東京都消費者被害救済委員会から「脱毛エステの中途解約に係る紛争」があっせん解決したと知事に報
告がありましたのでお知らせします。
【紛争の概要】
申立人(消費者) 20歳代女性
相手方(事業者) 脱毛エステサービス事業者
申立人の主張による紛争の概要
平成28年1月「全身脱毛し放題、月額○○円」という広告を出しているエステ店へ出向いた。全身脱毛を
したいと伝えたところ、契約担当者から全顔脱毛も勧められ全身と全顔の脱毛施術契約をし、個別クレジット
契約も結んだ。(クレジット支払総額423.620円・35回払い・支払月額約12.000円)全身は脱毛し放題、全顔は
12回の施術が受けられると説明された。その後、全身と全顔の脱毛施術を各4回受けたが、効果を感じなかっ
たため7月に解約を申し出たが電話しても担当者が不在であったり店まで出向くように言われたりして、すぐに
解約手続きをしてもらえなかった。
後日、中途解約計算書が送られてきたが、各施術の回数が8回として単価が計算されそのうち各4回分が
施術済みとして清算金額が算定されていた。それによれば申立人は支払済みの約6万円とは別に、約15万円
を追加で支払わなければならなかった。申立人は、施術回数について「全身は無制限の脱毛し放題、顔は12
回」という説明だったのに中途解約をすると8回分の単価で清算を求められることに納得できないと伝え、個別
クレジット契約書には全身全顔の区分なく「脱毛20回」と表示しており書面不備ではないかと申し入れたが、
店側は申立人の主張を認めなかった
【あっせん解決の内容】
全身脱毛し放題については「12回+保証料」、全顔脱毛については「12回」で単価を算出し直して提供済み
役務対価相当額(各4回分・約112.000円)を算定し解約損料の請求は認めないとする、あっせん案を当事者
双方へ提示した。提供済み役務対価相当額と申立人支払済額(約6万円)の差額(約52.000円)を、申立人が
相手方に支払うことで合意し解決した
【主な審議内容】
全身脱毛の清算について
脱毛し放題の解釈
「脱毛し放題8回完了後1年保証 役務提供期間1年間」と契約書に表示されている一方で、相手方は8回施術
後も無償の無期限・無限定の脱毛施術を約束していた。この無期限・無限定の施術は、脱毛エステサービス
の施術という社会通念上独立して経済的価値を有する役務であり、このような役務を有償と解す消費者庁の
見解に従えば、本件無期限・無限定の施術は特定商取引法上、有償取引として扱う必要がある
精算額の算定
しかし無期限・無限定として施術単価を算出すると限りなく0円となり事実上、ビジネスとして成り立たない。
そこで本件申立人の契約した脱毛し放題料金を、他の契約者が施術を受けた平均回数分(12回)の料金と
12回を超える回数の施術を保証する保証料金に分け、12回のうち4回の役務提供を受けたとして提供済み
役務対価相当額を算出することとした
全顔脱毛の清算について
全顔は全身とは異なり「8回完了後4回保証、回数8回 役務提供期間1年間」と契約書に表示されている。
相手方は4回保証について無償と扱っているが、前述のとおり有償として扱うべきであるので12回で施術単価
を算出し、提供済み役務対価相当額を算定し直した
解約損料について
特定継続的役務提供契約では、特定商取引法の規定範囲内で解約損料を定めることができ、本件契約に
おいても規約で定められていた。しかし本件では、相手方が申立人による中途解約の申し出をすぐに受け入れ
ない等、申立人の中途解約を回避するような事情が認められたことから信義則(民法1条2項)に照らして、
解約損料を認めないこととした
【同種・類似被害の再発防止に向けて】
事業者に対して
脱毛エステ広告に散見される問題点と求められる是正
脱毛エステの広告において月額9.900円/月額9.500円等とあたかも月謝制で脱毛サービスが受けられるような
表示や初月+2ヵ月目0円/今なら初月から3ヵ月分0円等と当初、数ヵ月分の施術料金が無料であるように読め
る表示がなされている。このような表示は個別クレジットによる分割払金額を役務提供料金と誤解させるもので、
特定商取引法43条の虚偽誇大広告や景品表示法5条の優良有利誤認表示に該当する可能性が高い。とりわけ
20歳代前半の若者○○個別クレジット等の分割払金の負担と脱毛エステサービスの1回分の施術料金とを明確
に区別できていない者も少なくない。○○をターゲットにする広告については特に誤解をもたらさないよう、広告
表示を改めるべきである
求められる契約書面及び概要書面の記載内容
中途解約により消費者が負担する提供済み役務の対価を算出するための施術単価が不明瞭であったり、
標榜していた脱毛し放題/無制限という契約内容を契約書面等に記載していなかったりすると、本件のような
中途解約時の清算トラブルにつながる。役務提供事業者は、特定商取引法の中途解約規定や清算方法の
表示義務の規制の趣旨をよく理解し、役務提供の実態に合わせた契約書面等を作成することが求められる
個別クレジット会社の加盟店管理義務(割賦販売法35条3の5)
広告や契約書面・概要書面に関する問題があった場合は、個別クレジット会社によるエステ事業者に対する
是正指導が必要である。特に本件では、クレジット契約書の役務提供回数欄の記載は20回とされており、エステ
事業者の契約書面や概要書面の表示と矛盾していた。個別クレジット会社とエステ事業者との十分な意思疎通
がなされていない証左と考えられるので、早急に改善がなされるべきである
行政に対して
脱毛エステサービスは、サービス内容が多様で中途解約でのトラブルも多いことからそのトラブルの内容を
分析し、繰り返し消費者への注意喚起を行うことが求められる。また、消費者に誤認を与えるような広告に対して
特定商取引法や景品表示法に基づく事業者指導を迅速に行い、場合によっては行政処分を科すことが求め
られる (生活文化局抜粋)