「あきらめる」
というとネガティブなイメージがありますね。
「あきらめたら終わり」
「ネバーギブアップ!」
という言葉もあるくらいです。
たしかに、
試合の要所要所でことあるごとにあきらめていると最終的には試合に負ける、ということになります。
ただ、状況によっては
「次につなげるためにあきらめる」
というポジティブなあきらめ方が必要なときもあります。
今回は後者の、
次につなげるために、という意味での
「(ポジティブに)あきらめること」
について考えてみたいと思います。
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QBがポジティブにあきらめる(?)と言ってすぐに思い浮かぶのは
「投げ捨て」
ではないかと思います。
QBがレシーバーが取れないところにボールを投げているシーンを見たことがあると思います。
ドロップバックしながらレシーバーを探しますがみんなカバーされていて投げるところがなく時間が過ぎていく。
時間が経つとラッシュが迫ってきて焦る。
「なんとかしたい!でもダメだ😣
ダメだけどロスは避けたい」
というときに行うのが投げ捨てです。
「ダメだけどロスは避けたい」
最悪を避けるという意味では、
QBとしてポジティブにあきらめる行為です。
ダウンは失いますがプレビアススポットから次の攻撃を開始できます。
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ポジティブにあきらめる投げ捨てにはメリット・デメリットがあります。
メリットは大きく考えると次の2つです。
1.ラッシュから逃げ回り大きく後退しても投げ捨てることでプレビアススポットから次のプレーを始めることが出来る。
プレビアススポットとは投げ捨てしたプレーが始まった位置のことです。
例えば2nd and 8のプレーでさんざん逃げ回って投げ捨てした場合、次の攻撃は3rd and 8で始まります。
ショットガンの場合QBはセットの段階ですでにLOSから5ヤード下がっています。
そこからドロップバックして、ラッシュから逃げ回っているうちにあっさり10ヤードくらいは後ろに下がることがあります。
例えばファーストダウン10ヤードの攻撃でラッシュに追い回されて捕まってしまったのがLOSの後方10ヤードだとしたら次の攻撃は
「セカンドダウン20ヤード」
です。20ヤードゲインするのは大変ですよ!
投げ捨てが上手く出来れば、
ラッシュに追い回されて10ヤード下がったとしても次のプレーはプレビアススポット(投げ捨てしたプレーが始まった地点)からの攻撃になりますので、
「セカンドダウン10ヤード」
になります。
投げ捨てで10ヤードゲインした?
とも言えなくもないですね😁
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2.時間が止まる
「投げ捨て=パス不成功」
ですのでゲームクロックが止まります。
試合終盤、追いかける状況で時間が1秒でも惜しいときレシーバーがあくまでじっくりまったり無駄に動き回って時間を消費するよりも、パスを失敗させて時間を止めることのほうが有益なことがあります。
残り時間が10秒あれば組み立てによっては3プレーくらいはできると思いますのでここでの1秒は非常に貴重です。
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投げ捨ての特殊なケースとして
「スパイク」
というのもありますね。
スナップして受けたボールを即座に地面に叩きつけます。
今や当たり前のようにやりますが、
「時間を止めるためだけにやるパス不成功」
ですのでパスであってパスではない、という意味ではやはり特殊というべきだと思います。
最近はスパイクをインターセプトしようとするDLが増えてきているので注意が必要ですね😁
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【投げ捨てのデメリット】
投げ捨てにはデメリットもあります。
ひとつはわざとパスを不成功にしてプレーを終わらせますのでダウンをひとつ失います。
まあ、普通に
「パスインコンプリート(パス不成功)」
と考えればいいのでデメリットとはいいにくいかもしれません。
もうひとつ、これもデメリットと言っていいのかどうか分かりませんが投げ捨ては反則と隣り合わせで
「インテンショナル・グラウンディング」
という反則になることもあります。
インテンショナル=意図して、故意に、
グラウンディング=パス不成功にする
という意味です。
ラッシュに追い回されてさんざん逃げ回った挙げ句適当にパスを投げて不成功にすればまた元の位置からプレーをやり直しとなるとディフェンスとしては納得いかないですね。
だからここにルールを設けて、
パスを投げた方向にレシーバーが誰もいなかったらそれを
「インテンショナル・グラウンディング」
という反則行為にします。
インテンショナル・グラウンディングはプレビアススポットから10ヤード罰退または反則地点から次のプレー開始、かつ、ロスオフダウン(攻撃権を一つ失う)の重罰です。
パスを不成功にして無理やりプレーを終わらせた挙げ句罰退も食らいますのでオフェンスにとってはかなりの痛手です。
もしエンドゾーン内で行えばセイフティを取られ相手に2点献上することにもなります。
例外的に、
QBがタックルボックスの外に出て投げた場合は投げた先にレシーバーがいなくても反則にはなりません。
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投げた方向にレシーバがいるかどうか、
以外にもうひとつ、
「投げたボールがスクリメージラインを越えなければならない」
というルールもあります。
適当にチョロッと投げてもダメ、ということです😁
もし投げ捨てたボールがサイドラインを越えてアウトオブバウンズに出た場合は、
サイドラインを越える時にスクリメージラインを越えてなかったとしても地面に落下した地点がスクリメージラインを越えていれば反則になりません。
インテンショナルグラウンディングを説明している動画を添付しますので見てみてくださいね。
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投げ捨て、できますか?
投げ捨ては
「パス不成功になるように投げるパス」
です。
パス不成功になるように投げる...........🤔
普段の練習ではフリーのレシーバーを探してパスが成功するように投げる練習をしますよね。
投げ捨てはレシーバーがいる方向に
「パス不成功になるように投げる」
ので、普段の練習とは違う、ある意味逆のことをやるわけです。
決めようと思ってもなかなか決まらないパスですが😁、不成功になるように投げるのもけっこう難しいです😁
基本的に練習でやっていないことは出来ませんのでそういう意味では投げ捨ても練習する必要があります!!
まずはLOSを超えるパスを投げること!
ロールアウトしてタックルボックスの外に出ていればあとは投げるだけです。特に問題ないですね。
タックルボックス内から投げるときは必ず
「パスを投げる方向にレシーバーがいること」
ここに注意します。
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投げ捨てでもうひとつ注意すべきは、
当たり前のことですが、
「ディフェンダーがいないところに投げる」
もしくは
「ディフェンダーが取れないところに投げる」
ということです。
投げ捨てしたボールがディフェンダーに向かって飛んでいくことはたまに(よく?)あります😁
人間は目線を向けている方向に意識を集中させる習性がありますので
「あのディフェンダーがいるところには投げたくない!」
と思ってずっと見ているとボールはそこに飛んでいきます!
ゾーンのシームに投げ込むように、
「ディフェンダーの隙間」
を探すといいですね。
また、飛球時間を考慮し
「ディフェンダーが追いつけないところ」
に投げることも大切です。
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【投げ捨て以外のあきらめ行為】
投げ捨て以外にもQBが諦めて行う行為がありますね。
すぐ上の写真のようにラッシャーに追い回されて捕まりかけた状態で自らつぶれる、というのはひとつのあきらめ行為ですね。
ラッシュに捕まりそうになりながらパスを投げたことがあるQBも多いのではないかと思います。
多いのではというよりQBであればみんな経験していると思います。
「なんとかしたい!諦めたくない!」
と逃げ回りながら最後の最後までチャンスを狙いたくなる気持ちはありますが、
結果としておよそろくなことが起こりません!
無理やり投げたパスがインターセプトされることはよくありますし、
さらに最悪の事態としてはインターセプトさせたボールをエンドゾーンまで持っていかれる
「ピック6」
に繋がることもあります。
インターセプトやピック6などの最悪の事態を避ける意味では
「あきらめる=自らダウンする」
も一つの選択肢として非常に重要です。
これが出来ると出来ないとでは大きな違いがあります。
無理して投げると怪我につながることもありますね。
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投げ捨て、自らダウン以外に、
ラッシュに追い回されている状態でQBができるあきらめ行為は
・ポケットプレゼンス
・スクランブル
ですね。
「ポケットプレゼンス?」
と思った方もいらっしゃると思います。僕もこれをあきらめ行為に含めるかどうかちょっと迷いましたが、
「元々のプレーデザインをあきらめる」
という意味で軽度のあきらめ行為と考えることにします。
例えばショットガンから3歩下がってワンヒッチして投げるプレーでパスプロの隙間からラッシャーが漏れてきて自分に襲いかかろうとした場合まずはラッシュをかわす必要がありますのでこの時点で元々のプレーデザインが狂います。
元々のプレーチャートでデザインされたタイミングとは変わってしまいますので
「元のデザインをあきらめる」
ことになります。
最小限のステップでラッシュを交わしますが、それでも逃げ切れない場合はポケットを離れ後ろか左右に逃げながらパスターゲットを探します。
まあ正直なところ、
ラッシュから逃げるポケットプレゼンスは想定内でまだデザインの範疇と考えることもできます。


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ポケットを離れて逃げ回りながらもパスターゲットを探し、それでもパスが投げれないときは
「パスをあきらめて走る=スクランブル」
にでます。
段階的に、
ポケットプレゼンスでラッシュを交わしながらレシーバーを探し、ポケット内の状況を見て
「こりゃぁダメだ😣」
と判断した時にスクランブルします。
マンツーマンディフェンスであればQBの前が大きく空いている可能性がありますので有効です。
スクランブルの見切りのタイミングは
「QBが走れるかどうか」
によっても変わります。
足に自信があるQBは見切りが早いかな、と思えることがありますね。
「もう少し我慢してもいいんじゃない?」
と思うこともありますがQBそれぞれの特性に合わせたタイミングでいいと思います。
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今回は
「あきらめること」
というちょっとネガティブなイメージの言葉をタイトルにして書いてみました。
あきらめることはけしてネガティブではなく
「次につなげるためにポジティブにあきらめる」
ということであればやってもいいと思います。
「あきらめる」が出来る・出来ないが試合な行方を大きく左右することもありますね。
レシーバーにパスを通すことだけでなく、
「レシーバーに通らないパス」
もしっかり練習しましょう😁
今回はこの辺で。
ありがとうございました。
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全国的にオフシーズンですね。
試合に追われるシーズン中と違ってじっくりと自分と向き合う時間が取れます。
オフシーズンの入口は弱点克服、動作改善など時間がかかることに取り掛かる絶好のチャンスです。
ということで次回は、
オフシーズン企画として僕の本職(?)のスローイングについて、
QBのスローイング
「下半身が大事って本当ですか?」
と題して書いてみたいと思います。
ちょっと全国のコーチを敵に回しかねないタイトルですねぇ...........
コーチは口を揃えて
「下半身が大事!」
と言いますが、
「ホントのところどうなのよ?」
というところに切り込んでみたいと思います。


