彼女はうなずいてこう言った。

「全部言わなくても分かってると想うから深くは説明しないけど、とにかくそういうんじゃないの」

「分かってるよ」

僕が返すと彼女はむずがゆそうに言った。

「本当に?」

「うん」

彼女は僕の詮索を諦めたらしく、横を向いて言った。「あなたの事好きよ」

「うん」

「意外と冷静なのね」

「うん。でも嬉しいよ」



僕が彼女を好きなのは、根が繊細なのにこういうところではっきり物を言うところだ。

彼女はそれを知ってか知らずか、うつむいて照れていた。僕も照れ隠しに本(丸山真男の「日本の思想」)を取り出して読み始めた。



遠山拝