伝統的筆跡鑑定法では鑑定ができないことをさんざん述べているが,今回は致命的な欠陥についてわかりやすく解説したい。

 

様々な鑑定は,大きく分けて以下の2つの検体によって全く鑑定方法が異なる

①偽造が100%あり得ない検体

②偽造の可能性を払拭できない検体

 

①血液型や指紋,DNAなどは,人の意思によって変えることは100%不可能である。よって,調査する箇所はどこの特徴点を指摘しても全く問題とはならない。

 

②有価証券,ブランド商品,絵画,紙幣,骨董、筆跡など,人が関わって製造される(書かれる)ものは偽造の可能性を払拭できない。このような検体は,調査する箇所はどこでもよいとしてはならない巧みに模倣を施されているので本物と見分けがつかない箇所が圧倒的に多いからである。つまり,偽造の可能性を含む鑑定を行う場合には比較ポイントを明確にしなければならないのだ。

 

下記は,商品券の真正券と偽造券の比較ポイントである。

    ※JCBグローバルサイトより抜粋

例えば,上記の商品券を鑑定する場合,調査する特徴をどこでもよいとすると「デザインが類似(整合)」「銀の帯が類似(整合)」「JCBのロゴが類似(整合)」「裏の説明書きが類似(整合)」など,ほとんどの特徴が一致してしまう。したがって,この商品券を「伝統的筆跡鑑定法」のような手法で鑑定を行うと「真正券」と誤鑑定されるのである。このブログでさんざん述べているように,巧妙に偽造を行う者や組織が存在しているのである。もちろん,筆跡も同様に人の筆跡を真似て書く達人が存在しているのだ。

 

お分かりの通り「伝統的筆跡法鑑定法」は,指摘する特徴の箇所は鑑定人の裁量に委ねられている。つまり,指摘箇所はどこに決めてもよいのだ。即ち,無数にある特徴の中から,鑑定人の勝手な裁量で決められた僅かな指摘箇所を「類似・非類似(整合,不整合)」に分類し,その数の多い方に軍配を上げるという,どう見てもインチキ鑑定法としか思えないものである。

 

賢い方は気づいていると思うが,この手法は「偽造は100%あり得ない」という前提に成り立つ鑑定法なのだ。しかも,この鑑定法で「偽造の可能性を払拭できない検体」を鑑定すると,似せて作られた模倣商品は類似(整合)する結果となり大多数が真正と結論されることになる。だから,伝統的筆跡鑑定法では似せて書かれた筆跡は,ことごとく真筆という結果となっているのだ。このことは当ブログでも散々述べているのでバックナンバーを参照いただきたい。

 

この鑑定手法が半世紀以上も何の疑いも持たれずに行われている。裁判所では,この鑑定手法によって書かれた鑑定書が証拠として提出されても何の問題にもなっていないのだ。何しろ、伝統的筆跡鑑定法で鑑定を行う鑑定人を数多く裁判所が選任しているのである。

 

私は,この鑑定法は犯罪検挙の功績を挙げている「指紋鑑定」の鑑定手法を,よく考えもせずに「筆跡鑑定」に応用した警察研究者の大失態ではないかと思っている。

 

筆跡鑑定は「偽造の可能性を払拭できない検体」による鑑定法でなければ鑑定ができないのである。直ちに,「伝統的筆跡鑑定法」を禁じなければ偽造をやったもの勝ちとなり,善良な方が不幸になる可能性がどんどんと増加し続けるのである。

 

弁護士の方へ

当ブログ内容は,伝統的筆跡鑑定法に対する反論に使用しても構いません。使用の際はご一報いただければ幸いです。