タイトル:恋人たちの語らい
ーーーーーー

「もしもーし、聞いてる?」


私には別に婚約者がいた。ほとんど言葉を交わすことはなかったが、しかし政治的に対立し、青春をかけて世界観を戦わせ、心は今も共にある。思い出そう。彼女との関係性の中で、凍りついた時の中で、無敵の存在であった私を。


「構ってくれないとまた暴れるお」


私の青春は彼女の想念と共にあった。世界政治の青春を励起して止揚する試み。全ての政治合理及び軍事合理を動員して、世界政治に生じた覇権国家という名の暴れ者を倒す思想的営為だ。


「お金ちょーだい」


政治力と経済力と家政力と運用力と。パワーを追求した先に現れる事象の地平線、確率変動の境界線。そこに事象の特異点として私が存在できたのは、彼女の存在が常に私を叱咤激励しまた滅ぼそうとしていたからに他ならない。彼女を私の世界観に巻き込んだ事への贖罪と、彼女の世界観が私に齎(もたら)した革命的影響を鑑みよう。ブルーグレイの世界を形作った原動力を。


「神社に出かけようよ」


そう、青年は書を捨てて街に、私は刀を承けて政治の世界に。刀は人類の決戦兵器として家政の陥穽として機能する。刀というアイテムを世界政治のグレート・ゲーム調整原理として選定した事は間違いではなかったが、私の私生活は粉々になってしまった。これはその復元、修復の旅路。


「まずどっかで食べよーよ」


世界人民の心理的飢餓感を癒す戦争類似行為の継続を世界は求めているが、私にはそれを継続していくだけの胆力・知力・語学力があるだろうか。さらなる研鑽が必要だ。私生活の再建と共に知的生活の枠組みも再編しなければならないが、家族はそっとしておきたい。


「こっちこっち、電車行っちゃうお」

「電車?ああ、電車か」

「さっきから何考えてんの」

「君との将来についてさ」

「何言ってんの照れるてば」