オフシーズン企画第二弾は
「よりはやく」
です。
動作の早さと球の速さについてです。
シーズン中にいろんな課題が見つかったと思いますが、QBとしてオフシーズンに気になるが
「スローイング改善」
です。来季に向けて
『より正確に、よりはやく、より遠く』
を目指したいところです。
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オフシーズンの走り込みや筋力アップなどで飛距離アップ・球速アップを図ることは多いと思いますがそれ以外に出来ることはないでしょうか?
アメリカでは
「ゴルフにスイングコーチが必要なように、
QBにはスローイングコーチが必要だ」
と言われています。
NFL屈指のQB Tom Bradyでさえオフシーズンには専属のスローイングコーチを付けてフォーム改善に取り組むのは有名です。
コーチ自体が不足している日本でQBコーチを探す、ましてやスローイングのみに特化したコーチを探すこと自体難しいですが、このブログが少しでも役に立てばいいなと思います。
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スローイング改善には時間がかかります。
「動きを変えること」
自体が大変なことです。
一旦染み付いた癖
「Muscle Memory(筋肉の記憶)」
を抜き、効率的な動きを体に再インストールする。
Muscle Memoryを書き換えるには2,000回の反復が必要なんだそうです。
時間かかりますよ(^_^;)
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また、
『基礎の見直し』
という部分が非常に大切になるのですが、
シーズン中にどうしても結果重視の実戦練習が中心となり基礎の見直しをやっていくのはけっこう難しいため、
オフシーズンの今こそチャンスです!!
『より正確に、よりはやく、より遠く』
これが出来るようになるのがQBとしての希望ですね。
今回はスローイングフォームだけでなく、
スローイング全般の見直しの意味を込めて
「スローイング改善」
を考えてみたいと思います。
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『より正確に、よりはやく、より遠く』
の第二弾、今回は
『よりはやく』
を書いていきます。
「はやく」
をひらがなで書いたのはスローイングにおいて
「早さ」と「速さ」
の両面の大切さがあるからです。
まずはスローイングに関わる作業のタイミングの「早さ」から書いていきます。
続けて「球の速さ」について書いていきます。
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【よりはやく!】の本題に入る前に出来れば
前回のブログ【より正確に!】を読んでいただいていたほうがより理解が深まると思いますので紹介しておきますね。
もちろん、これをすっ飛ばして本題に進んでいただいても構いませんよ!
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【より早く】
センターのスナップを受けてから投げるまでの「一連の流れの早さ」
を上げる必要があります。
スナップ以降の一連の流れは
ドロップバック
セットアップ
リリース
がキーですね。
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『ドロップバック』
3歩のドロップバックを例に取ると、
1歩目はドライブステップと呼ばれ、LOSからできるだけ早く遠くに移動するステップ
2歩目はバランスステップと呼ばれ、クロスした足で減速しながらバランスを整えるステップ
3歩目はセトルステップと呼ばれ、
「Settle」
の英語通り、その場に落ち着く意味での最終ステップです。
Set Stepということもありますね。
3歩のドロップバックで早く出来るのは
1歩目しかありません。
2歩目は減速、3歩目で完全停止です。
アメリカのコーチの教材でも1歩目は
”Deep, powerful and explosive”
「深く(大きく)、力強く、爆発的な」
と表現されることが多いです。
いかに早く大きく1歩目を動かせるか、しっかり練習すべきです。
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3歩のステップは
「1・2・3」
とリズムよくステップを踏みがちですが、
大きな1歩目
クロスステップの2歩目
完全停止の3歩目
ですからリズムは一定ではありません。
Chad Penningtonの動画を見ていると
「ターン・タッ・タッ」
のリズムだと言っていました。
この動画の2分すぎくらいのところです。
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アンダーセンターからであれば、
スナップを受け取るのとドロップバック一歩目の初動が同時に起こせるような練習が必要です。
スナップのエクスチェンジではセンターは前に動きQBはドロップバックしますので
センターのお尻につけたQBの手は前に動き
QBの体は後ろに動くことになります。
最近は大半のプレーがショットガンからなので
アンダーセンターからの動き出しを苦手としているQBが多いように思います。
また、ドロップバック一歩目は
「ポストスナップリード」
を確実なものにするためにディフェンスに意識を集中するタイミングでもありドロップバックそのものに気を使っている暇はありません。
練習で繰り返して体が勝手に動くようになるまでこの動きに慣れる必要があります。
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『セットアップ』
動き続けるレシーバーを狙い
「ターゲットに投げやすい体勢を整えるための準備」
という意味でここでもステップワークが非常に大切になります。
結局、足元の話です。
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ドロップバックしてターゲットを探しながら投げる準備をするとき
方向を変えるステップワークの早さ
位置を変えるステップワークの早さ
が重要になります。
動画をひとつ紹介します。
Peyton ManningがNew England PatriotsのルーキーQBのMac Jonesのクォーターバッキングの解説をしている動画です。
この動画の5分33秒のところに左のスラントに投げるのをやめてフラットに投げるプレーがあります。
5分46秒くらいからアップで足元のシーンが写っていますが、このときの素早く細かいステップワークが解説されています。
ちょっとターゲットを変えるだけの時は
足を踏み変えずに上半身で無理やり調整して投げることが多いです。
第一弾のブログでも書きましたが、
「足元から作る正確性」
を目指しそれを早く出来るよう繰り返し練習しましょう!
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位置を変えるステップワークはディフェンスをかわすステップワークです。
ポケットプレゼンスですね。
ディフェンスのラッシュを想定して
右に動く、左に動く
前に動く、後ろに動く
など、
「最小限のステップで」
ラッシュをかわしながらもバランスを崩さず
下半身から体全体でターゲットに向く練習をすべきです。
ポケットプレゼンスについては以前ブログを書きましたのでそれを参考にしてください。
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位置を変えるドリルも紹介しておきますね。
方向を変える動きは上で紹介した
「Weave Drill(Tom Brady Drill)」
がいいドリルです。
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素早いステップワークでドロップバックと方向決めが早く終わるとその分スローイングに余裕が生まれます。
経験の浅いQB、あまり上手ではないQBは
ドロップバックが遅く、方向決めも遅く、
そのため慌てて投げないといけなくなる悪循環に陥りやすいです。
ドロップバックが早く
方向決めも早く
余裕を持って投げる
これがベストです!
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『リリース』
以前からクイックリリースについては何度も書いてきましたが、テイクバックは
「必要なだけ後ろに引く」
を身につけるといいです。
投げ始めにいつもお決まりの
「テイクバックポーズ」
「90−90ポジション」
を作る必要はありません。
「NFL随一のクイックリリース」
で有名な名QB Dan Marinoは子供の頃からお父さんに
「Up and Out!(=上げて、投げ出せ!)」
と教えられていたそうです。
テイクバックなんかなくていいってことですね!
実は上で紹介したPeyton Manningが解説しているMac Jonesの動画の最初の方にUp and Outのシーンがありますよ!
以前僕も
「テイクバックは必要ですか?」
というブログを書きましたがまんざら間違ってなかったですね!紹介しておきます。
Mac Jonesが早いタイミングで投げるときは無駄な動きがなく非常にクイックな
「Up and Out!」
で参考になります!
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クイックリリースのドリルも紹介します。
クイックリリースと言うとどうしても
「腕の動き」
にばかり注目してしまいがちですが、この動画でも
「下半身の動き」
の早さに注目するよう強調されていますね。
このあたりは企画第一弾「より正確に!」で書いた部分に通じます。
ここでもやはり下半身は大切です。
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【より速く】
つづいて「速さ」です。純粋に
「球速を上げること」
です。パスが弾丸ライナーで決まると気持ちいいです!!
球速を上げる上で大切なのはリリースのときの速度を上げることです。
手から放たれたボールは物理の法則に従ってどんどんスピードが落ちます。加速することは絶対にありませんのでリリースの瞬間の速度を上げる必要があります。
リリースの瞬間の速度を上げるには単純にリリースのときの指先の速度をいかに速くするか、そしてそれをいかに効率良くボールに伝えるか
を考えればいいですね。
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【指先の速度をいかに速くするか】
指先の速度を上げると考えるとき、
遠心力を最大限に活かすためにテイクバックを大きく取り、
「とにかく腕をぶん回してリリース」
のイメージが強いかもしれません。
確かに腕を伸ばして投げればそれだけ遠心力も大きくなります。
ただ、気持ちと裏腹にいくら腕のふりを大きく速くしても
「すっぽ抜け感」
が強くなることのほうが多いです。
スパイラルが乱れることも多くなります。
指先を速く動かす上で一番効率的なのは腕を大きく振ることよりも肘を上手く使って
「腕をムチのように使うこと」
だと思います。
腕をムチのように使う動きについて急遽ブログを書きました!
当ブログ内で書いていましたが、独立したブログにする価値アリの内容だと感じました。
上記の文章と若干被っているところがあります。ご了承ください。
このブログを読んでいただければ腕をしなやかに使って指先の速度をあげる方法がわかると思います。
読んでる時間がない方へ。
要約すると、
腕を肩から振り回して投げるのではなく、
肘から先をリラックスしてムチのように使ってボールを投げることが大切だということです。
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【投球動作の中で腕のムチのような動きをどのように作り出すか】
「腕のしなりについて」
のブログの中で肘から先がユラユラする動きの感覚を得る練習方法を紹介しました。
足首・膝・股関節を軽く曲げ下半身を安定させて肩を左右にゆすり体を回転させる、椅子に座ったまま肩を左右にゆすり体を回転させる。
特に椅子に座った状態で感じやすいですが、
「体を回転させる」
は骨盤から回転していると言うより
「肩・胸周りだけを回転させている感じ」
でお腹の部分のひねりを感じると思います。
僕の感覚では肋骨のすぐ下くらいをひねっている感じがあります。
右肩が後ろに下がるときにお腹が捻られ、
捻りの反動で右肩が前に出て今度は
左肩が後ろに下がるときにお腹が捻られ、
力が蓄えられた捻りの反動で体が回転します。
この感覚が実際のスローイングの中で出せればいいです。
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実際のスローイングの中で捻りの反動を考える前に
「どうやってお腹のひねりを作るか」
を考えてみたいと思います。
右利きの場合を書いていきます。左利きは左右を逆を考えてください。
半身の姿勢から左足のつま先をターゲットに向けるように踏み出し、下半身を安定させてから骨盤を前に向けます。このとき肘を後ろに引くテイクバックの動作が同時発生しますので
「下半身は90度ひねられながら前へ」
「上半身は半身の姿勢のまま後ろへ」
と移動しお腹のひねりが出来上がります。
そこからお腹のひねりの反動を利用して肘を先行させ腕をムチのように使ってボールを投げます。
力んで投げるときや投げ急いでいるときは
「下半身は前へ、上半身は後ろへ」
の形ができにくくなります。俗にいう
「上半身が突っ込んている」
という体勢で、
気持ちが焦っているので下半身と上半身が同時に前に出ていくためお腹のひねりが出来上がらないのでひねりの反動も使えず、
結果指先の速度が上がらず
「すっぽ抜け」
になります。
余談ですが、
このブログの初めの方で紹介したChad Penningtonのスローイング動画では足を一歩前に踏み出す時に左肩を
「ターゲットと自分の中間地点に向ける」
と言っていました。これをやると上半身を後ろに残しながら体のひねりがさらに強調されますね。
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「下半身は前へ、上半身は後ろへ」
の動きを作り出す有名な練習がDak Prescottのこれですね。
よく笑いのネタに上がる動きですがすごく意味のある動きです!
下半身が回るとき、肘を後ろに引いて
「お腹の捻り」
をもっと強くしているような動き方ですね。
格好いい動きはないですが........😂
この動きで注目していほしいのは
「右腰が前に出てくる動き」
です。
この動きを真似するときよくやりがちなのが
「左の腰を横に出すようにして腰をまわす」
動き方です。
確かにこれでも腰は回りますが左腰が踏み出した左足よりも外に出てしまうため踏ん張ることができず下半身の安定感を失います。
また、スローイングの動作の核になる軸(背骨)が傾くことにもなり回転の力を効率よく使うことができなくなります。
投げ終わりに前足の小指側に体重が乗ってしまう時はおよその場合左の腰を横に出すようにして腰をまわしている証拠でバランスが悪いだけでなく球にも力が乗っていません。
ここでも大切なのは
「下半身の安定」
です。
踏み出しと同時にテイクバックして、
【下半身を安定させてから】
ひねりの反動を利用する体勢を整える感覚を身につける必要があります。
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「捻りの反動で体が回転する力」
をスローイングのどこで活かすか。
この力はテイクバックからフォワードモーションに移行する初動で役に立ちます。
「下半身は前へ、上半身は後ろへ」
と移動し下半身を安定させてお腹のひねりを作る。どっしりした前足に体重を移動しながらひねりの反動を利用してを肩を振り出す。
これが出来るとあとは腕が勝手にムチのようにしなりながらボールを投げることが出来ます。
ひねりの反動が活かせるのは
「テイクバックからフォワードモーションに移行する初動」
です。
スローイングの始めに体のひねりができていないと、この移行期に体がダラーっと動き出すので勢いをつけにくいです。
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【いかに効率良く力をボールに伝えるか】
下半身と上半身でひねりを作り出し、
ひねりの反動を利用しての腕のしなやかな動きを作るところまでたどり着きました。
あとは蓄えた力を効率良くボールに伝えてリリースするだけです。
ボールを持っている指先の話をすれば、
以前に書いたブログで
「リリースは点ではなく線で考える」
ということは重要だと思います。
このブログです。
非常に長文なのでお暇な時に読んでください。
要約するとリリースは一点集中ではなく、
ボールを持っている指が一本ずつ離れ始める時点から最後に人差し指が離れるまでの距離があり、
「リリースは40cmくらいの線で考える」
というものです。
体軸回転や腕のムチのような動きで蓄えた力をリリースの40cmをかけてボールに伝えるという考え方です。
ボールに触っている時間が長い分力をかけやすくコントロールも定めやすくなります。
以前見た動画でQB道場の道場長の新生剛士さんとIBM Big BlueのQB政本悠紀くんが話している中で
「人差し指をカーテンレールに沿って動かしてる感じ」
と言っていたのがまさにその感覚だと思います。
カーテンレールをピッと弾くのではなく、
ザーッと押し出す感じはまさに肘から先でボールを押し出す
「リリースの40cm」
に通じる感覚です。
ちなみに
「ピッと弾く感じ」
は手首のスナップを聞かせている感じに似ています。
これを体の横ではなく体の前で決められるとボールをコントロールしやすくなると思います。
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アメリカンフットボールはボール自体が大きく
「しっかり握る感じ」
が強いのでどうしても手先に意識がいきがちで投げる時もボールを持った手が先行しがちになりますが、
指先の動きを最速化するムチの動きを出すにはやはり安定した下半身の上でひねられた体の反動を利用して
「ボールを肘で引っ張るかたち」
を作りだし、
腕がムチのようにしなる感覚とタイミングがつかめたらその感覚とタイミングを崩すことなく少し積極的に手首に力を加えてあげるとスパイラルが綺麗に強くかかり、球速も上がります。
力を入れるタイミングが少しでも狂うとムチの動きはなくなってしまい
「力任せだけどすっぽ抜けの腕投げ」
になり球速は落ちます。
肘から先には、
ユラユラと揺れる動きのタイミングを大切にしながら力を補助的に加えるイメージで練習してみたらいいと思います。
勢いのついた腕にストレスがかからないようにフォロースルーをしっかりとってあげる意識も大切になってきます。
僕がブログで紹介する投げ方は
「体に無理のない怪我をしにくい投げ方」
でもあり、
「無理がないからパフォーマンスが上がる」
という考えの元に書いています。
少しでも楽しく速いボール投げたいですよね!
今回はこのへんで。
ありがとうございました。
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次回はオフシーズン企画第三弾
「QBのスローイング より遠く!」
です。
ディープボール、ロングパスを決めるのもQBの醍醐味のひとつですよね。
今回の【よりはやく!】の内容を活かした形で書いていきます。
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【お知らせ】
とある有名スポーツサイトから相互リンクのご相談を受けました!
非常に光栄です。近々リンクを貼らせていただきます。