事業再生の現場では当面はキャッシュがとにかく必要なため、経費削減や財務リストラ等の短期のリストラ実行が重要になる。これで当座のキャッシュを創出し、コア事業の事業基盤を整備する。

特にフィナンシャル系の再生スペシャリストに多いのだが、これで事業再生と捉えている節がある。中にはそもそもこここまで会社の状況が悪くなる会社であり、業界であるためトップライン向上などそもそも無理で検討に値しないと考えているものもいる。

当たり前だが、企業はゴーイングコンサーンであり成長なくして存続できない。要はトップライン向上はテクニカルに進められるコストカットと違って業界知見や現場オペレーションへの洞察・理解なくしてできないため、言い逃れとして先のような考えとなっているのだと思う。

事業再生はコンサルティングの総合格闘技だ。事業、財務、税務、法務とあらゆる側面に通じていないといけない。戦略コンサルが不慣れな税務、法務面にも通じるよう研鑽するように財務スペシャリストも事業面に大いに関わるべきだ。
円高の進行が止まらない。クライアント企業の業績悪化を、ひいては案件の減少をリアルに懸念してしまう。企業再生案件は景気が悪くなると増加すると思われているが、一面正しいが一面誤解がある。

企業再生には一定の時間が必要である。銀行から見た正常債権先となるには早くて1年。平均すれば3年は必要。余りに急激な景気悪化は再生に必要な準備時間を奪ってしまうため、一気に倒産となってしまう。

民事再生、会社更生といった法的整理になるとコンサルの出番は激減し、弁護士と会計士で手続きは進められることがほとんどである。となると、私的整理手続きでないとファームの出番がない。

しかし、これだけ急激な円高となると業績悪化のスピードが加速し、銀行の債権回収スピードが速まり、企業再生ではなく企業解体が始まる。要は回収できるうちに早めに回収しておけという論理だ。いわゆる貸し剥がしである。特にメインバンク制のある日本ではメインバンクの考え方で企業解体となる可能性がある。

企業再生ファームは、メインバンクの短期的な自己都合の債権回収を図るのではなく、中長期的な債権回収策としての企業再生のあり方を啓発していくことも必要と感じる。