インフルエンサー養成講座契約に係る紛争! | 一般社団法人 日本医療・美容研究協会 (JMB)

 都内の消費生活センターには、SNSやウェブ会議を用いてインフルエンサーを養成するための高額な講座を契約させるトラブルについて、相談が寄せられていますビックリマーク

 

 【消費者へのアドバイス】

 インフルエンサーに興味を持ち話を聞くだけのつもりでウェブ会議に参加していても、高額な契約を勧誘されることがあるので注意しましょう。勧誘時のやり取りの画面や契約書などの関係書類は必ず保存しておきましょう。事業者から「分割払いにすればいい/すぐに取り返せる」などと言われても、借金やクレジットを利用してまで契約すべきかよく考えましょう。講座などを受講しても必ず仕事や報酬につながるわけではありません。事業者から指示されても年収などを偽って、借金やクレジット契約を申し込むことは止めましょう。

 

 【紛争の概要】

 申立人:20歳代/男性

 相手方:インフルエンサー養成講座運営事業者

 <申立人の主張による紛争の概要>

 SNSのアカウントに「インフルエンサーになりませんか」というDMが届いた。興味を持ったので販売会社とウェブ会議をすると、担当者はこれまでの経歴や今後の夢を聞いたり、SNSに投稿した写真を褒めたりして「素質がある」と言ってきた。そしてインフルエンサー養成講座を受講すれば、現役インフルエンサー講師として指導するなど様々なサポートを受けられるので、フォロワー数も伸びてもっと収入を得られるようになると説明した。費用については「約80万円で高いですけど、月額だったら払えない額ではないのでは」と言われ、さらに「インフルエンサーになったら案件とかで収入も入ってくるし、貴方なら返せますよ」などと勧められて、月額約3万円/36回払いの個別クレジット契約をした。このとき、手数料を含めると総額が約100万円になるということは説明されなかった。個別クレジット契約書はクレジット会社からメールで届き、入会契約書は数日後に販売会社から自宅に郵送された。1ヶ月後、仕事が忙しくサービスを受ける時間もないため解約したいと販売会社に伝えると「止めてもお金は払い続けるんだから、続けた方が絶対にいい、忙しいなら休んだらどうか」と説得され受講を休止したが、個別クレジットの支払いは止まらなかった。

 家族の勧めで消費生活センターに相談し販売会社とクレジット会社に解約を申出たが、販売会社からは講座料金の8割は入会金となっており解約しても返金されないと言われた!

 

 【あっせん解決の内容】

 本件入会契約は、特定商取引に関する法律で規定する電話勧誘販売に該当し、支払いは個別クレジット契約が成立していますが、販売会社及びクレジット会社が申立人に交付した契約書面はいずれも法定記載事項を満たしていませんでした。よって委員会は、販売会社及びクレジット会社に対し申立人の申出によりクーリング・オフがなされたことを認めるとともに、クレジット会社には申立人による既払金の返金を求めるあっせん案を提示したところ当事者三者で合意が成立しました。

 

 【ウェブ会議を利用した契約トラブル】

 都内の消費生活センターには身近なSNSをきっかけとして軽い気持ちで参加したウェブ会議で、高額な講座やスクールなどの勧誘を受けたというトラブルに関する相談が多く寄せられています。高額な契約は多くの場合、支払い期間が長く・手数料の高いクレジット契約を勧められるため契約前に支払期間や総額を確認する必要があります。また契約書はもちろん、トラブルに備えて勧誘時のやり取りも保存することが重要です。

 

 【あっせん案の考え方、法的問題点の検討】

 <あっせん案の考え方>

 *本件は販売会社がウェブ会議サービスの招待を申立人のメッセージアプリに送信し、ウェブ会議で本件契約の締結を勧誘し契約締結へと至っていることから、特定商取引法上の電話勧誘販売に該当する。そのため、本件入会契約にはクーリング・オフ既定の適用がある。

 *本件入会契約書及び本件個別クレジット契約書は、いずれも書面の記載事項に不備があるため法定書面の受領は未だないといえ、クーリング・オフ期間は満了していない。申立人は販売会社及びクレジット会社それぞれにクーリング・オフ通知を発しており、有効なクーリング・オフがなされている。

 *本件においては三者間清算がなされるべきことになり、具体的にはクレジット会社が申立人に対し、既払金全額の返還を行うことになる。

 <その他の問題>

 *講座料金の8割を超える入会金の不返還条項は、入会金の名目で過大な違約金の取得や返還債務を免れることを可能とし、消費者契約法第9条第1項第1号、第10条に該当する可能性が高い。

 *講座料金は本件入会契約書に記載されているが、個別クレジットを利用することによる支払総額は本件個別クレジット契約書に記載されており、その段階まで申立人には情報提供されていない。クレジットを利用する場合の支払総額は実際に消費者が負担すべき総額であって、消費者が最も認識し理解すべき事項であるから情報提供の在り方として問題があろう。

 *クレジット会社には加盟店の調査・管理義務があり、販売会社の入会契約書が消費者契約法、特定商取引法の書面として適切かどうか、加盟店審査時・与信時・情報発生時などに確認する必要があった。また、販売会社が本件個別クレジット契約書に役務提供期間について記入・入力をするなどしていたのに対し、クレジット会社はそのそごに気づかず与信を実行している。

 

 【同種・類似被害の再発防止に向けて】

 <事業者に対して>

 ①販売会社に対して・・・

 *広告表示や契約時の説明文書などには、講座の具体的内容・カリキュラム・講座料金の支払総額の正確な表示など、消費者が契約締結の合理的判断ができるよう明確であることが求められる。

 *勧誘にあたっては不適切な契約とならないよう、社員教育の徹底やマニュアルの整備などをしたうえで、オンライン勧誘記録の保存など適正な勧誘行為だったが検証できる体制の構築が求められる。

 *講座料金中の入会金の割合が8割を占めるような場合、必要な費用を恣意的に入会金と授業料に振り分けることで、契約が途中で終了した場合などに、返還金をできるだけ低減する目的があると推定されてもやむを得ない。適正な費用の振り分けを設定し消費者に明示することが望まれる。

 ②個別クレジット業者に対して・・・

 *個別クレジット業者として加盟店調査を徹底し、加盟店のクレジット対象商品や契約書条項の変化に対応できるよう体制を確保するなど、適切な加盟店管理が望まれる。

 *加盟店と消費者とのトラブルに対しては、解決に向けて積極的介入をすることが個別クレジット業者への信頼と適正優良な加盟店の維持につながるものと思われる。

 <消費者に対して>

 *オンライン講座受講契約など、高額な継続的役務提供契約の締結は慎重に検討すべきである。

 *トラブルになったときに備えて、契約関係書類や勧誘の記録・保存としておくことが重要である。

 *契約時の個人情報の提供は正確に行い、事業者の指示でも虚偽の記載・申告をしてはならない。

 <行政に対して>

 *SNSなどを端緒とする勧誘行為について、電話勧誘販売に該当しうることを事業者・消費者に対して周知し、注意喚起を徹底する必要がある。未成年者取消しによる保護の範囲が狭まっていること及若年者に対して訴求力のあるインターネット取引の普及を考えると若年者向けの対策が求められる。

 *取引の電子化が進み、スマホでの契約申込と契約書交付が認められてきているが、消費者への重要事項の伝達手段としては不十分である。実態を踏まえ技術的側面からの検討も望まれる。(東京くらしweb抜粋)