4月から始まった新入部員募集もだいたいGWくらいで一段落、


新入部員にとってもチームにとってもそろそろ

「どのポジションがいいかなぁ........」

と考える時期でもあると思います。

もちろん、入部時点ですでに

「あのポジション、やりたい!」

というのもあると思います。


アメリカンフットボールに興味を持ってから、

ポジションを問わず誰もが思うのが

「あのボール、どうやって投げるんだろう?」ではないでしょうか?


とくにQB希望の場合、

「ボールを投げること」

はパスプレーが上手くいくかどうかに関わる重要な技術ですのでしっかりと身につけたいところですし、


楕円形のボールがきれいなスパイラルで美しい放物線を描きながら飛んでいく姿は

他の球技にはない

「アメリカンフットボールの大きな魅力」

の一つだと思います。


今回はアメリカンフットボールを投げるうえで

「どんなスローイングフォームが自分にあっているのか」

をJ.I.的マニアックな視点から考え、

「腕の振り」

に着目しながら書いてみたいと思います。



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僕のブログは非常に長文なので読み疲れる前に結論から書くと、


「自分の骨格にあった投げ方を探すこと」

がベストだと僕は思っています。


骨格にあった投げ方が出来ると力の伝達効率を最大化出来るのでいい球を投げやすくなるだけでなく、

関節への負担を最小限に抑えることが出来て、怪我の予防にも繋がります。


どうやったら

「自分の骨格にあった投げ方を探すこと」

が出来るか、それについて書いていきます。


また、今回もスローイング動作をフェイズ分けして紹介しますがテイクバックから順番にではなく、

スローイングの核であるリリースから紹介し、そこから逆流する形でスローイングを考えてみたいと思います。


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【スパイラルが評価の基準?】


入部してまもなく、先輩QBがボールの投げ方を教えてくれますよね。


ただ、教えてもらったとおり投げてみてもはじめはギクシャクしてなかなか上手くいかないてすよね。楕円形のフットボールはそう簡単に投げれません。


ただ何球か投げているときれいなスパイラルで飛んでいくこともあります。


周りで見ていた人も

「おぉ〜、いいねぇ!」

投げてる本人も

「うわぁ〜、気持ちいい♥」

という感じになりますね。


やはりスローイングを評価するわかりやすい基準は

「スパイラル」

にあると思います。


速い球を投げたり、遠くまで投げたりするのも魅力的ですが、


投げる方も見てる方も

「スパイラルよく投げる」

まずはこれをスローイングの評価にすることは多いです。


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投げた球がたまたまスパイラルよく飛んでいくことはありますよね。


でも大半は偶然起こる

「奇跡の一投」

です。何球も続けてスパイラルよく、

とはなかなかいかないです。


たまたま体の動きとボールの軸、スパイラルをかける向きやタイミングがぴったりと合って

「奇跡の一投」

がたまたま完成します。


奇跡であれなんであれ気持ちいいのは間違いないので

「奇跡の一投を思い出しながら」

何度も何度も繰り返し練習すると思います。

僕も覚えがあります😁


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【奇跡の一投=スパイラルの落とし穴】


「スパイラルがいい」

というのはたしかにスローイングの評価基準において大切なのですが、

ここにはちょっと落とし穴があります。


それは、

スパイラルがいいかどうか、というのは

「ボールの挙動の評価」

であって、

「スローイングフォームの評価ではない」

ということです。


ここ、けっこう見落としがちです。

フィールドでスローイング指導していても

ついついボールを見ちゃいますよね😁


スパイラルは良くてもフォームが悪いと

あとあと上達しにくいということもあります。

肘や肩、腰を痛めやすくなることもあります。


「自分にあったスローイングフォーム」

を探す必要がありますね。


そうは言っても気になるのがスパイラルです😁

このブログの途中に

【どうやってスパイラルをかける???】

という項目も設けていますので読んでみて下さい。


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【まずは真似するところから】


実戦練習を始めるとスパイラルがいいだけでは通用しないことがわかり、


よりクイックな投げ方、

速いボールを投げる投げ方、

遠くにボールを投げる投げ方、

などを模索しながら


「どんなスローイングフォームがいいのか」

「どんなスローイングフォームが自分にあっているか」

を考えるようになると思います。


ただ、考えているだけではわからないのでとにかく投げてみて、自分に一番あっていると思える投げ方を探し出すしかないですね。


とは言え、

ただやみくもに投げても仕方ないので

「こんな感じで投げたい!」

というイメージを持った上で練習したいですので、


「あこがれのQBを真似する」

ところからスタートしていいと思います。


NFLのQBを真似するのが一番いいですね。


とにかくNFLのいろんなQBを見て

「このフォーム、いいなぁ!」

「この投げ方、カッコいいな!」

と感じるものを真似したらいいと思います。


ちょっと経験を積んだQBであれば、

自分が得意なプレースタイルに似たQBの真似をするのはいいと思います。


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【千差万別のスローイングフォーム】


いろいろなQBを見ていて気づくのが、

「スローイングフォームはみんな違う」

というところですね。


スローイングフォームの中でもとりわけ目に入るのが

「腕の振り」

だと思います。


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いろんなQBのスローイングを集めた動画がありましたのでちょっと見て下さい。


「Nobody ever throw the same way」


引退した名QBから去年NFL入りしたルーキーQBまで9名のスローイングです。


腕の振りは簡単に言うと腕が前に動いていく様ですね。

テイクバックでボールが体の後ろにある状態からボールに前向きの勢いをつけ、

その勢いが最大化したところでリリースする


という、

「スローイング動作そのもの」

であり、

「スローイングを特徴づけるもの」

でもあります。


動画を見ても、

腕が上から下に降りてくるようなスローイング

腕が横から出てくるようなスローイング

など、それぞれのQBのスローイングの違いは

「腕の振り」

によく現れます。



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スローイングにおける

「腕の振り」

で押さえるべきポイントは


1.腕を振る角度

2.リリース位置

3.加速区間


の3点かなと思います。


動作の順番としては

「加速区間→リリース位置」

ですが、


まずはリリース位置の重要性を理解した上で加速区間を考えたいので

2.リリース位置

3.加速区間

の順番にします。


それぞれについて書いてみたいと思います。


=====


【1.腕を振る角度】


上で動画を紹介したところでも書きましたが、


腕の振りというとオーバースローやスリークォーターなど

「腕を振る角度」

が気になりますね。


気になる、というよりも一番目に入って印象に残るところだと思います。


腕の振りの角度は世代間でかなり捉え方に差がでるところでもあり、


「コーチは上から投げろって言うけど、

NFLを見ててもオーバースローのQBなんていないじゃん!」

といった現場のやりとりも起こりがちですね。


ちょっと前に書いたブログで

「従来型・発展型・最新型」

のスローイングフォームを紹介しましたが、


従来型は高いリリースのオーバースロー

発展型・最新型はスリークォーター

と、腕を振る角度が違います。


ただ、時代を追って変化しているとはいえ

「オーバースローがダメなのか」

「スリークォーターが絶対いいのか」

というと必ずしもそういうことではなく、


「正解のない話し合い」

が続くこともありますね。


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「従来型・発展型・最新型」

の3種類のスローイングフォームをもう少し詳しく書いてみたいと思います。


スローイングはどの型であっても

主に2つの基本動作

「並進運動 + (体軸)回転運動」

を利用していますが、


【従来型】は

「並進運動 + (体軸)回転運動」

を共に大きく利用したスタイルで、

前に踏み出しながら上体を傾け出来るだけ高いリリース位置で投げる

「オーバースロー」

が特徴です。


フォロースルーで体を前に倒すように動くのも特徴的で、とにかく

「後ろから前へ」

の勢いを活かした投げ方をします。

野球のピッチャーのような投げ方ですね。


上の動画ではPeyton Manningの投げ方がこの

「従来型」

に含まれます。



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【発展型】も基本的には従来型と似ていますが前への踏み出し幅が若干小さく、それに対して体軸の回転をより強めて、

体軸回転の横回転をより利用しやすい腕の使い方に変化しているのが発展型の特徴です。


体軸回転の力をより効率的に使うために上体の傾きは従来型より小さく、

より大きな遠心力を得るためにテイクバックで肘を伸ばしているQBが多いです。

以前のブログではJared Goffを例に挙げました。


腕の振りが

「スリークォーター気味」

でリリース位置が低くなっています。


動画の最後に登場するTrevor Lawrenceはこのタイプに近いですね。



Trevor LawrenceはNFL入りした頃はテイクバックで腕をもう少し伸ばしていましたが、
今は肘を曲げてコンパクトになっていますね。

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【最新型】は後ろから前に体を動かす力をあまり利用せず、


「体軸回転運動主体」

で投げるのが特徴です。


半身の姿勢から前足を前に踏み出すのではなく

左側にアウトステップして腰を回し体軸回転を強調して投げる感じです。


従来型・発展型と明らかに違うのは、


「肩の線が地面と平行」

「体軸が地面と垂直」


の状態を保ったまま投げるというところで、

フォロースルーでも上体を前に被せるような動きは全くありません。


リリース位置も低く、

「スリークォーターからサイドスロー気味」

に投げているような印象で、

手首のスナップをかなり効かせています。


動画ではPatrick MahomesやC.J. Stroudがこのスタイルですね。




Mahomesの写真を見ると体があまり前に移動していないことがわかりますし、

ストラウドの写真を見ると

「肩の線が地面と平行」

「体軸が地面と垂直」

がよくわかります。


日本国内でこのスタイルで投げているQBは

まだ見ないですね。


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写真で紹介した4人以外のQBは

「従来型と発展型の間」

だったり、

「発展形と最新型の間」

だったり、に位置付けされます。


ホントにスローイングは

「十人十色」

ですね!


唯一、僕の目で見てこの3つの型のどれにも属していないように思うのがAaron Rogersの投げ方です。

Aaron Rogersについては別に書きますね。


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【実は体と腕の角度の関係は同じ】


上で写真で紹介した4人のQBを見ると

リリース位置の高いオーバースロー、

リリース位置の低いスリークォーターやもっと低いサイドスロー気味など、


腕の振りは

「見た目わかりやすい違い」

ですよね。


上の動画の9人も腕の振り方を見ても違いがよくわかります。


ここでちょっと目線を変えて、

「腕と肩の線の角度」

に注目してみたいと思います。


上で紹介した


Peyton Manning

Trevor Lawrence

Patrick Mahomes

C.J. Stroud


の写真に

「肩の線と腕の線」

を入れてみました。


ちょっと見比べてみて下さい。






ここで見比べてほしいのは肩の線と腕の線の

「角度」

です。


それぞれカメラ位置が違うので厳密な評価は難しいところですが、


オーバースローやスリークォーターなど

パッと見、かなり違う投げ方に見えても

肩の線と腕の線が作る角度を見るとどの投げ方もだいたい同じくらいであることがわかると思います。


厳密に測っていませんが、

だいたい140度くらいだと思います。


「オーバースローでもスリークォーターでも

あまり変わらない」


これはどう考えたらいいんでしょうか?


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【骨格に忠実な腕の振り】


どんな投げ方をしても、

肩の線と腕の線がつくる角度はほぼ同じでだいたい140度くらいになっています。


通常僕らの目に映るオーバースローやスリークォーターなどの腕の振りは

「地面に対して腕がどうか」

という見方ですが、


上で線を引いて140度くらいと書いたのは

「体に対して腕がどうか」

という見方です。


肩の線に対して腕の線が大体140度くらいというのが

「骨格に無理のない腕の角度」

ということですね。


腕の角度が同じなのになぜオーバースローになったりスリークォーターになったりするかと言うと、

「上体=体軸の傾きが違うから」

です。


Peyton Manningのオーバースローは上体(=体軸)を傾けることで腕が上から下に振られるようにしているだけで、

肩の線と腕の線の角度は他のQBとさほど変わりません。


Peyton Manningの写真を肩の線が平行になるように傾けてみるとよくわかります。



見た目のオーバースローもスリークォーターも実は

「肩の線と腕の線の関係は変わらない」

ということです。


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【リラックス=ゼロポジション】


オーバースローでもスリークォーターでも

肩の線と腕の線の角度の関係はそれほど変わらずだいたい140度くらいです。


この角度は、上で書いた

「骨格に無理のない腕の角度」

「骨格に忠実な腕の角度」

として


「ゼロポジション」

と呼ばれる腕の位置です。


ちょっと難しく言うと

「肩甲棘と上腕骨が一直線に並ぶ位置」

のことです。


わかりやすく体感しようと思うと、

「力なくバンザイ」

したときの腕の位置がゼロポジションで、


このとき腕には内旋・外旋の力がかからず

肩を取り巻く筋肉が非常にリラックスした状態です。


腕を上げて脇が140度くらい開いていて

腕が体の真横ではなく30度くらい前にある状態が一番リラックス出来るはずです。


「グリコの看板」

が一番わかりやすいですね😁



腕を振るときは出来るだけ肩に無駄な力が入らない位置で振ってあげたほうがより効率よく筋力を使うことが出来ます。


つまり、

「ゼロポジションで腕を振る」

がボールを投げる上で一番効率がいい、

ということになりますね。


ボールを力いっぱい投げようと腕や体にガチガチに力を入れても上手くいかないのに、

力を抜いてリラックスして投げたときにすごくいい球が投げれた経験はあると思います。


無駄な力がかかると骨格はデザイン通り機能しません。


「肩の力を抜いて!」

とよくアドバイスしますよね。


無駄な力が入らず筋肉がリラックスしていると

「骨・関節がデザイン通り素直に動く」

状態になり、腕の振りが無理なく行えます。


スローイングに詳しい人であれば、

「ゼロポジション」

という言葉を聞いたことがあるかもしれませんね。僕も何度かブログで取り上げています。


上の写真で見たオーバースローのQBもスリークォーターのQBも、骨格に忠実に体を使っていたらどんな腕の振りで投げても必ず

「ゼロポジションになる」

ということです。


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ゼロポジションは別名

「ハンモックポジション」

とも呼ばれていますね。


ハンモックに横たわり頭の後ろで手を組んでユラユラするときの肘の位置はゼロポジションにあって、


骨格に無理ないポジションだからリラックス

出来るわけです。


ハンモックでなくても、

芝生に寝っ転がって頭の後ろで手を組んだときも肘はゼロポジションにありますね。


立ったまま、椅子に座ったままでもいいので

頭の後ろで手を組んで肩に力の入らない

「ゼロポジション」

を作ってみて下さい。


肘はだいたい左右の視界の端っこの方に見えるくらいの位置にあると思います。


=====


【2.リリース位置】


ハンモックポジションのときの肘の位置を動かさず腕を真っすぐ伸ばしたときの手の位置が

およそスローイングの中での

「リリース位置」

です。


すぐ上で紹介したグリコの看板のポーズの腕の位置・手の位置がおよそ骨格に忠実なリリース位置です。


上で紹介したNFLのQBを見ても

「ゼロポジションでリリースが起こっている」

のがわかると思います。


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腕が体の30度くらい前に出て脇が140度くらい開いた高さです。


「えぇ、こんなとこでリリース?」

という印象の人が多いかもですね!


イメージとしてもっと上の方だったり、もっと体の横の方だったりすると思います。


ただ、ゼロポジションで肩が一番リラックスした状態で腕を効率よく振ると、

「ここ」

でリリースすることになります。


Trevor Lawrenceのスローイングからリリースの瞬間を切り取るとこんな感じです。



かなり体の前の方ですよね!

脇も140度くらい開いています。

体・肩の線もけっこう回ってますよね。

ターゲットを12時とすると、

右肩は1時くらいの位置にあると思います。


「ここ」

が一番からだにやさしいリリース位置です😁


ここで書いた140度・30度というのは大体の目安です。


多少の個人差はあって、

140度より腕に上げたほうがリラックスできる人もいます。降ろしたほうがリラックスできる人もいます。


30度よりももっと前に出ている方がリラックスできる人もいますしその逆もいます。


自分の体が一番リラックスできる位置を探して下さい。


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ちなみに、ボールを握って腕を伸ばしてグリコの看板のポーズ(ゼロポジション)を取るとボールの先端はだいたいターゲットから60度くらい外を向いています。


体を60度回転させる=右肩1時の方向まで体を回すとボールの先端はターゲット方向を向くことになりますね。


鏡の前でやってみて下さい。

鏡に正対してグリコのポーズをして、

ボールの先端が真正面を向くまで体を回してみて下さい。


肩はだいたい1時くらいまで回るはずです。

体軸回転はボールに勢いをつけるだけでなく

ボールをターゲットに向ける役割も担っています。


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【ゼロポジションのメリット】


上の写真のすぐ後のリリース直後の写真を見るとよくわかりますが、

ゼロポジションで肩を1時くらいまで回したところでリリースすると人差し指はだいたいターゲット方向を向いています。



人差し指はボールから最後に離れる指でコントロールよくボールを投げる上で非常に大切ですが、


肩をしっかりと回し、ゼロポジションでしっかり腕を伸ばしてボールを投げると人差し指は自然と

「投げたい方向を向いてくれる」

ことになりますね。


骨格に忠実に動いていたら難しいことを考えなくてもちゃんと投げれそうです!


これでコントロールが良くなるはず?!


もうひとつ、ゼロポジションでのリリースでは腕に内旋・外旋の力がかかっていない

「ニュートラルな状態」

ですので、逆に考えると

「腕を内旋することも外旋することも出来る状態」

ということです。


リリースのときに意識的に内旋の動作を加えて強烈なスパイラルをかける動きもやりやすいということですね。


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【どうやってスパイラルをかける???】

ここは一番気になるところだと思います😁

よく言われるのはリリースのとき
「手のひらを外に向けるように腕をひねる」
というアドバイスですね。

ただ、すぐ上のTrevor Lawrenceのリリース直後の写真を見ても手のひらは下を向いています。

検証の意味を兼ねて、上の動画に登場したその他のQBのリリース直後の手のひらの向きをスクショしてみました。








大多数はリリース直後は手のひらが下を向いていますね。

NFLのQBがこうなんですから手のひらを外に向ける必要はないように思えてきます...........

最新型のスローイングのマホームズやストラウドもリリース直後は手のひらは下を向いています。

これらの写真から考えると、
リリースの瞬間に手のひらを外に向ける意識はあまり持たなくてもよさそうですね........

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考え方としておそらく、

リリースでます大切に考えるべきは
「ボールに前向きの勢いを与えること」
その次に
「スパイラルをかけること」
なんだと思います。

気持ちとしてはしっかりスパイラルかけたいですが、
「ボールはまずはレシーバーに飛んでいくこと」
これが一番大切です。

ボールが安定した軌道でレシーバーに飛んでいくためにスパイラルが必要になるわけで、
けして
「スパイラル最優先」
ではないですね。

試合中はヘロヘロ球でもレシーバーに届けばコンプリートパスですし😁

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リリースではスパイラルをかけるために無理やり手のひらを外に向けるよりも、

手首のスナップを効かせて人差し指と親指の間からボールを押し出す
「ボールに前向きの勢いを与える動作」
を優先し、

その次にやるべきこととして
「スパイラルをかける」
ということなのだと思います。

スパイラルのかけ方も、

ボールの勢いを上げるための手首のスナップをしていれば人差し指は自然とボールの腹をこするようになり、結果としてスパイラルはかかる、
といったほうがいいかもしれませんね。

もちろん、そこから少し意識的に人差し指で強くこすってスパイラルを強めることも出来ます。

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 【上から下に、だけではない!】

人差し指でボールをこするときは
「腕の振りの角度に合わせて」
こすってあげるといいと思います。

よく
「上から下にこするように・ひっかくように」、とよく言われてきましたよね。

オーバースローのときはそれでもいいのですが腕の振りがスリークォーターのときにボールを上から下にこすろうと思うと腕を伸ばしてリリースすることが困難になります。

また、肘が曲がったまま指先を上から下に動かすと肘にかなり負担がかかり怪我のリスクも上がると思います。

腕の振りがスリークォーターであれば
「ホールをこする角度もスリークォーター」
が一番体に負担が少ないと思います。


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【自然な動きの中での内旋を意識する】

上の写真でリリース直後に手のひらは下を向いている程度というのはある意味瞬間を切り取った
「写真のトリック」
でもあり、

継続的に動きを見るとリリースの瞬間に全く内旋をしてないわけではないです。

肘の関節の構造上、
肘を伸ばすと前腕は自然と内旋※します。

このときは手のひらが下を向く程度ですが、
この動きの
「前腕の自然な内旋※」
でボールを押し出しながら、
ここで同時に肩からの意識的な内旋を加えてスパイラルを強める、
ということなのかなと思います。

リリースの開始時からいきなりスパイラルを意識して内旋の動きを強めるよりも、
自然な動きに中で発生する内旋の動きに
「ちょっと力を加える」
くらいの意識でいいと思います。

Trevor Lawrenceはリリースは自然な動きで手のひらが下を向き、フォロースルーに向けて少し意識的に肩を内旋させて手が肩の高さに来るくらいでは手のひらが外を向いています。

(※)肘から先が内側に回るのは内旋ではなく回内ですが、話の流れでのわかりやすさで内旋と書いています。



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【リリース開始位置は?】

僕は
「リリースは点ではなく線」
と考えていることは以前ブログに書きました。

リリースには開始位置と終了位置があり、

5本の指で握っているボールから
指が1本でも離れる瞬間が
「リリース開始位置」
で、

人差し指からボールが離れていく瞬間が
「リリース終了位置」
です。

開始位置から終了位置までだいたい40cmくらいあるかなぁと思ってます。

ここまで書いてきたリリースはグリコの看板のポーズでボールが人差し指から離れる位置ですので

「リリース終了位置」
です。

じゃあ、リリース開始位置がどこにあるかと言うと、
グリコの看板のポーズから肘から先を垂直に立ち上げたくらいの腕の位置が
「リリース開始位置」
です。

力なくバンザイしながら
「バイバ〜イ」
と肘から先を横に振っているような感じに似ていると思います。

このときも力なく手を振ってみて一番楽な位置を探してみて下さい。

前腕をおよそ垂直に立ち上げるくらいと考えていいと思いいます。

リリースの動きは主に
「肘から先を伸ばす動き」
と言って良さそうですね。


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ちなみに、力なくバンザイして
肘から先が垂直に立ち上がったポーズでボールを握ると、ボールの先端はだいたい30度くらい外を向いています。

右肩が3時の方向を向いているときに30度外を向いていますので、
体を30度回す=右肩が2時の方向のときにリリース開始位置でボールの先端がターゲット方向を向くことになります。

【リリース開始位置】


【リリース終了位置】


以前のブログで、
「リリースは右肩2時で始まって右肩1時で終わる」
と書きましたが、この理屈にあっていると思います。

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もうひとつちなみに、

力なくバンザイして肘から先が垂直に立ち上がったポーズでリラックスして体を回してみて下さい。ゆっくりでいいです。

体を回すにつれて腕が軽く振り回され、その腕の先で手首がパタン、パタンと倒れると思います。
ゼロポジションでリラックスしていると手首のスナップも自然に起こります。

このタイミングに合わせて肘を伸ばしながら少し意識的に手首のスナップを効かせる動きを加えるとタイミング的にちょうどよく力強くスナップを効かせられると思います。

リラックスしているといろいろなことがわかってきますよ!



---

リリース開始から終了までの間、気をつけておくべきことは

「ボールの軸をターゲットに向けた状態を保ち続けること」

です。


楕円形のフットボールを投げる上で、

「ボールの軸を意識すること」

は非常に大切です。


5本の指でボールを持った状態から1本ずつ指が離れていく間にボールはどんどん不安定になりますので、リリース開始から終了までは

「ボールの軸をぶらさない動き方」

が必要になります。


リリースが始まった瞬間からスパイラルをかける意識が高いとボールの軸を横に押してしまいがちになり、軸がぶれてボールが変な横回転をします。


まずはボールを押し出しながら軸を安定させ、

そこからスパイラルをかける。

やはりこの順番は大切です。



=====


【3.加速区間】


スローイングにおける腕の振りの中で核となるリリースをより質の高いものにするために、


リリース直前の

「加速区間の動作」

が大切になります。


加速区間ですので、

「ボールに勢いをつけること」

がもちろん大切なのですが、同時にもうひとつ大切なのが

「ボールの軸をターゲット方向に合わせること」

です。


この両方が揃わないと楕円形のフットボールは上手く飛んでいきません。


リリースの開始位置と終了位置のところでも同じことを書きましたね。

加速区間とリリースは継続した動作ですので当然といえば当然ですが、フットボールを投げる上で非常に大切です。


---


加速区間を単純に考えると

「テイクバック以降からリリース開始位置まで」

の動作です。


ここからはスローイングの全体像を掴んだ上で考えたほうがわかりやすいと思いますので

Trevor Lawrenceのスローイングを

9枚スクショして連続写真にしてみました。


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【1.内旋による肘の後退】


【2.予備的外旋・肘の先行動作】

【3.本格的外旋・肘の先行動作】


【4.継続的外旋と肘の先行動作】

【5.リリース直前】


【6.リリース開始位置】


【7.リリース終了位置】


【8.リリース直後】

【9.フォロースルー・腕の内旋】


【加速区間って、どこ?】


加速区間の終了位置はリリース開始位置の写真6の直前までですね。


では、加速区間の開始位置はどこになるでしょう?


実質的な加速区間は文字通りに考えれば

「ボールがターゲットに向かって加速する区間」

ですのでその様子を連続写真から探ってみると、その開始位置は

「写真5から」

だと思います。


写真4か5かで比べると、

写真4では肘は前に出てきていますがボールはまだそれほど前に動いていませんので

写真5が加速区間開始位置ですね。


実質的な加速区間は写真5と写真6ということになります。


---


【残るはテイクバック!?】


実質的な加速区間は写真5と写真6ですので


残りの写真1から4までがテイクバックの動作

と考えてもいいですね。


ただ僕の考え方では

「テイクバックは写真1から写真2まで」

だと思っています。


理由は

「腕のひねり方の切れ目だから」

です。


スローイングの動作において腕は

「内旋①→外旋→内旋②」

の順番にひねられます。


胸の前に構えた姿勢から腕を内旋させると、

肘が後ろに下がりボールを握った手が肩が脇の高さくらいになります。

ちょうど写真1の姿勢です。


そこから腕を外旋させると、

肘が前に出てきながらボールを握った手は肩の上に上がっていきます。

写真2はこの動きですね。


続く写真3.4.では肘から先がさらに立ち上がりボールの向きも後ろから横へと変わっています。

「肘とボールの先端は同じ方向を向いている」

ことを考えると、肘が前に出ながらターゲット方向に向きを変えているということですね。


---


「内旋と外旋の切れ目」

という意味では写真1と写真2の間なので

「写真1のみがテイクバック」

と考えてもいいのですが、


僕が言う

「腕のひねり方の切れ目」

は内旋と外旋の切れ目ではなく、


「腕がニュートラルな状態になるところ」

という意味です。


写真2.3.4.はすべて外旋の動きですが、

写真2の外旋はちょっと質が違います。


写真2を【予備的外旋】

写真3を【本格的外旋】

写真4を【継続的外旋】


と書きましたが、


写真2は

「腕のひねりがニュートラルな位置に戻るための(予備的な)外旋」

です。


写真1で内旋された腕が写真2の予備的外旋によって内旋のストレスも外旋のストレスも受けないニュートラルな状態に戻ります。


実質的な本格的な外旋が始まるのは写真3からでここからスローイングに必要な加速が始まると考えると


「写真1・2をテイクバック」

と考えていいと思います。


上の動画の9人のQBの中でもPeyton ManningやTom Bradyは胸の前に構えたボールを直接写真2のポジションに持ち上げるようなテイクバックをしますね。


Tom Bradyのようにクイックなパスを得意とするQBの場合、テイクバックをコンパクトにするために写真1の動きを省略してテイクバックの動きを最小限にしているのだと思います。


ちなみに、テイクバックの動きが一番大きいのはJosh Allenですね。

「無駄に大きい」

と思えるくらい、ボールがお腹くらいまで降りてから上がってきます😁


本人のスローイングのリズムの取り方としてこの動作を省略できない場合もありますが、

出来れば無駄なく投げれる方がいいですね。


もうひとつちなみに、

「テイクバックは写真1のみ」

という投げ方をするのはDrew Breesですね。

上の動画に含まれていないのが残念ですが、

下の写真のような姿が印象的です。


Breesの場合、セットアップのボジションに

テイクバックを含めていたような姿勢と動きでしたね。



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【写真3と4の動作はなんなのか】

写真1では腕が内旋され、写真2では肘が少し前に出て外旋が始まり腕がニュートラルの位置に戻る。
これがテイクバックとなると、

写真3と4はなんなんでしょうか?

---

すぐ上でも書きましたが、
写真3・4での大きな変化は
「ボールの向きが変わる」
というところです。

写真3・4でやっているのは

「ボールの軸をターゲット方向に向け始める」

ですね。


---


写真3・4を見ると

後ろを向いていたボールの先端が横を向いてい

ます。

ボールの先端をターゲット側に向けていき、
ボールの軸をターゲットまでの飛球軌道に合わせていく準備をしています。

ボールの先端が完全にターゲット方向に向くのはもうちょっとあとですが、

この区間で
「ボールの方向づけの準備」
がきっちりできていると、
ボールをしっかりと加速してリリースでコントロールよくスパイラルよく投げることが比較的容易になります。

本格的な加速動作に移る前に必要な準備をするという意味で
「加速準備区間」
と呼んでいいと思います。

---

【加速準備区間】

写真3・4の区間での大きな変化は
「ボールの向きが変わること」
ですが、

ボールの向きを変える上で大切なのが
「肘の先行動作」
です。

何度も書いていますが肘とボールの先端はほぼ同じ方向を向いていますのでコントロールを定めるためにはまず肘をターゲットに向けるように前に送り出します。
ボールの先端は肘に合わせて勝手にターゲット方向を向いてくれます。

同時に、肘を送り出して先行させることで
「肘でボールを引っ張る形」
を作り出せるのでそこから腕のしなりを使って手先を加速させる準備が出来上がります。
腕のしなりについては以前ブログを書きましたので検索してみて下さい。

加速準備区間で大切なのは
「肘の先行動作」
です!


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予備的外旋と書いた写真2で
「肘は前に動いてる?」
という疑問もあると思いますので実際にやってみて下さい。
椅子に座ったままでも出来ます。

写真1の姿勢から写真2のようにボールを上にあげると肘が少し前に出てくると思います。

肘の位置を動かさずに上げることも出来ますがそれでは肩に力が入ると思います。
リラックスできてないですね。

骨格に忠実に肩にストレスがかからないようにするには肘を軽く前に送り出してあげるといいです。

ボールを上に持ち上げる外旋の動きも、
肩をリラックスさせたまま腕を外旋させるには
肘が体の30度くらい前にあるとスムーズに行えます。

上でゼロポジションのことを書いたときにも
「体の30度くらい前」
と書きましたが、

肘が体の30度くらい前にあるときは、
腕を挙げていても降ろしていても内旋や外旋のストレスがかかりにくい状態になります。

肘が体の30度くらい前にある状態は
「肩甲平面」
と呼ばれていて、
腕を上げていなくてもゼロポジションと同じ効果があります。

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スローイングにおける内旋→外旋→内旋の一連の動作の中で外旋と最後の内旋を効率的に行うためには腕が体の30度くらい前にある
「肩甲平面」
「ゼロポジション」
にあると骨格にかかるストレスを最小限にすることが出来るだけでなく筋力を最大限に活かすことが出来ます。

テイクバック時の内旋は、
短いパスやクイックに投げるときなどは肘をあまり後ろに引かず最小限に肩甲平面上で、
ディープボールを投げるときは大きな勢いを得るために肩の真横くらいまで少し大きめに引いていいですが大きく引いたあと肘を必ず肩甲平面に戻す意識を持っていれば問題ないと思います。

通常、この肘を肩甲平面に戻す作業を忘れてしまうためにロングスローでボールが右の方に飛んでいきます。

大きく後ろに引っ張った肘を肩甲平面に戻すことでもかなり大きな前向きの勢いを得ることが出来ます。

「肘を必ず肩甲平面に戻す」
これは意識していいと思います。

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【実は腕は肩から振っていない!???】


ちなみに、写真5のリリース直前の姿勢も肘が体の30度くらい前にあると思います。

ここも肩甲平面上です。


実はスローイング中の腕のひねりの中でも外旋の動きはこの
「肩甲平面上」
で行われます。

写真2は予備的外旋として肘を肩甲平面に近づけ、写真3からは肘の位置がだいたい体の斜め前30度くらいの位置にあって、

この体と肘の位置の角度はリリースするまでほぼ変わっていません。

以前、
「腕の振りはイリュージョン」
というブログを書きましたが、

肩から肘の上腕は肩甲平面上にある状態で多少上下する程度の動きで、

「後ろから前への動きは体軸回転によるもの」
と考えていいと思います。

上腕自体はそれほど大きく動いていません。
これを考えると
「腕の振り=前腕の動き」
と考えてもいいかもですね。


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【まとめると...............】


上で紹介したTrevor Lawrenceの連続写真を使ってスローイングを


写真1・2=テイクバック

写真3・4=加速準備区間

写真5・6=加速区間

写真7・8=リリース

写真9  =フォロースルー


に分けて考えました。


本来であればテイクバックから順番に説明すればもっとわかりやすく書けたかもしれません。

僕自身、書いた文章を読みながら

「テイクバックから順番のほうが分かりやすいよなぁ」

と思いました。


が、今回意図してリリースから説明したのは

「リリースがスローイングの核だから」

です。常にリリースのことを考えてスローイングしてほしいからです。


僕が常に大切にしている

「骨格に忠実なフォーム・動き」

を前提に、


肩が一番リラックスした

「リリース時の体の在り方=ゼロポジション」

の意識を高めるところからスタートし、


リリースでの体の使い方を軸として

「リリースではこうする」


そのために、リリース直前の

「加速区間ではこうする」


そのために、加速区間の直前の

「加速準備区間ではこうする」


そのために、加速準備区間の直前の

「テイクバックではこうする」


とスローイング動作を逆向きに追いかけました。


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スローイング動作の逆向きに追いかける考え方は実戦で役立てられると思います。


ラッシュに捕まりそうになってギリギリでボールを手放すときはテイクバックなんてしている時間はありません。

こういうときはリリースのことだけを意識して投げる。


ラッシュが迫っているがまだ余裕がある場合でもテイクバックや加速準備の動作は省略して

加速区間からを意識して投げる、


もう少し余裕があるときは加速準備区間から意識して投げる、


クイックスローのときはテイクバックをちょっと端折って投げる、


ロングスローでは最大限のテイクバックで投げる。


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スローイングフォームの動作自体は変えずに

「どこからスローイングをスタートするか」

を変えるだけで実戦での状況に対応できることになります。


ショートパス用のフォーム

ロングパス用のフォーム

クイックパス用のフォーム

ブレットパス用フォーム

....etc


など状況や投げる球筋によってフォームを変えていると

「いったい、なにが自分のフォームなのか」

がわかりにくくなると思います。


この意味でも

「どこからスローイングをスタートするか」

を考えてもいいと思います。


スローイングフォームを固めるには時間がかかりますが、


練習中はスローイングフォームよりも

「パスが通ったかどうか」

に集中してしまったり、

チームとしての練習やその他に時間を取られて意外とスローイング練習に取れる時間がなかったりします。


少しでも効率よく実戦に活かせるスローイングを考える上で

「どこからスローイングをスタートするか」

という考え方が役に立てば嬉しいです。

試してみて下さい。


とにかく体に無理のかからないリラックスした状態でのスローイングを目指して下さい。

それがオーバースローでもサイドスローでもリラックス出来ていればそれでもいいと思いますよ。とにかく怪我なく楽しくアメリカンフットボールを続けましょう!!


今回はこのへんで。

ありがとうございました。


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次回は保留中の

「走る・止まる・曲がる」

について書いてみたいと思います。


アメリカンフットボールのみならず、

すべてのスポーツどころか、日常生活にも関わる基本の動作ですね。


前職のスキー指導の

「重心と足元の考え方」

を土台に書きたいと思います。


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【追伸】


「唯一、僕の目で見てこの3つの型のどれにも属していないのがAaron Rogersの投げ方です。

これについては別に書きます😁」

と上で書きましたが、


僕の考えではAaron Rogersの投げ方は

最新型の一歩先の

「未来型」

かなと思っています。


Aaron Rogersの投げ方を見ると、

右肩が下がっているように見えますよね。


半身の姿勢のときの体軸の傾き角度を保ったまま体を回転するとそうなります。

ゴルフスイングに似てますね。


MahomesやStroudの投げ方は最新型ですが、

半身の姿勢の体軸の傾きから体を起こしているから

「肩の線が地面と平行」

になります。


Aaron Rogersはその先を言っているように思えます。