言
何に願っても
君には会えなくて
そんな日が続くと
生きてる実感さえ
消えていくんだ
週末が来る度に
期待した大きさ分だけ
心は抉られて
泣くだけの力さえ
残りはしない
夏の夜に
降り続く雨に
この心を重ねて
寝苦しさを
やり過ごしてる
小説『メリーゴーランド』*158*
恐る恐る、ゆっくりと開いたアンナの目に飛び込んできたのはケントの声だった。
「あぁ、よかったぁ。アンナが生きてるよ」
「えっ?」
意味がわからず、アンナはぼんやりと自分の回りを見た。
アンナの肩を掴み、顔を近づけているケント。その向こうにケントを抱えている父親。アンナの目の前には広い背中…そうだ、『クロワッサン』のおじさんがおんぶしてくれていたのだった、とアンナはようやく思い出した。
「あれっ?双子の赤ちゃんは?」
今さっきまで、自分に話しかけていた赤ん坊たち。
「あぁ、うちで寝てるよ」
『クロワッサン』のおじさんが顔をできるだけ後ろに向けながら言った。
「なんだ、夢か」
そう小さく呟いて、アンナはあたたかな背中に顔をうずめた。
∞つづく∞