「ペンローズの量子脳理論/ロジャー・ペンローズ」を読了した。

なぜ人間の意識を科学的に説明するのに量子重力理論を用いる必要があるのか、私は場が閉じた微視的世界の話である量子力学と開放系の巨視的世界の話である相対性理論との合の子である量子重力理論を人間の意識の説明に使うというペンローズの着眼点は支持する。

しかし、ニューロンの電気的信号を量子重力理論で解明するのは正直無理があると思った。

私は、人間の意識は閉鎖系内の極大と開放系の極小でまず枠組みが構成され、中身は仮想化されたシミュレーション因子のエンタングルメントで構成されていると考えており、物理学で精神を計算するためには一度データと理論を仮想化しなければならないと考える。

ゲーデルの不完全性定理も、「完全な数式は存在しない」という理論ではなく、「現実を数理で解明する際にはある割合で数式を仮想化する必要があるが、その仮想化のメカニズム・計算式は事象によって違い、解明困難である」という事を証明したに過ぎない、と理解する事ができる。ゲーデルだって数学者なのだ。

量子力学は微視的閉鎖系の理論であると考えれば「量子場の理論の無限大」問題や「量子飛躍の際の観測理論」問題などの問題は問題でもなくなる(人間の精神に照らして当たり前の現象である)し、一般相対性理論は巨視的開放系の理論であると考えれば「時空の特異点」問題も(人間社会に照らして)問題ではなくなる。

改めて思うのは、日本人の手になる量子力学の概説書はツマラナイ(同書の解説者である竹内薫氏の文章の安っぽさと茂木健一郎氏の浅学非才はなんとかならないものか)し、欧米の量子力学の専門書は「ナニが面白いのか伝わってこない」のであり、朝永振一郎と湯川秀樹の量子力学の本を頼りに日本語で「面白い量子力学」とかいう本を自分で書きたくなった。

結論:次の自著は哲学と量子力学を混ぜた感じになりそうである。

jleo