内政不干渉原則と人道的介入主義が衝突した場合、どのように紛争を解決すべきか。

そもそも内政不干渉原則は「他国に対して害を及ぼさない限り内政に干渉されない原則」であり、人道的介入主義は「他国内で行われる非人道的行為を武力などによる介入で是正する思想」とされる。

現実に行われる人道的介入とは、他国内で行われる非人道的行為について自国の信奉する人権などの価値の観点からそれが損なわれる事を不作為的に放置しないようにする行動と言える。

具体的には、他国内での非人道的行為によって自国の国益が損なわれたとする国家によって為される。

翻って国家の政策に個人の思想を対置すると、内政不干渉原則とは「内面に留まる限りは思想の絶対的自由が確保されねばならない」という事であり、人道的介入主義とは「その人や周囲の人にとって不利益となる危険思想を是正する事」という事である。

従って個人の思想に対置された人道的介入とは、思想・良心の自由に対する公安的観点から為される修正行為と言える。

具体的には、危険思想によって利益が脅かされる主体によって為される。

現在の世界的潮流から、国家政策レベルで人道的介入を推奨する国はあっても、個人思想レベルで思想修正を認める国は少ない。

例えば欧米が内政干渉に積極的でロシアや中国などが消極的なのは、内政干渉について、前者が国家政策に対する内政干渉と考えているのに対して後者が個人思想に対する思想修正という思考スキームを採用しているからだろう。決して中ロが人権を軽視しているからではないのである。

どちらを優先して適用すべきかは、その国の歴史認識に拠るべきである。具体的にはリビアに対しては思想的アプローチ(内政不干渉)、シリアに対しては政策的アプローチ(人道的介入)を旨とすべきであろう。

jleo