・志望動機:研鑽と発表の場
日々の独自研究の研鑽と発表の場を欲した事が最大の志望動機である。学生時代より様々な独自研究を行ってきたが、それを一つの形に集約させてしかる場で発表していきたい。
普段はパート&主婦&投資で生計を立てているが、子供(長男)が保育園に上がり育児が手すきになるため、自分の得意な独自研究をれっきとした研究に昇華させ、あわよくば家計の足しにしたいと考えている。どうしても子育て&家事&家族サービスと掛け持ちになるため、自宅から原理的に通い易い近場の大学で自分のやれる事・やりたい事を模索した結果、貴大学を受験する運びとなった。
恋愛について研究したいと思ったきっかけは私の恋愛遍歴である。さして特別とは言い難い自身の恋愛遍歴の中にも古典文学から現代政治学まで様々な学術的論理が応用されており、もしかしたらこれは恋愛事象(love affair)一般に見られる現象なのではないかというひらめきがあった。それらを統合した究極の学問としての恋愛学というものが生起され得るのではないか、という感触である。それを是非貴大学プログラムで形にしたいと思う。
大学を卒業してから英語力に自信がなかったが、アルバイトで塾講師として高校受験生及び大学受験生の英語を教授していくにつれ英語力の鍛え方や発揮の仕方などについて自得出来た事も、今回大学院を受験してみようと考えた一つの理由である。ちなみにパート・アルバイトと学業は両立させていきたいと考えており、具体的施策については既に実行済みである。
・主題:日本の恋愛の機微
提出した「卒論に準じた論文」にて部分的に詳述した日本の歴史・日本の国内政治・日本の法律・アジアの中の日本の思想・日本を取り巻く国際環境・日本の理想その他、すでに私に備わっておりまた漸次増えている世界と日本に関する豊富な知識を複合的・総合的に活用し、恋愛の機微に関して研究を物したい。
恋愛には万国共通の作法と各国独自の作法があると考えられるが、私は万国共通のマクロでグローバルな視点を維持しつつ、およそ人間個人にとって恋愛とはどういった物であるのかについて研究する事になるだろう。
そのためには日本及び世界の全歴史の中で記録に残されている恋愛の機微についての体系的な分析と恋愛模様の分析とを照らし合わせ、客観性を帯びた主観と主観的客観の間で揺れ動く恋心を捉まえ恋愛という現象を解明する事が肝要であると考える。
恋愛というものは言葉を手段とした恋愛と、言外に込めた思いというものを主な手段とする恋愛に大別されると解する。普段は言外に置かれ言葉にならない「声なき声」について学術的論理的な分析を加え、言葉にしていく「恋愛の言語化」を対象とした研究経路が恋愛というもののメカニズムを明らかにする上で最も効率的かつ不可欠であると考える。無論、学問的研究対象として恋愛を分析する上では言葉をメインテーマに選ばざるを得ないが、そうした言葉が言語化する段階の分析において、私の独自研究とそれに費やした言語的センスとエネルギーは有益に作用すると思われる。
・参考文献
ここで研究で参考する予定の文献及びその進捗状況を以下に挙げておく。
1「ホメロス諸神賛歌」をギリシャ語原典で読み解く:ギリシャ語のスキルは中級未満。和訳を見ながらでないと判読出来ないレベルである。
2「ars amatoria/ovidius」をラテン語原典で読み解く:歴史あるアテネフランセのラテン語上級に在籍していた事もあり、仏訳英訳を併用すれば完全に読みこなせる。
3「大和物語」を古語原典で読み解く:古語に関しては体系的知識はあるが、細かい知識の補充は必要。
4量子力学を恋愛分析に応用する:高等数学は高等になればなるほどファジーな要素が増えると理解している。そのあやふやな揺らぎこそ、恋愛の分析因子として最適であると考える。
5政治学的アプローチ:例えば「恋は戦争」とはいかなる意味か、戦争学・政治学の観点からアプローチを行う。
6恋愛そのものを扱った先行研究に関しては、研究対象として分析に値するものは存在しないと考えている。
私見では、ギリシャ語は思想及び政治、ラテン語は政治及び法律、日本語は恋愛、数式は心理の動きを語らしめるのに最適の言語である。恋愛は各言語各次元の論理や感性を取り込みながら行われるため、その研究は日本に関する知識だけでなくあらゆる学問を学際的に横断した総合的知識とそれらを時宜に応じて活用出来る機転が要求される難事である。言うなれば人類最古にして最大・最重要の研究対象に他ならないと管見する。中でも日本の恋愛は世界の論理を取り入れ得てしてそれに従う柔軟性や最大エネルギー容量について群を抜いていると実感している。
日本語自体に内在している言語法則と万国共通の恋愛機微との間には偉大と言っても良い互換性・相補性があり、それに関して学術的に言及するためには日本語に関する客観的体系的知識と日本語話者としての主幹的言語感覚が必要となる。私がすでに持っている言語感覚と文化的感受性をさらに洗練させ研ぎ澄まし以って恋愛事象に対する分析の精度を向上させるには、貴大学のプログラムが最適であると考え、今回受験した。ギリシャ語・ラテン語といった古典語の知識を拡充するためにも、貴大学の教育プログラムは大変魅力的である。
量子力学が恋愛分析に活用出来るというひらめきは、「なぜ量子力学というものが生起されたのか、そして何に利用できるのか」という事を生活者の観点から思索した結果、量子力学の持つ「量子もつれ(エンタングルメント)」という概念が恋心の揺らぎ同士の結びつきの説明因子なのではないかという考えから来るものである。物理現象が先に立つのか、恋愛現象が先に立つのか。無論表向きの人類史においては物理現象が先立つ来たわけだが、私は恋愛現象を説明するのに物理現象の論理を使うという逆転の発想を持った。宇宙論の人間原理ではないが、人間が人間の目線で物理現象を理解する上で身近で複雑な恋愛的論理を活用した形跡がどうしても認められる。ならば複雑な恋愛的論理を理解し説明する上で物理現象の論理を活用する事も出来る筈である。
例えば「恋愛は戦争と同じように、始めるのはたやすいが止めるのは困難だ(メイケン)」と形容されるように、恋愛は戦争に擬せられる事がしばしばある。恋愛が戦争の分析に掛かる論理を動員するなら、それを分析するために戦争の分析に掛かる論理を動員する事が我々には許されるはずである。さらに「戦争とは他の手段をもってする政治の継続である(クラウゼヴィッツ)」という言葉もあるように、戦争の分析をする際に政治力学の論理的分析は不可欠である。しからば、恋愛の非限定性・無秩序性に対抗するために、我々が政治力学と戦争学を動員する事は学術的に正当化されると考える。
・具体的学習計画
1年次には古典語と数学を重点的に養成する傍ら、日本に関することのあらゆる分野の知識を総点検し、2年次の論文執筆のための準備を行う。ギリシャ語の学習には「ギリシャ語読本/高津春繁」「ギリシャ語文法/同」「ギリシャ語四週間/古川晴風」及び希仏辞典・希英辞典などを、ラテン語の学習には「ラテン語法格言辞典/林信夫ら」「ラテン広文典/泉井久之助」「古典ラテン語文典/中山恒夫」及び羅仏辞典・羅英辞典などを、古語の学習には古語辞典などを、数学の学習には「完全独習量子力学/林光男」「量子重力理論入門/吉田伸夫」「オイラーの贈物/吉田武」などを、政治学に関しては「Utopia/Tomas More」「The Clash of Civilizations/Samuel Huntington」「diplomacy/Henri Kissinger」などを使用する。
2年次には、前述文献の原典講読を行う傍ら、日本社会において恋愛に身をやつしている様々な世界の論理を明らかにし、研究論文の執筆に着手する。
学部の古典語授業も躊躇なく履修し総合的語学力を涵養、研究論文を書き上げた後も独自あるいは博士課程後期にて研究を継続し日本から世界に、それらを発信する。
私のこの研究の究極の分析対象は「恋する乙女の頭の中」である。必要であれば研究対象そのものにアタックして実験的分析を行うことも辞さない(適法かつ倫理的に妥当な手段を用いる)。
・目標
最終的には、世界中のあらゆるテクノロジーを集積した最強の恋愛指南書を上梓する事を目標とする。日本の本気の恋愛は世界大戦の代理戦争の様相を呈する物であり、それを丸く収め恋愛的行動者の幸福を演出しながら、極論すれば世界平和のハウツーを明らかにする事に本研究の最終目的がある。
恋愛的論理に身を投じる事だけでなく、恋愛的論理から身を守る事も、本研究の大事な目的である。量子論や戦争に擬せられる恋愛という暴れ者を統御し、以って日常の潤いを増進し、あるいは人類福祉をさらに発展させていくために、この恋愛という物を完全に学問的認識下に置くことが新世紀の新たな学際的な究極命題に名乗りを挙げる日も近いに違いない。
直接政治にアプローチするのではなく、恋愛を通じた間接的でソフトな平和活動を行う事が、日本と日本人が行うべき国際貢献であると愚考する。これまで日本人の恋愛について体系的に論じた学術書があっただろうか。本研究はその先鞭をつける国際的な日本文化論となるであろう。
読んだ人が思わずため息をついてしまうような幸せな読後感と、内容を実地検証して得られる確かな満足。それを日本ならびに世界の読者に届ける事が私の目標である。