百円の恋 | 中迫剛オフィシャルブログ「語れり尽くせり。」Powered by Ameba

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作年末、東京での上映が始まりその評判を耳にしつつ、大阪では年始の上映開始と聞いていたので、2015年の映画始めはコレにしようと決めていた作品


まず、この映画の主人公
斎藤一子(サイトウイチコ)32歳という女性
映画のヒロインとは思えないほどのダメ人間
自堕落で、引きこもりで、出掛ける先は百円コンビニぐらい
またそのコンビニで買い物をする度に百円を募金している辺りが自己弁護に見えてイヤらしい

髪はボサボサでプリンを通り越して二色
歯は歯肉炎、体はぶよぶよでぼてぼて
そして今巷で話題のやらみそ(ヤラずの三十路)

物語はそんな最底辺女が出戻りの妹とのいざこざが原因で人生初の一人暮らしと百円コンビニでバイトをするとこから始まる

のですが

あとは、出会い、経験していくなかで変化していくってだけの簡単でほんとよくあるお話です

ただね、そのきっかけと変化がね
この映画が一筋縄ではないところなんです


まずは男女問わず初喪失、初失恋の経験てのは得てして苦いものですが
それでもこの一子の場合はあまりにも...

そんなあまりな経験をしただけに
その後、超劇的な変貌を遂げるのです

そして、その超劇的な変貌の要因こそが
ボクシングなんです!



まずそのボクシングを始める動機から絶妙なんですよね

簡単に言うと自分でも理由はよくわかんないってやつ

何気に見ててアレってどんな感じなんやろ?
やってる人に聞いても漠然とした答えしか返ってこない
それならちょっとやってみようかな

なんとなくそんな曖昧な感じ

何を隠そう僕も格闘の世界に踏み込んだきっかけは
"なんとなく"
ですから(笑)

なにかのジャンルにどっぷりいる人の
始めのきっかけは案外そんなもんだったりするんですよね

エエカッコして言えば
何かを始めるのに大した理由はいらないってこと

たいした理由なんてないんだから
「始めたきっかけは何ですか?」
なんて野暮ったい質問はしちゃいけないんですよね(笑)


あとね、ラストの試合描写もいいです
本当なら1Rで止められるレベルですが
シャドーやミットでは出来ていることが試合では思ったようにできないあの感じ
そのやったものにしか分からない歯痒くも不格好な姿が絶妙に描かれています

ボクシングや格闘描写で萎える映画やドラマってほんと無数にありますが

その意味ではこの映画はビンビンに反応しまくりです


と、ここまではリアルな部分を誉めてきましたが、映画としては非現実的です
なによりも登場人物が全員ぶっ飛びすぎている

いくら最底辺を描いてるとはいえアソコまでおかしなのはね
闇金ウシジマくんでも出てきませんし
大阪のghettoにもさすがにいないと思います
いや、おるかな?(笑)

でもそれらは多少過剰な演出もエンタメ映画として捉えればなんの問題もなく笑えます


始めは死んだ目をしていた一子が
まさに百円(チープ)なロッキーよろしく
身体と心、そしてボクシング技術が劇的に変わっていく様は音楽と相まって観ている側の気持ちも高まっていきます

そして高まった気持ちが治まらないままにクライマックスへと向かう場面で突如訪れるスローモーション演出に僕の涙腺は決壊しました


そして、自分が変われば周りは自然と変わる
そんな当たり前な日常を描きつつ物語は幕を閉じていきます


例え背中を押すものがあっても一歩を踏み出すのも、変わるのも結局は自分次第

努力や頑張りは誰しもがやっていること

それだけでは勝者にはなり得ない

簡単には自分の思った通りにはいかない

でも勝者になる為の道が開かれることはたしか

あとは辛くても挫けずに、逃げずに継続し続けられるか

そうやって頑張ったものだけに光は当たる

そんな当たり前のことを描いた映画


きっとあの悔しい気持ちがあれば一子は大丈夫だと思います

この映画を観て何を感じるかはその人次第ですが
決して勇気をくれるような類いのものではないです



最後に
この映画の主人公
斎藤一子を演じた安藤サクラさん

オーディションで勝ち取った役を

低予算、タイトなスケジュールの中
だるだるに弛みきった身体からいっぱしの女ボクサーに見えるまでに絞り上げた期間はわずか2週間

ハリウッド女優のように何十億と貰ってのアプローチではなく

そこにあるのは単なる役者魂

それを確かめに行くだけでも十二分に価値のある一本です