東洋太平洋Sフライ級王座決定戦 | ボクシング・メタボリック

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ボクシングに魅せられて41年。阪神タイガースファン歴40年世界戦初生観戦は1983年西は熊本・福岡・沖縄とおそらく300試合は越えている。海外デラ・ホーヤとトリニダード戦を観に行っただけ。ニューヨークの殿堂はたった2回。現地速報や新聞情報貼り感想書いてます。


試合前の注意



インターバルで指示を聞く拓真


ラウンドガール

兄尚弥もリング上に熱い視線を送る

兄に続き5戦目で東洋チャンピオンに

試合後のインタビュー、世界への課題も見えた。

昨日も書きましたが、兄とおんなじ感想ですね。インパクトが足りない。同じ展開で山場が無い。流石です。次インパクトのある試合をお願いしますよ。拓真選手。







インパクトが足らない。こんなんじゃ俺に並ぶのはまだまだ」


プロボクシングの東洋太平洋OPBFスーパーフライ級王座決定戦が6日、後楽園ホールで、同級1位の井上拓真(19歳、大橋)と、同級2位のマーク・アンソニー・ヘラルド(23歳、比国)の間で行われ、井上は、最終回にダウンを奪われる苦しい試合を3-0の判定で制してプロ5戦目にして新王者に輝いた。兄のWB0世界Sフライ級王者、井上尚弥(22歳、大橋)と同じく5戦目のタイトル獲得で、世界への挑戦権を得たが、その兄は、「インパクトが足らない。こんなんじゃ俺に並ぶのはまだまだ」と苦言。大橋会長は「課題も出た。あせらずに次は防衛戦。来年中には世界へ」という青写真を明らかにした。


「井上弟は井上兄よりもっと凄い!」

 そのキャッチフレーズ通りとはいかなかった。相手は、39戦31勝(14KO)5敗1分の戦績を持つサウスポーで、WBOの同級2位にランクされたこともあり、2年前には、世界挑戦経験のある向井寛史(六島}を2回KOで沈めたタフネス。大橋会長が「なんでこんな相手と組んだのかと多くの人に言われた」という強敵だったが、拓真は序盤からスピードで圧倒。左のジャブ、左のフックで距離をしっかりと作り、右のストレート、ワンツーでアクセントを加えながら、4回終了後の公開採点ではジャッジの3者が「40-36」のフルマークをつけていた。

 だが、そこからペースダウン。右手拳を痛めてしまった影響もあってか、9回にはカウンターを浴び、最終ラウンドには、バランスを崩したところに無理やりにひっかけて倒すような左フックを浴びてダウン。
 拓真は「ひっかけられただけのスリップダウン」をアピールをしたが、後味の悪い形で最終ラウンドのゴングを聞くことになった。判定は「115-112」「116-111」「117-110」の完勝。それでも、接近戦でダーティな肘打ちも受け、鎖骨あたりに痣をつくった拓真の口をついたのは、反省の弁。

「きつい試合だった。課題ばかりが出た。こんなんじゃ世界の壁は大きい」

 お先に世界のベルトを2つも腰に巻いた兄の試合評は容赦なかった。
「結果はよかったけれど、内容にインパクトがなかった。プロとして魅せるという点に欠けた。1回から最後まで同じで山場を作れない。慎重にいきすぎている。本来の力の半分も出せていないんじゃないか。スピードで上回っているんだから、僕ならもっとプレスをかけてフィニッシュにもっていった。これでは、世界は取れたとしてもファンに支持されるような世界王者にはなれない。俺に並ぶのはまだ早い(笑)」
 同じく5戦目で東洋ベルトを巻いた弟にきつい苦言。

 それを伝え聞いた拓真は「その通り。そこを踏まえた上でこれから練習していかないと」と、苦笑いを浮かべた。「相手を見すぎてしまうのが課題。いろんな攻撃ができずに単調になった。それに、ひとつ当たった後の次のパンチが出ていなかった。初のタイトルというプレッシャーはなかったんですけどね」

 それでも、多彩な左とスピードを活かした距離感。右のパンチの威力と、真正面で下から打つ独特の角度の右アッパーなど、随所に非凡さは見えた。衝撃シーンは作ることができなかったが、内容的には元世界上位ランカーを圧倒したのである。井上家の美学として、並の王者では許せないのかもしれないし、その志は良しではあるが、世界ランカーのスキルは十二分に備えている。
父で専属トレーナーの真吾さんも、「見すぎたね。悪い癖。3回ほど倒すチャンスがあったのに。もっとフェイントと、上下にパンチをランダムに打つなどしていかないとね。プロに入ってから尚弥は、変化した。そういう対応力が高まったが、そこのところが、まだ拓真には足りないところかもしれない」と、兄と比較して今後の課題を与えた。

 5月30日に高校時代のライバルだった田中恒成(20歳、畑中)が、プロ5戦目でWBO世界ミニマム級王者となった。兄の作った6戦目世界王者の最速記録を破られた。

「高校時代からライバルだったので、刺激というか、ここで俺は負けられないと思った」

 拓真にしてみれば、田中は兄の存在以上に気になるボクサーである。いつか階級がそろってくれば、再び両者が拳をあわせる日がくるのかもしれない。、

 もう最速世界奪取の記録が消えてしまったこともあって、大橋会長は、今後の世界挑戦については慎重な考え方。ひとつ防衛戦を挟み、世界挑戦のチャンスを伺うプランで、兄と同じくスーパーフライ級での世界戦実現を模索していきたいという。

 拓真も、世界戦についての気持ちを聞かれると、「これで(ベルトを巻いたことで)いつでも世界挑戦の環境は整った。課題を克服して、チャンスをもらったときに一発で取れるように準備をしたい」と答えた。

 苦しんだ末の戴冠も、大きく羽ばたくための試金石と考えれば、大橋会長の言うように「意義のある試合」だったのかもしれない。
 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)