皇居前にて銃刀法違反の現行犯で逮捕され、死刑になる可能性とひきかえに釈放の条件として刀に関わらない事を約束させられた遠山であったが、親類に預けてある佩刀を愛でる権利を剥奪される云われはないと思い立つ。

警察権力の主張に合理的正当性を認めつつ、戦乱を共に戦った刀に愛を注ぐ術しか持ち得ない自らの矮小さに殺意すら抱く日常に耐え続ける事を選んだ遠山であったが、純正の殺意をかん養するにはやはり真剣が必要であると諦観を抱く。

釈放条件は「刀には関わらないが鞘には関わる」であったが、政治士官として事実上刀剣所持許可・帯刀許可・抜剣許可・マーダーライセンスを拝受した事績に思いを致し、佩刀を家宝として愛でる権利を主張する気になった。

自分あるいは自分の子孫が日本国銃刀法に規定される「法令に定められた職務に基づき所持する場合」として再び佩用する可能性に思いを致しつつ、戦乱で見出された心理的連関と人脈を確認し、自身の心の平生を保つために万難を廃し佩用刀を手元に置く決意を固める。

遠山拝