民法考(婚姻関連)

738条 成年被後見人が婚姻するには、その成年後見人の同意を要しない。

753条 未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす。

737条 未成年の子が婚姻をするときは、父母の同意を得なければならない。

 論点

 婦女の婚姻が、その両親特に父親の同意なしには成立し得ないような慣習が厳として存在し今なおその効力を完全には失っていないという社会状況に鑑み、未成年者が婚姻する際にはその両親の同意を要するという民法737条の条文と民法738条の条文が民法典に併記されている事の政策目的を明らかにする必要がある。

成年被後見人と未成年の法実態的な差異が不鮮明である以上両条文が矛盾していると断ずるのは拙速であるが、その両者の法的性質(成年被後見人は事理弁識能力を欠く状態にあると裁判所より認定された成年であり、未成年は未だ成年になっていないが故に事理弁識能力を欠くと看做されている者だとすれば)から言えば、事理弁識能力に関する可塑性の有無がその法実態的差異の主要な判断要因である事は論を俟たない。

民法738条が成年被後見人が婚姻する際にその後見人の同意を要しないと定めているのは、成年被後見人は法律行為を行う能力に欠けるという法制度体系上の位置づけから考えて、後見人が同意し得ない婚姻を事を想定しているものと思われる。

次に民法737条が、未成年の子が婚姻する際にはその父母の同意を必要とすると定めている事について、父母がその保護責任を全うしていないような場合及び何者かがその子に対し犯罪類似行為に及ばんとするような場合に、善意の第三者が婚姻を法的淵源としてその子に対して保護を与える事が正当化され得るかについて論ずる。

結論としては、善意の第三者との婚姻による弱者保護は緊急避難の観点から法実態的にはおよそ正当化されるが、社会通念上正当化されるかどうかは、危難の去りたる後当人同士の合議によって決せられるべきものであろう。