私の音楽遍歴(16)〜TULIP /財津和夫 | Thinking every day, every night

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今回は、私の人生の支えになってくれた、いわゆる「本流」アーティストのひとり(グループ)を取り上げたいと思います。
TULIP、あるいはそのリーダーであり、主要作品のほとんどを作詞作曲した財津和夫です。

■TULIPのプロフィール

・アマチュア時代 (1970-1971)
1969年ごろ、福岡にて西南学院大に在学中の財津和夫が中心となって、ザ・フォーシンガーズというアマチュアバンドを結成。
1969年にはヤマハ主催の第3回全日本ライト・ミュージック・コンテストのフォーク部門で6位入賞。グランプリに赤い鳥が輝き、オフコースがフォーク部門2位となった年。
その後、バンド名を「TULIP」に変更し、1970年には第4回全日本ライト・ミュージック・コンテストのフォーク部門で2位に輝く。
・第1期 (1972-1979)
メンバーは、財津和夫、吉田彰、安部俊幸、上田雅利、姫野達也。
1972年に上京。『魔法の黄色い靴』でメジャーデビューを果たす。
翌1973年に出した3枚目のシングル『心の旅』が大ヒット、一躍スターダムにのし上がる。
その後も「青春の影」、「サボテンの花」、「虹とスニーカーの頃」などヒット曲を連発し、その名を不動のものにする。
・第2期 (1980-1985)~第3期 (1986-1989)~現在
その後、メンバーの出入りが何度かあり、最後はオリジナルメンバーが財津和夫だけとなり、1989年に解散。財津和夫は本格的にソロ活動に入る。
その後、何度か旧交を深めるように短期の再結成を繰り返しながら現在にいたる。


■私とTULIPとの出会い

私が最初にTULIPに触れたのは、まさに日本版「フォークソング」がテレビを通じて全国のお茶の間に広がり始めた1970年代初頭、私がまだ中学生になりたてのころのことでした。

彼らと同年代かそれに近い若きテレビ・ラジオ制作者たちが、熱い情熱を持って、まだ開花するかしないかの新進気鋭のアーティストたちの活躍の場をテレビやラジオの音楽番組としていくつも提供し、後の「ニューミュージック」の礎を築いた「黄金時代」でした。

そんな番組のひとつに(今となっては何という番組か分かりませんが)TULIPも「将来性のある」「一部で注目されている」バンドとして出演していました。

他にどんなアーティストが出演していたかも定かではありませんが、たしかその番組に出演していたアーティストの中で今でも記憶に鮮明に残っているのが、五輪真弓「少女」、井上陽水(演奏曲は不明)、猫「地下鉄に乗って」などと並び、TULIP「魔法の黄色い靴」でした。

五輪真弓の「少女」や井上陽水には痛く感動した記憶がありますが、TULIPの「魔法の黄色い靴」は、感動とか衝撃というより、突拍子もない空想的な詞をひとつの観賞すべき音楽作品として成立させる音楽性・芸術性を高さへの驚きでした。
当時の私は小学校の音楽で5点満点中万年2点しかとれない音楽の素養のかけらもない中学生坊主でしたが、直感的に豊かな音楽性を感じたがゆえ、今でも鮮明に記憶にとどまっているのだと思います。

■その後の私とTULIP

気になる存在となったTULIPですが、彼らが同じ福岡県出身であることも、親近感につながったかもしれません。

福岡から上京してメジャーで成功したグループとしては草分け的存在で、後に海援隊やクリスタルキング、CHAGE & ASKA、チェッカーズ、175Rなどなどに続く足跡を残しましたが、彼らの博多弁丸出しのいかにもアマチュア・バンド然とした雰囲気が、何とか応援してあげたいという気持ちを起こさせたところはあったと思います。

その後、ほどなく、TULIPは「心の旅」のメガヒットで一躍人気ロックグループとして名を上げることになります。
中学生の私は、なけなしの小遣いをはたいて、このシングル盤を買いました。当時、B面の『夢中さ君に』の方が気に入った記憶があります。


■TULIPの魅力

昔から私の「良い作品」の基準は明快で、「作家志望だった私の創作欲・創造欲を否応なく奮い立たせてくれて、書かずにいられない状態にさせてくれる作品」というもの。
そういう意味で、TULIPの作品は恒常的に私の心を大いに奮い立たせてくれた数少ないアーティストのひとりといえます。

ボーカルとしての財津和夫の男オトコした朴訥として少し濁りのある声は好き嫌いもあり評価の別れるところとは思いますが、TULIPの最大の魅力は何といっても財津和夫の生み出した作品そのもののオリジナリティ溢れる音楽性の高さでしょう。

TULIPといえば、デビュー当初からビートルズへのリスペクトを臆面もなく表明し、ビートルズのコピーバンドを称して憚りませんでしたが、クリエーター財津和夫の才能はそこにとどまるものではありませんでした。
彼らにかかればビートルズナンバーでさえオリジナルとは別次元のTULIP色に塗り替えてしまいます。

財津和夫の紡ぎだすメロディーラインの美しさは、たとえばTULIPの名曲として名高い「青春の影」が、BGMやInstrumentalなど純粋な音楽として世間のさまざまなシーンで使われていることからもよく分かります。

当ブログの過去記事を紹介しておきます。
→『TULIPのライブ放送、過去の音楽体験、そして音楽雑感』(2003年2月26日)


■おすすめの作品

◆いわゆる代表作

最初に挙げる3作品は、必ずしも私がBESTと思う作品たちではありません。あくまで世間的な代表作ということで…
ただし、いずれも名作であることに間違いはありませんね。

♪「心の旅 ★★★★☆
これはあまりにメジャーになりすぎて正直、聞き飽きてしまいました。名曲ではありますが、いくら名曲でも聞き過ぎると飽きてしまう好例。
この作品で初めてボーカルを姫野達也が担当し、メガヒットを記録したため、以降、TULIPのメインボーカルは姫野達也が担うことになります。

♪「青春の影 ★★★★★
これは掛け値なしの名曲。

♪「サボテンの花 ★★★★☆(ライブ)
この曲を比較的最近になって知ったひとは、おそらく5thアルバム『無限軌道』所収のオリジナルではなく、財津和夫がソロで歌う大ヒットドラマ『ひとつ屋根の下で』の挿入歌として知った人が多いと思います。
私はもちろん「オリジナルで知った」派。当時はお気に入りの作品でしたが、世間であまりにも繰り返し放送されるうちに、もうたくさんと思うようになってしまいました。
高校の卒業生を送る会で、在校生がこの曲を歌った記憶が今も鮮明に残っています。


◆とびきり大好きな作品たち

♪「生きるといふこと ★★★★★
※リンク先のDisc02の8番目にあります。
決して「代表作」とはいえませんが「隠れた名曲」として一部に高く評価されています。
財津和夫の歌声が不調でちょっと残念なので、再録音してほしかった。

♪「心を開いて」 ★★★★★
この心地良く刻むリズムと人生に立ち向かう前向きの詞とがマッチして、心を自ずと高揚させてくれます。大好きな作品です。

♪「ぼくがつくった愛のうた ★★★★★
この作品はグリコ「ポッキー」のCMソングとして有名になりました。その後もキリンビバレッジ「午後の紅茶」のCMでも起用されていますし、「サボテンの花」同様、ドラマ『ひとつ屋根の下で』の挿入歌でもあります。
姫野達也の爽やかなボーカルはTULIPのかけがえのない財産だと思います。

♪「風のメロディ ★★★★★
※ごめんなさい。最近の再結成時の音源しかありません。
姫野達也のメインボーカルと財津和夫のサブボーカルのツインボーカルの絶妙のかけあいと劇的な音楽性、そしてひと夏の思い出から秋の喪失へと至るストーリー性とが聴く者の心をぐりぐりと揺さぶってくれます。

♪「娘が嫁ぐ朝 ★★★★★
年老いた男が今は亡き妻を思いながら、嫁ぐ日を迎えた娘を送り出すというストーリ性のある感動作。
28歳の若さでこの老成した詞を紡ぎ出し感動巨編としてまとめあげた力量に驚嘆した記憶があります。

♪「セプテンバー ★★★★★
財津和夫のこういうさっぱりとした、しかし叙情性をしっかり湛えた小品が大好きです!

♪「ある昼下がり ★★★★★
この作品も上の「セプテンバー」同様、小品ながら私の心の琴線をビンビン震わせてくれるとても素敵な作品です。


◆まだまだあるよ!

♪「虹とスニーカーの頃 ★★★★★
これも大ヒット曲。これでTULIPの魅力を知った人も多いはず。
「わがままは男の罪」「それを許さないのは女の罪」という歌詞が男尊女卑をイメージさせるということでハナから受け付けない人々もいるようです。おそらく「男のわがままを認めないのは女の罪」と言っていると解釈しての反発なのでしょうが、おそらく財津和夫にそんな意図はなく、「わがままは女の罪」「それを許さないのは男の罪」と言ってもよく、男と女は互いに傷つけ合うというくらいの意味でしかないと思うんですけどねえ~

♪「私の小さな人生 ★★★★★
TULIP最初期の作品のひとつ。独りで生きていく覚悟を決めた芸術家の孤独な魂を描いた、財津和夫 渾身の作品です。このような作品を紡ぎだす財津和夫に共感と同族意識を感じたのを覚えています。

♪「魔法の黄色い靴 ★★★★☆
すでに書いたように、TUILIPのデビュー曲であり、その後のTULIPのエッセンスをすでに包含している音楽性の高い作品だと思います。

♪「悲しみはいつも」~
 「僕は陽気なのんきもの」~
 「笑顔をみせて」メドレー
 ★★★★☆
このメドレーはよくコンサートで演奏するナンバーになります。
なかでも「僕は陽気なのんきもの」が私のお気に入りです。

♪「悲しきレイン・トレイン ★★★★★(再結成後ライブ)
「心の旅」につながる詩情を湛えた作品ですね。

♪「夏色のおもいで ★★★★☆
「心の旅」ヒット後に出したシングルです。前作がたいへんなヒットになったので、これをリリースするのはたいへんだったろうと思います。
名作とまでは思いませんが、ドラムの効いた若者らしい爽やかな楽曲です。

好きな作品はまだまだたくさんありますが、この辺にしておきましょう。


◆番外編

♪「ともだちのあなただから ★★★★☆
これ、財津和夫がファルセットで歌っているんですよね。とてもやさしい、とても女性っぽい作品でとても大好きな小品です。

♪「切手のないおくりもの ★★★☆☆

NHKみんなのうたで有名になりましたね。TULIPというよりソロ財津和夫の作品です。
個人的には特に興味のない作品ですが、教科書に掲載されたりして、意外に好きな人が多いみたいなので、一応挙げておきます。

以上です。