サッカーの日本代表MF中村俊輔選手(31)にとって、ワールドカップ(W杯)南アフリカ大会は雪辱の舞台となる。直前に風邪をひき、実力を発揮できなかった前回ドイツ大会から4年。今年2月には、もう一つの夢だと公言してきたスペインリーグでのプレーを志半ばにして、万全の状態でW杯を迎えるために横浜F・マリノス(横浜M)に電撃復帰した。サッカー人生の集大成に向かった息子を、父・博之さん(63)と母・イリ子さん(58)はそっと見守り続けている。
4歳のときに、やると決めたサッカー。以来、寝ても覚めてもサッカー漬けの息子だった。
中学時代は名門・横浜Mジュニアユースに所属。全体練習が終わっても、照明が消える午後10時近くまでボールをけった。桐光学園高校時代には、自主練習のため午前6時30分に起床。7時に家を出るまでのわずかな時間、朝食をかき込みながら、博之さんが試合で撮りためたビデオテープをチェックした。
両親ともに、サッカーは全くの素人。父は帰りの遅い息子を迎えの車で待った。母は栄養士から学んだ料理の腕を振るい、身長が伸びないのを気にする息子に「打ち出の小づちでも振ってあげようか」と言って和ませた。
中村選手が欧州に活躍の場を求めたのは、2002年。W杯日韓大会代表に落選した、すぐ後のことだった。息子から、泣き言を聞いた記憶はない。さらなるステップアップを期したとはいえ、歴史も文化も、言葉も違う環境での生活。「練習を頑張ったご褒美に、お風呂に入浴剤を入れよう」「(イタリアの)田舎で娯楽施設もないから、雑誌は1週間かけて1冊を読もう」。報道で伝えられる息子の姿に、母は思わず涙をこぼしたこともある。
「ようやく、メンタルも体調も、いい感じになってきたよ」。今月10日、珍しく、中村選手の家族経由で南アフリカから近況報告が届いた。不調を伝える報道が続く中での、朗報だった。
「弱音は絶対吐かない子でした。意志の強さと覚悟があった」とイリ子さん。父は「これまで、一試合でも手を抜くことはなかった。W杯は年齢的にも最後。万全の状態で試合に出てほしい」と願う。
14日のカメルーン戦では、先発落ちも伝えられる「背番号10」。両親は「経験が大事になるときもある。日本の勝利に俊輔が貢献できれば、うれしい」と、横浜市内の自宅から、遠い南アの地に声援を送る。
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両親ともに、サッカーは全くの素人。父は帰りの遅い息子を迎えの車で待った。母は栄養士から学んだ料理の腕を振るい、身長が伸びないのを気にする息子に「打ち出の小づちでも振ってあげようか」と言って和ませた。
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