「超絶技巧!明治工芸の粋」展 | Thinking every day, every night

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三井記念美術館で、2014/4/19~7/13まで開催されている特別展「超絶技巧!明治工芸の粋」に行ってきました。
三井記念美術館HP 特別展ページ

チケットと図録(図録には個々の作品の解説付き)
明治工芸の粋_チケット明治工芸の粋_図録


■会場の様子

場所は東京日本橋。三越本店の隣、商業施設COREDO室町の向かいにある三井本館の7Fです。
館内は、高級感溢れつつも決して華美に走るわけでもなく、落ち着いたシックな雰囲気が充満していて、好感がもてました。
この会場の雰囲気と今回の展示の内容とがまさにベストマッチングだと思いました。

連休中の5/4(土)のお昼時に入場したのですが、ほとんど混みあうこともなく、観覧客も大半が物静かな年配の方々だったので、落ち着いて見て回ることができました。

■今回の展示の意義

京都・清水三年坂美術館に所蔵されている、いわゆる「村田コレクション」から、明治工芸の超絶技巧による精緻を極めた作品百数十点を選りすぐって展示する企画です。

清水三年坂美術館は、村田製作所の専務だった村田理如氏が会社を辞して2000年に設立した美術館です。

村田氏は1980年代後半たまたま立ち寄ったニューヨークのアンティークショップで明治工芸としての印籠に出会い、その収集の意義に目覚めます。
超絶技巧の粋を極めた明治工芸のほとんどは、万国博覧会などを通じて輸出され、長らく海外のコレクターが所蔵していたそうで、村田氏はそれらをオークションなどを通じて積極的に買い戻し、この四半世紀のうちに総数約1万点を超す膨大なコレクションを築き上げました。

なお、今回の特別展は、前期(~6/1)と後期(6/3~7/13)に分けられ、一部の展示が入れ替わりますが、刺繍絵画の11点を2回に分けて展示することになっているようです。

■感想

三井記念美術館の広々とした展示室7室を贅沢に使って、七宝、金工、漆工、薩摩、刀装具、自在、牙彫・木彫、印籠、刺繍絵画といった様々なジャンルの明治工芸品を効果的にインスタレーションしていました。

私ははっきり言って、工芸品についてそれほど興味もなく、この展覧会についても「ちょっとした目の保養」くらいにしか考えていなかったのですが、世間の評判に違わず、まさにその想像を超える「超絶技巧」に驚愕の連続でした。

下は安藤緑山の「竹の子、梅」という作品ですが、実物をどう見ても筍そのものでした。
これが牙彫、すなわち象牙の彫り物だというのですから驚きです。
この写真ではわかりにくいですが、竹の皮の先端部分の絨毛みたいな部分の質感など思わず溜息が出るほどです。
安藤緑山という人は弟子をとらず世間との交流も好まなかったため、これらの作品が実際どのようにして創作されたのか、よく分かっていないそうです。
安藤緑山_竹の子、梅

下は、正阿弥勝義の「古瓦鳩香炉」という金工の作品です。
鳩と古瓦とで、あえて質感を変えるとともに、瓦の中に小さな蜘蛛を配して、それを狙う鳩との間で緊張感を生み出しています。写真ではよく分かりませんが、この蜘蛛も細部まで決して手を抜かず、リアルさを再現しています。
正阿弥勝義_古瓦鳩香炉

下は普通の滝の絵に見えますが、実は微細な糸を使った刺繍絵画です。
作者不詳の「瀑布図」という作品ですが、滝のしぶきまで実にダイナミックに表現しており、やはり嘆息をつかずにはいられませんでした。
無銘_瀑布図

下は、「自在」と呼ばれる工芸品で、体の一部を自由に動かすことができるよう、複数の小さな金属製のパーツを組み合わせることで全体の作品を構成しています。
これは明珍の「」という作品ですが、頭から小さなしっぽの先まで約260個もの鉄製の円筒形のパーツでできていて、それこそ自在にとぐろを巻くことができるそうです。
明珍_蛇

ここに挙げたのはほんの一部で、他にもルーペで覗いても見えないような小さな蝶々で一面埋め尽くされた七宝の器とか、やはり緻密で正確な渦巻紋様の施された漆工作品など、驚嘆の作品が目白押しです。

よく日本人の手先の器用さとかミクロの技術の質の高さが言われますが、こうやって実物に接すると、それが単なる比喩や概念でなく実感されますね。

もちろん、これら工芸品も単なる「超絶技巧」というだけでなく、芸術的にも優れているからこその価値だと思います。

たとえば、下の作品は並河靖之七宝作品で、「鳥に秋草図対花瓶」という作品ですが、技術もさりながら、花瓶に描くこの奥ゆかしい構図そのものに美を感じますよね。
並河靖之_鳥に秋草図対花瓶

以上、大満足の観覧でした。

※なお、三井記念美術館サイトの以下のページから割引引換券を入手でき、入場料が100円割引になります。
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