英語で
「Pre-snap Read」
そのまま訳して
「スナップの前の読み」
ですね。
ハドルで作戦を決め、
ハドルがブレイクして所定の位置にセット、
いざプレーが始まるのですが、
セットするときにQBがやっているお仕事が
「Pre-snap Read」
です。
スクリメージラインについたQBがまわりを
きょろきょろ見回しているシーンを見た
ことがあると思いますが、何をやって
いるんでしょう?
今回はそのあたりを紹介してみたいと
思います。
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前回のブログ
の中で、
「いろいろな状況の中で得られた情報を
元に最適と思われる作戦を選択する」
という旨の文章を書きました。
「最適な作戦を選んだんだから、
そのままプレーすればいいんじゃないの?」
とお思いの方もいらっしゃると
思いますが.............
プレーを開始するぎりぎりまで、QBは
「このプレーコールでよかったかどうか」
を考えています。
「このプレーコールがよかったかどうか」
を確かめるのが
「Pre-snap Read」
です。
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「Pre-snap Read」
でQBが見ているのは、
「オフェンスとディフェンスの相性」
です。
特に、
「ディフェンス体型」と
「ハドル内で選択したプレー」
の相性を見ています。
僕のブログの中でよく使う図を元に
例を挙げて説明しますね。
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※画像はウィキペディアより。
ハドルの中で、
「右プロI 右オフタックル オンワン」
とプレーコールしたとします。
「右プロI」
は図の赤い丸のオフェンスの体型、
「右オフタックル」
は、センターからスナップを受けとった
QBが、一番後ろにいるHBにハンドオフ
して、右のオフェンシブタックルの外側を
走るプレー、
このプレーを
「SET HUT!」
でスタートするプレーコールです。
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「右オフタックル」をコールしたQBとして
一番気になるのは、
「右オフェンシブタックル(以下、右OT)
周辺のオフェンス・ディフェンスの
力関係がどうなっているか」
です。
上の図を見ると、
オフェンスの体型
「右プロI」
で、右OTのすぐ右横にはタイトエンド
(TE)がいます。
ディフェンスは
「4-3(フォー・スリー)」
と呼ばれる
ディフェンシブラインマン(DL)4人
ラインバッカー(LB)3人
の体型で、両側にコーナーバック(CB)、
セイフティ二人は深い位置にセットして
います。
ストロングサイド(TEがいる側)の
セイフティ(SS)が若干前にセット
しています。
右OTの正面にディフェンシブエンド
(DE)が位置し、TEの前には
ディフェンシブラインマンはいません。
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ランプレーの場合、
「第一線を越えられるかどうか」
がまず重要ですので、
オフェンス・ディフェンスの
「ラインマンの力関係」
がまず気になるのですが、上の状況では
オフェンスのほうが優位に見えます。
正面に誰もいないTEは、
DEを軽くチェックしたあと、
第2線に控えるラインバッカー(LB)を
ブロックしにいけます。
直接LBをブロックに行ってもいいですね。
さらに、二人いるランニングバックのうち、
QBのすぐ後ろにいるFBはブロック役に
なるのでさらにオフェンスの優位性が
上がります。
右ワイドレシーバーが右コーナーバックを
ブロック、
プレーブックのデザイン通りにすべてが
うまく機能すれば、ディフェンスの
一番右上にいるストロングセーフティ(SS)
につかまるまで前進することが出来ます。
FBがSSをブロックできればロングゲインして
「タッチダウン!」
の可能性もありますね。
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上の説明どおりであれば、
ハドルの中で
「右オフタックル」
をコールしたQBは、スクリメージラインに
ついて
4-3のこのディフェンス体型を見ただけで
「このプレー(右オフタックル)、
いけるんじゃない!!」
と判断できます。
プレーを始める前にすでに
「勝負に勝っている」
と思える瞬間です。
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上の「右オフタックル」は
プレーを始める前にすでに
「勝負に勝っている」
と思えるプレー選択ですが、
逆にプレーを始める前に
「ダメだ、こりゃ!」
と思うときもあります。
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例えば、ハドルの中で
「右ダイブ」
を選択したとします。
「右ダイブ」
はQBのすぐ後ろにいるFBにハンドオフして
センターと右オフェンシブガード(右OG)
の間を走り抜けるプレーです。
ちなみに、センターとガード(OG)の
隙間をAギャップと呼びます。
もうひとつちなみに言うと、
ガードとタックルの隙間をBギャップと
呼びます。
「右ダイブ」
では、右Aギャップ周辺のオフェンスと
ディフェンスの力関係が気になるのですが、
この図のディフェンシブタックル(DT)は
右ガードのやや内側に位置し、
Aギャップを半分ふさぐようにセット
しています。
おまけにもう一人のDTは左Aギャップを
半分ふさぐような位置にいますね。
このディフェンス体型に対して
Aギャップへの
「ダイブ」
はかなり成功率の低いプレーです。
プレーを始める前にすでに
「勝負に負けているな」
と感じてしまう瞬間です。
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まあ、Pre-snap Readは
「仮想の勝ち負け」
ですので、このあとプレーを始めると
「現実」
を突きつけられ、
「いける!」
と思ったプレーがダメだったり、
「ダメだ、こりゃ!」
と思ったプレーが上手くいったり。
「人間がやること」
は思い通りにいかないから面白かったり
しますね!
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「Pre-snap Read」
で気をつけなければならない大事な
要素のひとつは、
「目線」
です。
人間は本能的に
「気になるところを見る習性」
があります。
「ダイブ」をコールすればAギャップが
気になります。
「オフタックル」をコールすれば
OTの外側が気になります。
「右レシーバーへの決めうちパス」
をコールすれば、
右レシーバーとそのルートが気になります。
これはQBだけの話ではなく、
レシーバーもコールされたルートを
目で追ったり、
ランニングバックもコールされた穴
(ギャップ)を見たり。
優れたディフェンスのプレーヤーは
オフェンス選手の目線を見て、
「Pre-snap Read」
し、次のプレーを予測します。
「あっ、今、左Aギャップを見たから
左ダイブかな?」
とか、
「右のディープゾーンの見てるから
ロングパスかな?」
とか。
QB以外の、フィールドにいる選手はみんな
「Pre-snap Read」
していますね。
僕は性格の悪いQBなので、逆にその目線を
利用してプレーと関係ないところを
見てたりもしていましたが(笑)
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ディフェンス選手の目線も注意ですよ!
僕は、ミドルラインバッカー(MLB)の
目線を見て、何度かブリッツを見破った
ことがあります!!
見破ったつもりで、外れたことも
多々あります(笑)
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目線で相手にプレーを悟られないように
するにはどうしたらいいか?
それには
「Pre-snap Read」
を決まった手順で行うことでです。
パスプレーであれ、ランプレーであれ、
必ず決まった手順で
「Pre-snap Read」
することです。
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僕に限らずですが、大半のQBはまず
「セイフティーがどういう配置か」
をチェックします。
セイフティが一人なのか、二人なのか、
深さはどうか、位置しているのは
真ん中か、右よりか、左よりかなど。
これによって、投げるパスルートの
だいたいの絞込みが出来ます。
ランプレーであれば、ブロックの指示を
変えたり出来ます。
このあとは、QB各個人にやり方があると
思いますが、僕の手順(ルーティーン)は
1.セイフティ
2.左コーナーバック
3.左OLB、MLB、右OLB
4.右コーナーバック
5.右ディフェンシブエンド、DT、左DE
セイフティを見たあと、
CB,LBをチェックするために左から右に、
DLをチェックするために右から左に、
目線を送り、体型と同時に
ディフェンスのバランス・レベレッジを見たりします。
3.と5.のLBとDLは同時に見たりもします。
この手順を2回くらい繰り返します。
こんな感じで、見る手順を決めておけば、
目線でプレーを読まれることを防ぐことが出来ますね!
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実はディフェンスを見ると同時に
オフェンスのアラインメントも見ています。
たまに、プレーコールの言い間違いで
ストロングサイドが逆だったり、
単に他のプレーヤーが間違っていたりすることがありますね(笑)
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今回はランプレーを引き合いに出しながら
「Pre-snap Read」
を紹介しましたが、当然、パスプレーでも
「Pre-snap Read」
します。
パスプレーに関しては、
Pre-snap Read同様、
「Post-snap Read」
も紹介したいので、
もうちょっとパスオフェンスや
パスディフェンスに関することを
書いたのちに紹介しますね。
今回は、この辺で。
ありがとうございました。
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『イベント決定!!』
2019年7月7日(日)、山口県山陽小野田市の
コミュニティカフェWAKAYAMAで、
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関西学院中・高・大で活躍、毎日放送、GAORAの解説
でもおなじみですね!
詳細は追ってお知らせいたします。
ぜひ会場でお会いしましょう!
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毎月第2・第4月曜日
21:00~22:00!!
アメリカンフットボール応援ラジオ番組
「山口で、アメリカンフットボールを盛り上げよう!!」
にレギュラー出演しています!!
こんなに面白いのに、いまいちよく理解
されていないアメリカンフットボールを、
面白おかしく、
「居酒屋のおっさんトーク」
的な感じで語る一時間!!
山口県山陽小野田市のコミュニティラジオ局
「FMさんさんキララ」
からお届けしています!!
インターネット放送で、日本中・世界中
どこからでも聴くことが出来ます!!
よろしくお願いいたします。
https://fmplapla.com/fmsunsunkirara/
このアドレスからアクセスできます!!
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私が出演させて頂きしました
映画「形のない骨」
(2018年7月公開 by エレファントハウス)
のDVD発売とレンタル開始です!
4月24日同時リリースです!
田中英二役で出ております。
(メインキャスト紹介欄参照)
昨年夏に公開されたのですが、
DVD付属の小冊子に、キャスティングの
裏話などが書かれています。
監督は
「CM界の『女性美の魔術師』」
と呼ばれている小島淳二氏。
長く、資生堂のCMを担当されていた
方です。
NHKの「わろてんか」の
タイトルバックのCGや、
フジテレビ「ボクらの時代」
のオープニングタイトルバックCG、
最近で言えば、米倉涼子さんの
アサヒビールのCMだったり、
ドリカムのMVなんかもやっている方です。
小島監督のその他の作品、
こちらのサイトからご覧いただけます。
よろしくお願い致します!
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他にも、こんな作品に出ています。
フェリーの上で英語を喋っている変な
おじさん役です!
これには
「自殺志願のサラリーマン」役ででてます!
これらもよろしくお願い致します。
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次回は、
「QBのお仕事 オーディブル」
について書いてみたいと思います。
「Huddle」
「Pre-snap Read」
をしながらいざプレーを開始.........のはずが、
「ダメな気がする.........」
と言うときもあります。
今回の本文の中で、わざとらしくスルー
していましたが(笑)
「ダメだ、こりゃ!」
と思ったときにするのが
「オーディブル」
です。
次回はこの
「オーディブル」
について書いてみたいと思います。