阿弖流為 | Diary

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The way I am…

シネマ歌舞伎「阿弖流為 (あてるい)」を観ました。

 

 
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市川染五郎さんがカッコいい!(≧∇≦)
 
脚本の中島かずきさん、演出のいのうえひでのりさん、市川染五郎さん三人のタッグによる化学変化で生じた"熱"を感じました。
 
冒頭の舞いのシーンはシルクロードの映画「楼蘭」を彷彿とさせ、両花道での阿弖流為と田村麻呂の見得と言い、ノッケからゾクゾクと引き込まれます。
 
衣装が素敵!
堂本教子さんという舞台衣装家の方が担当されています。この方の色彩と素材使い、デザインがとっても素敵です!
 
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御霊御前(右端)は、「恋に落ちたシェイクスピア」のジュディ・ディンチ?と思いましたが(笑)
 
阿弖流為のインディゴのデニムの衣装がヒーローの若々しさ、荒々しさを際立たせていて斬新で、とっても好きでした。染五郎さんに似合ってました!
 

 
メイクも歌舞伎とは全然違います。
 
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シャキーンの刃音といい、立ち廻りのスピード、花道を走っちゃう躍動感、どれも歌舞伎とは違います。
 
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中村鶴松さん
 
 
中島かずきさんの脚本は、歴史の教科書にも載っている「平安時代に坂上田村麻呂が征伐大将軍として東北征伐をした」という史実を細かく分析されて、その一文に秘められたドラマを大きく膨らませて見せてくれます。
 
朝廷側と征伐される"蝦夷"の民の運命に、蝦夷のヒーロー阿弖流為と田村麻呂の男同士の友情や、朝廷側(権力)と制圧される蝦夷(弱者)の対立、正義と悪、それだけではない人間の真実などが絡んでストーリーの展開にグングン引き込まれていきます。
 
人間のエゴと自然破壊、異なる価値観による民族紛争など今日的なテーマも考えさせられます。
 
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最後、阿弖流為は田村麻呂(=朝廷側)に敗れたのか?屈することで蝦夷の未来、北上の自然を田村麻呂に託した…田村麻呂もその信頼に応えようとした。敵ながら男同士の信頼の絆、そう思わせる最後でした。
 
 
制圧する側とされる側、正義と悪の構図になりがちな中で、両方を行ったり来たりする蝦夷の"蛮甲" という人物がいて、印象に残りました。
 
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片岡亀蔵さん
 
生き残る為には正義なんかよりも、どっちに付くのが得か?が判断基準の男で、平気で味方を裏切りもしますが、純粋一途の阿弖流為や田村麻呂にない清濁併せ持つ性質のために、邪悪な魔術の危機もくぐり抜ける強さもあります。
 
人間の真実のようでもあり、自分の組織には入れたくない人物ですが、"生き意地"という芯がブレないところに、何故か羨望を感じる人物でした。
 
 
「阿弖流為」は、舞台の両花道、スッポン、セリ、書割、回り舞台、ツケの音、見得という歌舞伎の要素をふんだんに使って、役者が全員歌舞伎俳優で女優なしという、歌舞伎の「枠」を存分に使いこなしながら「枠」から飛び出してもいるもの。
 
舞台という「枠」の制約があるからこそ守られているとも言えます。
 
歌舞伎NEXTと名付けられていますが、歌舞伎という「箱」に入れて分類するのがいいのか、新しいジャンルの演劇なのか迷います。
 
見終わって、興奮と共に様々な思いを感じながら冊子を読むと、演じた歌舞伎俳優さん達が皆さん、歌舞伎役者としての誇りを持ち、常に歌舞伎を意識して演じていたことがわかりました。そしてここで得たものを歌舞伎に持ち帰りたいとも。役者さん達の歌舞伎マインドと誇りが非常に強くて、これはやっぱり歌舞伎なのかなと思いました。
 
ファンとしては嬉しいですが。
古典と新しいものが、両輪になってこれからも歌舞伎を前に進めて、ワクワクを与え続けてくれるのが一番なので。
 
生の舞台は物凄い熱気だっただろうなと思います。しかしシネマでしかできない演出 (人物のアップとか)も観られて感動でした!
 
 
市川染五郎さんは阿弖流為について20年以上も前に知り、自身で資料を集めたり東北に旅行したりして調べたそうです。阿弖流為について知るほどに彼の人間像に惹かれ、ずっと想いを温めていたそうです。
 
2002年に劇団☆新感線と「アテルイ」を演じて以来2度目の「阿弖流為」。
 
過去に十八代目・中村勘三郎さんと数々の新しい歌舞伎を創られ、今も古典歌舞伎を演じられる中で、古典では表現しきれないものへの抑えきれない思いや、歌舞伎の未来への情熱が今、染五郎さんを走らせ、全ての思いを「阿弖流為」に昇華させたように感じました。
 
 
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勘三郎さん二世の中村勘九郎さん、中村七之助さんと一緒に汗迸らせて、舞台を駆け回る染五郎さんの「Shout❗️」
歌舞伎が生きて進化し続けているのを感じました。