死亡5人、入院100人超! | 一般社団法人 日本医療・美容研究協会 (JMB)

        ▲▲▲▲機能性表示食品に異原料混入か▲▲▲▲

 【ヒット商品多い、小林製薬の機能性サプリ】

 問題化したのは、小林製薬㈱が製造販売していた紅麹サプリメント「紅麹コレステヘルプ」など合計4つの食品です。これらの食品は機能性表示食品で、公に「悪玉コレステロールを下げる/LH比を下げる」と効果効能表示できるものでした。

 機能性表示食品とは、事業者の責任で科学的根拠に基づき特定の健康の維持や増進に役立つ機能性を具体的に表示・広告表現をすることができる食品のことです。機能性表示食品は安全性と機能性に関する科学的根拠を消費者庁に届け出る必要があります。届出された情報は、消費者庁のウェブサイトで誰でも確認できます。

 大手製薬会社が製造販売した機能性表示食品ということもあり、サプリメントを摂取した後に多少の体調不良があっても、原因が分からないまま疑うことなく摂取し続けた消費者の情報もあります。

 

 【メディア報道とともに健康被害者数の爆発】

 同事件で同社は3月22日、紅麹を使ったサプリメント紅麹コレステヘルプを摂取した人から腎疾患などの健康被害の報告があったとして、商品を自主回収すると発表しました。回収対象は紅麴コレステヘルプなど計4製品。対象の食品を摂取した人や、診察した医師から最初に健康被害が疑われる報告があったのは1月15日です。最初の報告から発表までに2ヶ月を要したことから因果関係の特定の難しさがうかがえます。

 3月26日「死亡との因果関係が疑われる事象」が1件あったと発表されると、連日メディア報道が過熱。数日間のうちに被害の自主申告者数が雪だるまのように膨れ上がりました。別の疾患での死者が「そういえば生前、紅麹サプリを飲んでいた」という遺族からの申告も含まれており、報道の過熱にしたがい「私も飲んでいた、具合が悪い」という被害者が続出しています。数日での爆発的被害者拡大には、繰り返し効果・恐怖バイアスの相乗作用といったメディア報道の影響の疑いもあります。

 3月29日、同社と厚労省はそれぞれ記者会見を開きました。同社は新たに1人の死亡事例を報告し死者は合計5人。健康被害を訴えた人は計680人に上り、そのうち入院中または通院を希望している人は114人とのこととです。自主回収した商品代金の全額返金、健康被害を受けた人への医療費弁済などを約束しました。原因の特定と安全性の確認を勧め、再発防止を講じているとしています。小林代表取締役社長は「社会問題にまで発展し深くお詫び申し上げる」と、被害の公表が遅れたことを含め謝罪しました。

 同社は原因物質について「プベルル酸」の可能性が高いと発表。プベルル酸は青カビから発生する物質で、腎臓に毒性があるとされています。厚労省は、同社の紅麹原料製造工場に立ち入り検査を3月30日に実施しました。

 

 【機能性表示食品を受理した消費者庁の対応】

 3月28日の記者会見で消費者庁の新井長官は、約7.000もある機能性表示食品による健康被害の有無と健康被害を情報収集する体制が整っているかを確認する質問状を事業者に送ったことを、あきらかにしました。質問状の回答期限は4月12日で、対象となるのは約1.700事業者とのことです。新井長官は、同事件について「機能性表示食品の安全性に対する疑念を抱かせる深刻な事態だ」と言及しました。

 本欄もこれまで多数の景表法違反事案をお伝えしてきましたが、そのほとんどが「企業から提出された資料に科学的根拠が認められなかった」とされて行政処分、課徴金などがくだされた事例ばかり。今回の紅麹サプリメントは皮肉にも行政が科学的根拠となる機能性を受理して、効果効能を大々的に宣伝広告させた商品でした。機能性表示食品分類の枠組みそのものに疑念が寄せられる初の事例となったことに関心も高まっています。今後の同社と行政の動向に注目です。(BELLEZZa抜粋)