徴的な動作を再現したものまであった。

大型のそれは電動歩行であり、値段も2000円~5000円程度と大幅にアップする。


僕の家はそれほど裕福でもなかったので、この「大型」を年に2、3回程度買ってもらうのを常としていた。

年に2、3回というのは大抵、春先(子供の日)、夏(誕生日)、冬(クリスマス)であった。今思うと、メーカーのクリスマス商戦等に完全に符合していたんだなぁと、少々笑える。


小学生時代というのは、自分の一生の中でも公私ともに非常に印象深い出来事が多く、今でも地元に帰って遊ぶのは小学校時代の友人たちだ。良い学校生活を送れたものだと、友達や担任の先生に感謝したくなる。


そして、僕たちの世代を風靡した玩具が、このZOIDSだった。


ZOIDSが他の多くのロボットモノ、メカモノ玩具(含プラモデル)と大きく違うのは、そのアプローチ方法であった。


他の多くはテレビのアニメをモチーフとし、その関連商品としての位置づけであり、それはつまるところ作品世界から派生した立体物であることを意味する。バンダイ等を筆頭に現代も推し進められているマーチャンダイジングというやつだ。


しかし、ZOIDSは、所謂「原作」を持たなかった。先ず、立体物としての商品自体が存在し、その立体物に沿ったストーリーが構築されていったのである。ここで、工業生産品的なZOIDSの外観、設定が生きてくる。「商品の状態」がいわば完成形なのである。

ZOIDSのパッケージには、大まかなストーリーが添えられていることが多く、そこから自分で想像の輪を広げて遊ぶことが出来るようになっていた。

そして、もう一つの特筆すべき点、原作を持たない代わりに、「バトルストーリー」と称した「ジオラマ」写真を各学年誌、コロコロコミック等で連載したのである。テレビアニメというメディア媒体を持たぬZOIDSには、いわばこれが「正史」となった。


このバトルストーリーであるが、全編手作りのジオラマ仕立てであり、小学生でも、「頑張ればまねできるかもしれない」「このシーンの再現を」「このシーンから派生した自分なりのジオラマを」と、これまた想像力並びに、自分のスキルを駆使できるようになっていたのである。再初期は「知育玩具」として出発したZOIDSであるが、この時期においても、このような点で当時の子供たちの「想像力」「自分で手を動かす」という点に貢献していたのである。


そして、商品の時点で工業完成品であるZOIDSであるがゆえに自分で手を加えたものは「改造ZOIDS」として、自分の物語世界に組み込むことが出来る。


僕らの世代はZOIDSを通じて、いわばロールプレイを、知らず知らずのうちに学習していた。




この項、長くなります(笑)