やはりこの世に“映画(ドラマ)の神様”はいるようで……(;^_^A、先日たまたま仕事が早番で帰宅したところ、そのタイミングで始まったのがCS・時代劇専門チャンネルの『隠密・奥の細道』第21話「炎に甦る女の涙」! 何を隠そう、『こんな学園みたことない!』の一条寺さやか先生こと奥田圭子の主演の回だ。すでに以前番組そのものは録画していて、ざっとは観たんだけれど、うろ覚えの場面も多いので、この機会にじっくり観賞させてもらったよ(;^_^A(以下の記事は番組のネタバレも含みます)

 

 この『隠密・奥の細道』とは、「伊賀出身の松尾芭蕉は、実は公儀隠密で、『奥の細道』の旅は旅行に名を借りた密偵だった」っていうある種の“都市伝説”を逆手にとって、彼らを本当の公儀隠密3人が護衛しながら、その土地土地で反幕陰謀に立ち向かっていく、という内容の時代劇ドラマだ。で、今回の話は、一行が謎の武家女にことごとく命を狙われ、『奥の細道』でも有名な芭蕉の弟子の曽良が重傷を負う、というところから物語が展開していく。公儀隠密の六郎太と芭蕉・曽良を襲った武家女が格闘中に落とした短刀に、地元の名家・桜木家の家紋が入っていたことから、彼女は火事によって妻ともども命を失った大聖寺藩の国家老・桜木頼母の娘・美代ではないか、と六郎太は推測する。その美代は、両親の死後、勘定奉行の稲葉左馬介に引き取らていたが、のちの密偵によって、それは世を忍ぶ偽りの美談で、藩の財産を不正に着服していたことを桜木頼母に見つけられた左馬介が、配下の杉本・平井を使って桜木夫妻を殺害、家に火を放った挙句、口封じのために美代を引き取った事実が判明する。哀れ美代は、親の敵に半ば“拉致”された上、催眠術によって操り人形となり、法螺貝の音色によって意識を失って刺客となったり、左馬介の夜伽の相手をさせられたりという過酷な運命を強いられていた。

 

 彼女の意識を取り戻すことが、左馬介たちの悪事を暴く手っ取り早い手段と考えた六郎太は、一計を案じ、杉本らのアジトから巧みに美代を連れ出すと、紅蓮の炎を無理やり見せることで強引に両親を奪った火事の夜の記憶を呼び戻させる。そんな荒療治で全てを思い出した美代は、親の敵に手籠めにされたことをはかなんで、一度は短刀で自らの命を断とうとするが、すんでのところで六郎太らに止められる。彼女の口からことの真相を知った公儀隠密の六郎太・音丸・お蝶の三人は、左馬介の屋敷に忍び込むと、左馬介・杉本・平井の3人を一網打尽に、そして一刀両断に斬り捨てて、美代の復讐と共に藩に巣食う悪の根を見事に断った。

 

 

 この第21話「炎に甦る女の涙」に登場する武家女・桜木美代こそ、我らが奥田圭子の役どころだったのである。この回は、まさに彼女が主人公といっても過言ではない回で、父の敵に操られて図らずも刺客として利用される悲劇のヒロインを、実にバラエティに富んだキャラクターぶりで見事に演じきっていた。特に法螺貝に誘われて意識を失う時の虚ろな表情は、彼女のあのぱっちりした円らで大きな瞳だからこそ演じたり得た役作りだったと思う。また虚ろな表情から正気に戻るときのギャップの演技や、全てを思い出し、それまでの所業に思わず涙し、勢い自害をしようとするまでの一連のシーンはかなり胸に迫る迫真の演技だった。そして左馬介によって夢うつつのまま手籠めにされるシーンでは、着物の間から見え隠れする、スレンダーな両足が印象的だった。本当にスレンダーなのだ。もっとも左馬介がことに及ぶすんでのところで、タイミングよくCM前のアイキャッチ(場面転換)が入ったため、設定はともかく少なくとも映像的には彼女の“貞操”は守られたわけだヾ(- -;)ヾ(- -;)

 

 それと、催眠状態にある時の彼女の身のこなし、剣劇には目を見張るものがあった。まるで往年の梶芽衣子(『女囚さそり』の松島ナミ)を彷彿させるような、鮮やかな短剣さばきだった。まさに八面六臂の活躍! アクションヒロインの面目躍如である。それも武家のカチッとした着物姿で演じるんだから、カッコイイったらありゃしない(;^_^A 

 

 本作の公儀隠密は、六郎太にまだ初々しい頃の佐藤浩市、音丸に当時既にドラマ界の重鎮だった国広富之、そしてお蝶役に、いい意味で一番脂がのっていた頃の萬田久子がそれぞれ務め、なかなかいい味を出していた。対する悪役・左馬介役には『ウルトラマン』ハヤタ隊員こと黒部進が抜擢されていて、その悪辣ぶりと末期は、ウルトラファンにとってトラウマものだったよ(;^_^A 左馬介の配下の杉本には、出てるだけで「こいつはきっと悪役」って思わせてくれる坂田雅彦がキャスティングされ、怪しげな山伏姿で期待にたがわぬいつもの粘液質な小悪党ぶりを遺憾なく発揮していた。

 

 

 他にも、美代を尾行するお蝶が、杉本らの罠(トラップ)に嵌って危うく命を奪われそうになる“ヒロピン”シーンもちょっぴりながらきちんとあって、作り手の過剰なまでの“確信犯的なファンサービス”ぶりがうかがえて微笑ましい(;^_^A 苦悶の表情を浮かべてもがく萬田久子の姿はなかなか艶っぽかったし……ヾ(- -;)ヾ(- -;) まだ表の主人公である松尾芭蕉役に、この人以外適役はいないであろうともいうべき中村嘉葎雄、弟子の曽良に「金ドン」の“ワル男”こと西山浩司がそれぞれキャスティングされているのも実に的を射ているし、しかもこの回は、芭蕉をかばって美代に斬りつけられた曽良が、その身を案じた芭蕉の提案で、一人江戸にもどる、というターニングポイント的な回でもあった。

 

 本作に限らず、1980年代のテレビ東京では、この種の良質な活劇ドラマが多数制作放映されていたようで、これらの番組をオンエア時に観賞できなかった、ネット局を持たない広島人の私にとっては不覚の極みだ。どれだけテレ東の視聴可能な地域に住んでいる人を羨ましく思ったものが………ヾ(- -;) そんなわけで、今こうしてCSをチェックしながら“30年の遅れ”を取り戻そうと、必死になっている(;^_^A

 

 ところで、ここから極めてパーソナルな話題なんだけど…………以前本作を少々紹介した際、拙作『電光石火☆八城忍』との共通性について言及したが、今回、美代が紅蓮の炎を見ながら過去を思い起こす過程で、前回見落としていた、杉本から催眠術を施され、さらに剣術の特訓を受けるシーンがあることに気づき、ますます『八城忍』と似ているなって驚いてしまった。実は『八城忍』でも、主人公の忍は催眠術によって洗脳され、且つ拳法の特訓を受ける回想シーンが登場するのだ。それ故、『八城忍』は2016年公開の作品で、それ以前に『隠密・奥の細道』を観たことは全くなかった(テレ東が入らない地域故)が、まるで本作を観て『八城忍』を制作したかのように見えなくもないくらい共通点を感じる。それに忍も刺客として利用されそうになるし……(;^_^A

 

 

 勿論テレビ局のドラマである『隠密・奥の細道』と比べたら全く以てチープなインディーズムービーながら、いつかは観比べて頂けるようなったらいいな、って思ってしまったよ(;^_^A 奥田圭子の出身地である“広島繋がり”だし……(;^_^A