<まとめ範囲>
・「ふたりの魔人 その1」~「その10」まで
[概略]
・死を超えた者の心情
集落での戦いを経て「死を超える力」を手に入れた征司は、行き先を馬に任せて自らは「死を超える力」がどういうものかを確認する作業に入る。
彼が得た「死を超える力」は不老不死ではなく、生物の証たる「体内の循環」を再度復活させることができる能力であることを認識する。
さらに、若い精神には困難な「自らの弱さを100%受け入れる」という作業も並行して行い、生きていることを喜ぶとともに成長を果たした。
・恭一の誤算
「傀儡の王」によって認識を操り、征司のもとからミュゼを引き離した恭一だったが、彼女が異能に関しては何の適性もなく、さらに魔法に関しても
「親が教育を怠っていたせいで赤ん坊レベル」
でしかなかったことを知ることとなる。
ミュゼは征司の精神に多大なダメージを与える存在であるため、恭一としては切り札に近いものと考えていたのだが、大きな誤算となった。
征司がレブリエンタ家領に入ったのを知らされると、恭一はカッシード家の「剛弓のゼリオン」を刺客として放つ。
巨大な弓と大矢を操るゼリオンとその部隊vs征司の戦いが開始された。
・禁忌と森
レブリエンタ本邸地下のとある部屋へやってきた恭一は、そこにある禁忌「貪りの杖」としばらく同じ時を過ごす。
そこでようやく落ち着きを取り戻した彼は、ミュゼの代わりに「貪りの杖」を有用なカードとして使っていくことを考えるようになる。
一方、ウェルクローシュの森では征司とゼリオンの戦いが繰り広げられていた。
槍のような大矢と飛ばしてくるゼリオンに、征司は前進を阻まれてしまう。
どうにかして突破しようと試みるが、偽魔バアルの透明化を使っても居場所を特定されてしまい、ゼリオンの能力の謎が深まる結果となってしまった。
・ゼリオンたちの事情
「剛弓のゼリオン」はカッシード家の者であり、レブリエンタ家に併呑された側の者である。
だが「傀儡の王」で操られているわけではなく、カッシード家当主を人質に取られているために、言うことを聞かざるを得ない状況だった。
一方、ゼリオンがなぜ自分の居場所を特定できるのかという謎に、征司は「ゆるい風の中を動くモノを感じ取れるのではないか」と自分なりの解答を発見する。
しかしそれはすぐに間違いだとわかり、正解が出る前に征司は森を抜けることとなった。
眼前に見えるゼリオンへ突撃する征司。
だがゼリオンもそれを予測しないわけがない。
大弓から大矢へ糸のようなものが伸び、それは突然巻き上げられる。
放たれたものが今度は征司の背後へ引き寄せられる形となり、それは彼のすぐそばで収束して爆発するのだった。
・「魔人」なのに悪逆非道じゃない
爆発は、ゼリオンの必殺技「ペトラテュス:ヴェシテム(槍襲撃:爆裂陣)」だった。
しかし魔手によって征司は無傷。
これで決めてやろうと征司が走り出す中、ゼリオンはあっさりと降参する。
自分の首と引き換えに部下は助けろという彼に、征司は「なぜ森の中にいる自分が見えたのか」を問う。
ゼリオンは「体がはらむ熱い風」を、感覚的に見ることができる能力を持っていた。
その解答を得た征司は納得し、ゼリオン以上にあっさりと戦いを放棄する。
それに加え、森の中で会戦した時に殺してしまった兵士たちをも復活させていた征司は、ゼリオンたちに彼らの救助に向かうといいと知らせてやる。
かくしてゼリオンとの戦いは犠牲者なしで終わり、征司はさらに奥のステッパー前庭へ向かうのだった。
・「緋色のアドラクシア」
ゼリオンを突破された恭一は、今度は「緋色のアドラクシア」を刺客として送り込む。
恭一はまだ、征司が「死を超えた」ことを知らないため、ゼリオン戦の報告を受けても詳細を完全に把握することができなかった。
それを彼は「征司が偽魔の能力を使っている」と判断し、めくらましの類が通用しないアドラクシアを使うことで、その詳細を知ろうと判断する。
アドラクシアもゼリオンと同じく、カッシード家当主を人質にとられているせいでレブリエンタ家の言うことを聞かされていた。
ただそれとは別に、友人である「麗剣のシャルー」の行方がわからなくなっており、それについても心を痛めていた。
目の前の仕事をまずは片付けなければと、征司の動向を部下に探らせるアドラクシア。
しかしここでとんでもないことがわかる。
・ゼリオンとアドラクシアの裏切り
なんと、征司の行動が琴線に触れたらしく、ゼリオンが征司とともに行動するようになっていた。
友人であるゼリオンの「お前も来い」という言葉に、アドラクシアもあっさり了承してしまう。
征司がレブリエンタ家の禁忌(貪りの杖)を狙っているわけではないことを知り、ゼリオンとアドラクシアたちがカッシード家当主のためにいやいやレブリエンタ家に使われていることを知った両者は、行動をともにすることとなる。
恭一がいるレブリエンタ本邸への道を塞ぐ大扉を突破し、彼らはついに本邸へと到達する。
一方その頃、役立たずとして恭一に軟禁されることになったミュゼは、恭一の役に立てなければ自分の存在意義はないと部屋からの脱出を試みていた。
そしてベッドの下の脱出口から部屋を出た彼女は、地下へ向かう。
そこに何があるのか、彼女はまだ知らない。
・対峙の舞台は謁見室
征司たちがついにレブリエンタ本邸にやってきた。
「貪りの杖」がある間で落ち着いたはずの恭一は、ここでまた冷静さを欠く言動をするようになる。
魔人エンディクワラにそれを指摘されるも、すぐに平静を取り戻すことはできなかった。
恭一は人質としているカッシード家当主を謁見室につれてくるように、使用人に指示を出す。
征司たちは逃げ惑うレブリエンタ家の警備兵を捕らえ、恭一とカッシード家当主が謁見室にいることを知る。
そこへ向かった彼らは、行方不明になった「麗剣のシャルー」の体が恭一の体として供されたことを知る。
さらに征司は、恭一の「らしくない脅迫」を不思議に思うのだった。
・圧倒する征司、激昂する恭一
らしくないちゃちな脅迫から、征司は違和感を覚える。
現状が「かつて恭一が真田夫妻にしてやられた状況と似ている」と考え、違和感の正体を探り始める。
やがて「傀儡の王」の弱点である人数制限という点から何かに気づいた征司は、カッシード家当主が人質に取られていることも構わず行動を起こす。
それよりも一瞬早く、恭一はカッシード家当主の首にナイフを入れる。
だが征司は恭一を魔手でカッシード家当主から遠ざけた後、「死を超える力」を使ってその死をなかったことにした。
未知の能力に恭一は驚愕する。
そしてその隙に征司は彼の幻影を打ち破り、本物の恭一を見つけ出すことに成功した。
魔手と同じく、赤黒く染まる征司の瞳。
恭一に経験させられてきたすべてが彼を成長させ、今やその力は圧倒的な強さを誇るに至る。
人数制限、そして解除に時間がかかるという「傀儡の王」の弱点に、征司はついに気づいた。
恭一の時間稼ぎはすべて、征司を操るために必要な「ひとり分の空き」を作り出すための時間稼ぎだった。
征司の力は圧倒的だったが、恭一を即座に殺すことはなかった。
そしてついに今度は恭一が「ひとり分の空き」を手に入れてしまう。
それも狙っていたという征司に、恭一は全力の「傀儡の王」を放つ。
すべては光の中に消え、誰も何も見えなくなってしまった…
以上が今回のまとめとなる。
そして物語は新章へと続く…
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