エジプトのムバラク前大統領の場合も、殺人罪教唆未必の故意あるいは業務上過失致死が成立する疑いがある。
ここで、被告人が該行為を個人として為した場合は前者と断罪し政治的公職に就いていた時期に為された場合は後者と断罪する事が理に親しむとも思えるが、私の例を引くまでもなく人間はいつ何時も個人を辞める訳にはいかないし、私の例を引くまでもなく公職に就いていない時も政治的影響力はあるものである。
従って、断罪方法の裁定には、被告人が為した行為の実態に沿う事が必要であろう。
翻って、ムバラク前大統領の場合は「大統領としてデモ参加者殺害を指示した」(最高権力者の業務として罪を犯した)嫌疑がかけられており、事後そのデモに敗北して退陣している(政治的影響力を失った)事から、該行為に関しては業務上過失致死の重い方の法定刑を課す事が妥当と想われる。

遠山拝