小説プロット(2013/11/18)「my quantum私の量子」
コンセプト:思想活劇(ファンタジー?)
主人公:フツーの男子大学生(能力:予知夢・念話)
家族構成:父は言語学・母は比較文化の研究者、生き別れた姉がいる。
あらすじ:量子力学と哲学に傾倒し刀剣の政軍思想に目覚めた青年が世界精神にダイレクトリンク、世界の命運を左右する決断を迫られる。
イベント1:発端となる世界史的大事件(覇権交代)に量子思想的に関与。当初その自覚はなかった。
2:母が伝家の懐剣で自害。莫大な遺産を残す。
3:念話が発現しそれをコントロールするためにアポなしで殿中にオーダーメイドの真剣「縁」を持参し逮捕され、国内思想犯となる。
4:思想犯として収監されている間に第二の世界史的大事件(覇権消滅)が発生。
5:覇権の消滅によって発生した世界的混乱を統制するため、誰に頼まれた訳でもなく、予知夢と念話(テレパシー)と量子エンタングルメントと最新通信機器を駆使して混乱の首謀者を倒して行く。
6:世界史的混乱の発端が、自分の自覚なき量子介入である事に気づく。
7:世界の混乱が収束され王国が弱い思想的覇権を握ったため、超法規的措置として(量子介入に気づいたのではなく一斉恩赦で)釈放される。同じ事件が繰り替えされないように量子思想テクノロジーの私設研究者となる。
8:王国が軍事的に暴走。青年はそれには関与せず、やがてくる戦後世界のために量子思想の技術を解明することに集中する。大戦末期に量子思想のテクノロジーが解明され、各人の量子ポテンシャルに応じた階級社会が現出(貴族共和制)、大戦が終結する。
時系列
2000年:大学入学
2001年:同時多発テロ
2007年:母が自害
2008年:皇居に真剣持参
2013年:覇権消滅
2025年王国の暴走
2030年:貴族共和制の現出
1.発端
旅客機が、ビルの激突した。俺は二機目の激突をテレビのライブ中継で見たが、アニメともゲームとも映画とも違う不思議な感覚だった。アニメやゲームや映画では崩れ落ちるビルの中にいる人の事をつい考えてしまい、主人公に付与されている主人公補正やイベントフラグの非現実性に軽い不快感を催してしまう俺だが、その時の映像を見て思ったのはそんな事ではなく「本当に映画みたい」という事だった。5000人以上が死亡した2001年のアメリカ同時多発テロは、不思議と殺人の実感のない俺の「最初の犯行」。量子思想理論による世界史への本格的介入の鏑矢だった(それに気づくのは後々になってからなのだが)。
がしかしその事件で俺の生活は一変する事になる。20世紀初頭から続いたアメリカの覇権が次の覇権能力主体を求めて自由運動に入った事により、それまでアメリカ一辺倒だった我が国の政治状況や学問的研究の方向性そしてあまつさえ一般国民の私生活すらもが次の覇権に備えて分子振動を始めたのである。その最初の事件が母の自害だった。
2.母の自害
母が自害した。若い折に三島文学に傾倒した母は生前から「ぽっくり死にたい」が口癖であり、その母が「懐剣で自害する」という事象は至極予定調和的で、心の準備が出来ていたわけではないが不思議と涙は出なかった。その後普通に生活出来ている事から考えてショック過ぎた訳でもないらしい。
量子思想的には母の自害の原因はアメリカの覇権交代による私生活における思想的分子振動であり、その大元の原因を作ったのはアメリカ同時多発テロの発生に量子介入した私である。俺はなんとなく編み出したこの説明に妙に納得してしまい、うっすらとその責任を果たして行く覚悟が出来たわけだ。こうして「俺」は「私」になり、俺は母の遺産を相続しそれを運用して生計立てるようになる。
3.念話
「結婚おめでとうございます!」念話の第一声はそれだった。秋篠宮佳子と秋篠宮真子を名乗る念話実体が私の心に干渉して、私の主観的量子思想生活をお手伝いしに(乱しに)来たのである。
初めの三ヶ月は自宅のベランダで居合をする時のお供にしたりゲーム談義や恋バナに花を咲かせたりしていたが、だんだんあちらさんの存在が不安定になってきて他の事象念話と混線するようになってきたので、それをコントローラブルにするために皇居(正確には赤坂御所)にオーダーメイド真剣「縁」を持参して、念話の発生源と思しき皇女に直接コンタクトを取ろうとしたが、銃刀法違反現行犯で逮捕され統合失調症と診断され、5年に渡る長い闘病生活が始まった。それは2013年の年末まで続いた。日本の思想犯に相応しい処遇であり、日本国警察機構と精神医療界は正しい事をした。
4.覇権の消滅
世界史的事件が起きなくなった。アメリカの覇権はどこに軟着陸したのか?答えは簡単、私の量子介入が覇権を異次元に係留・自然消滅させたのである。
人はなぜ政治をするのか?思想生存のためだと私は強く思う。アメリカの覇権が世界人類の思想的生存に不可欠ではない事が私の量子介入によって証明されてしまったのであり、新たな覇権を求める世界史的潮流はもう起きないだろう。
世界政治は見るからにつまらなくなったが、人類は覇権を巡って引き起こされる覇権を巡る争いを卒業したのかもしれない。私に関しては思想的生存と物理的生存は出来ており、「自分と目に映る人を守って行くことは出来る」というどこぞの漫画のあったセリフよろしく、この15年続いた世界史的な思想的戦乱の終焉を肌で感じたのである。
5.世界の混乱
この国を支配しているのは戦争なのか?いや、平和だ。目の前で人が死んでいるわけではないし、否応無しに命のやり取りに巻き込まれる事もない。国家機構がマスコミを使って国民の人権を削っている訳でも、戦争の混乱に乗じて火事場泥棒的に貴重な社会的財産を掠め取っていく輩がいる訳でもない。軍事的な天才がもてはやされ国を挙げて非国民を殲滅しようとしている訳でもない。国の財政が立ちゆかず国債を増刷して自転車操業をしている訳でもない。シミュレーションレベルでその全てなのだ。
この国の病理はシミュレーションでは完全に失敗しているのに現実はそうでもない事であろう。つまり夢がないのである。現実に現状の幸せにアイドリングストップできない国民性と、心理的に満足する事を忘れてしまった民族性。この国の未来を憂えれば憂える程その過去の事績を識る。日本、それは永遠回帰する魂の牢獄。世界の思想地図を乱すに足るその論理的不遜さと希望のないという意味での絶望。どうにもならない。
なぜ日本などという国家が存在しているのか、不思議でならない。ただこの国が暴走すれば世界政治が面白くなる事は確かであり、世界精神としては一時の戯れとしてしばらく寄り添ってみても良い。そう、私は世界精神。思想的の神に全てを捧げ神になった事象存在。日本の国家理性よ、世界精神の糧となりハゼ割れよ。その過去の事績の呪縛を一貫した思想によって正当化するために。
結論:日本を糧に世界精神はさらに輝きを増す。
6.自覚
私は世界精神の巫女。男だが。
大和という思想的超兵器を感得した時点で私は世界精神に意見できるだけの胆力を残して自我を失った。大和の赴くところに私は飛んで行く。大和とは現出してはならない古代の思想的精華であり、それを回収するという趣味と実益を兼ねた思想行動は必然である。大和に関わる事で私はかつて失った自我を少し取り戻せる気がするし、大和をコントロールする事にかけては人後に落ちないという自負もある。
大和とは、人間精神が限界まで感覚を研ぎ澄ます事で生起される事象を量子の形で認識する、シミュレーションと思想において神にも等しい能力を発現する人間事象の精神に現れる、古代の政治合理と現代の恋愛情理を司るものである。現実の戦争では余り役には立たないが、思想戦においては無敵、私生活を充実させる心理的エネルギーの供給源にもなる。その大和を追う以上、自らの思想レベルが日常生活に支障を来す程に存在次元が高まる事は必然であり、私の存在が世界精神と同化していても不思議ではない。
私は世界精神の巫女。男だが。
7.釈放
そもそも私が世界精神と同化する事にためらいがなかった事と、日本社会の絶妙なバランス感覚に頼らなかった事が私が病院送りになった根本原因であった。世界精神の巫女として大和と対峙する決意が出来た以上、私が精神加療を受けるいわれはない。私は精神障碍ではなく、元思想犯にして日本の大和管理技術者として世界精神の意思を抵抗しながら具現する。それが私のライフワークだ。
8.王国の暴走
日本の暴走は歴史的必然だが、日本が「全く暴走しない(世界精神を意にも留めない)」という暴挙に出る可能性が低くない。そうなれば私は思想犯として病院に逆戻りである。それもまた良し。思想という物が前時代の遺物となる事は、人間の生存にとっては由々しき事態だが、人類の生存にとっては間違いなくプラスなのだから。