午前2時半の男 | Diary

Diary

The way I am…

タッタッタッタッ、行ったかと思うと、しばらくしてまた戻って来て、ハァハァハァ-

夜中、窓の外の足音に急に目が覚める。

緊迫した息づかいに不穏な空気を感じ、何か事件か?と思って、思わずベッドの横の時計を見る。

午前2時半。明け方というにはまだ早すぎる時刻。

なんだろう?と胸騒ぎがしたが、そのまま、またウトウトと眠りに落ちた。

 

 

数日後、またあのタッタッタッタッ、ハァハァハァ-で目が覚める。時計を見ると午前2時半。その息づかいから足音の主はたぶん男だ。

 

image

 

なんだろう?

あれかな?と思いつつ、その後何度も同じ時刻に目覚めては、ベッドの中でタッタッタッタッ、に耳を澄ましてきた。

 

最近、タッ、タッ、タッ、が鈍くなり、後に続く息がヒィーッ、ヒィーッ・・・ハァーッ、ハァーッと尋常ではない、まるで心臓が破裂しそうな、今にも飛び出しそうな程苦しそうなものに変わった。

 

ベッドで聞いていても、その喘ぐような息づかいに息の主の苦しさが伝わって、こちらまで苦しくなる感じがした。

 

冬の寒い夜には、ぬくぬくとしたベッドから抜け出す気には到底ならなかったが、この時期、薄い夏掛けをサッとはらって、今日こそは主の正体を確かめよう!と思い切って、タッタッタッの通り過ぎた後のエレベーターホールを見に行ってみた。

 

 

思ったとおり、そこには台車に積まれた新聞の束があった。午前2時半の足音の正体は朝刊の新聞配達だった。

 

なーんだやっぱりそうか。そうだろうと思ったんだよね。(笑)


「午前2時半の男」ショート・サスペンスでした(笑)前置きが長過ぎてすみません。m(_ _)m

敬老の日が近いので、関連した話題です。


- -



 全世帯ではないにしても、エレベーターを使いながらでも、十数階あるフロアを移動しながら、できるだけ早く朝刊を配るのは重労働だと思う。特に夏の暑い時期は心臓破りの仕事だったのだろう。ここが終われば、また次のマンションへ行くのかもしれない。

 

新聞配達といえば、普通は門の横の郵便受けに、集合住宅の場合は集合郵便受けに投函のはず。

 

 

ところが最近は、集合住宅でも各戸の玄関先の新聞受けまで配達するサービスがあるらしい。

 

朝のコーヒーの湯気にインクも新しい新聞を開く楽しみ

 

image

 

その裏にはあのヒィーッ、ヒィーッ、ハァーッ、ハァーッがある・・・なんて皮肉を言うつもりはない。

 

(因みに、私は古新聞回収が面倒くさくて、電子版購読だが・・・(^_^;))

 

高齢者世帯や、体が不自由で階下の郵便受けまで取りに行くのが大変な世帯、幼い子どもを抱えた世帯には有難いサービスなのだと思う。有料なのかどうかも知らないけれど・・・

 

福祉やソーシャル・サービスといった現場では、何処も少なからず、あのヒィーヒィー、ハァーハァーに似た重労働に支えられているのだろうなと、ふと思った。しかし、そういう現場で働く人達の賃金は、重労働に見合わない位に低いとも聞く。

 

ベッドの中でぬくぬくしながら、あの喘ぐような息にそんなことを思って、暗い気持ちになった。

 

翌朝のTVニュースを見ていて、台風の被害に遭われ、避難所に避難して帰宅できない高齢者の方々の、取り残されたような不安気な表情に共鳴した。

 

災害という特別な場合でなくても、自分の身にも地域からの孤立ということが将来起きるかもしれない。独居老人、孤老という言葉は珍しいものではなくなっている。

 

超高齢社会の日本、人口減少で若い世代が減っている日本。このまま日本人だけで行こうとすると、支えるより、支えられる人の方が多い社会になる。

 

私が高齢者になる頃には、ヒィー、ヒィー、ハァーハァーしながら新聞を配達してくれる人はいるのだろうか?

 

もしくは、ロボットがサービスを代行してくれるまでにAIやロボット工学は発展するのだろうか?産業化されるのだろうか?

 

これからも自分がなんとか地域と繋がって、孤立しないで生きていけるために、今から何を、どう備えたらいいのか。

 

誰かに代行してもらうサービスを利用するにも、お世話になる施設に入るにも、先立つものはお金、いや人との繋がりも大事。

午前2時半の男が、労働に見合う賃金を得られて、これからも頑張る気になれる社会であって欲しいとも思う。

自分のことであり、これからの社会の問題でもある。真剣に考えないといけない。

 

今朝もどの家にも新聞は無事届いているのだろう。私もとりあえず朝刊を読ん新しい情報をインプットしよう。

 

- -

 

朝夕めっきり涼しくなりました。どちら様もお風邪などひかれませんようにご自愛ください。

 

image